――そして、バラ役の吹き替え声優に抜擢されました。とても喜ばれたそうですね。

バラの話をいただいた時は、本当に即答でした。今着ているこのバラの洋服も見つけました(笑)

――実際にバラを演じていかがでしたか?

私の声が木霊(こだま)して、王子さまを困惑させるような作りになっていたり、こういう描き方をするんだなと思いました。バラは、王子にとっても作者にとっても最も大事な存在で、奥さんでもあったと言われています。強がっている奥さんでもあり、一番王子を心配している存在なんだけれども、彼のために突き放してしまう…絶対こういう人は実在するだろうなと感じましたね。

――ご自身が、バラと似ているなと思う部分はありましたか?

私もあまり感情を出さず、強がるタイプなので、さみしい時もそれを表に出さない部分があります。だから、強がっている女性というのは共感できます。でも、強がることで自分も強くなるというのもあると思います。自分の判断や決断が正しかったと自分に自信を持つという意味では、大切な過程だと思います。

――今回の起用に関して、配給側も「艶(つや)のある声がバラにぴったり」と太鼓判を押していますが、滝川さんの温かいこの声は昔からですか?

声は自分で意識したことは全然なくて、この仕事について初めてマイクを通してこういう声なんだって気付いたくらい。でも確かに、うちの両親には「声がいいから、声は生かせたらいいんじゃない」と言われていました。アナウンサーの仕事を初めて、声が低くなったというのはあるかもしれませんが。

――ゆっくり穏やかなスピードも特徴的だなと。

ゆっくりはもともとだと思います。それはどうしようもないことなので(笑)

――本格的に声優をやられたのは今回が初めてとのことですが、吹き替えで苦労したことはありますか?

演技をこんなに求められることを想像していなくて、そのままでいいかななんて思っていたら、そんなこととんでもなくて…。演技はしたことがなかったので、感情を織り交ぜて話すことにとまどいました。そんな時に、アフレコ収録の演出家がとても上手に指導してくれて、その通りにやらせてもらいました。こういう風に聞こえるんだなと、いろいろ発見がありましたね。

――演出とはどういうものでしたか?

演出家の彼女がすごく上手に演技をしてくれたので、そのままマネしようと心がけました。色っぽさもありつつ、艶(つや)っぽい声で、なおかつ、さみしさもあり、強がる女性の部分もあり、いろんなことが求められましたね。バラっぽくと言われても、中からバラっぽくというのはなかなか難しくて。

――最後に、滝川さんのバラを楽しみにしているファンの方にメッセージをお願いします。

物語を読んでいない方は、バラがどれだけの大切な役割を担っているかわからないかもしれないですが、映画を見て、そして本を読んでみることになったときのバラの大切さや、バラと王子さまの関係性から発せられるメッセージの美しさに魅了されてください! バラの美しさではなく、バラと王子さまの関係、彼らのメッセージに注目してもらいたいですね。

滝川クリステル

1977年10月1日、フランス・パリ生まれ。2002年10月から7年にわたり『ニュースJAPAN』のキャスターを担当。2009年にフリーに転身し、CM出演も解禁して幅広い活動に挑戦。2013年には、2020年東京オリンピック・パラリンピックの招致プレゼンテーションで「おもてなし」の心を伝え、招致に貢献。また、2014年5月に動物保護・生物多様性保全を目的とした一般財団法人クリステル・ヴィ・アンサンブルを設立し、犬や猫の殺処分撲滅などを目指して活動している。

撮影:蔦野裕