PCやサーバ機器からソリューションベンダーへと変貌を遂げたデル。企業向けソリューションの展開に当たり、同社が長年取り組んできているテーマが「ITのシンプル化」だ。オープン化とIAサーバのコモディティ化により、ITはあらゆる企業がビジネスを行ううえで欠かせないツールになった。ただ、その一方で異種混在環境によるITの複雑化が進んだことで、多大な管理コストと運用負荷が企業の重荷になった。デルが取り組んだITのシンプル化は、企業が直面するそうした課題に、標準化、統合化、自動化でこたえるものだった。

Ahmad氏によると、ソリューションベンダーとしての戦略も、デルが取り組んできたこのシンプル化の哲学の延長線上にあるという。

米Dell エンタープライズソリューション&アライアンス VP Armughan Ahmad氏

「企業がベンダーにロックインされずに、ヘテロジーニアスな環境下で、オープンなアーキテクチャをスケーラブルに展開できるようにすることがデルのシンプル化の哲学です。買収によって製品や事業を統合するというよりは、さまざま企業とアライアンスを組み、ユーザーのIT環境をシンプル化していくことが我々のミッションです」とAhmad氏。

そもそも、これまでにデルが買収してきたセキュリティ管理や運用管理、ネットワークやストレージ、仮想化製品などは、複雑化するソリューションのシンプル化を目指したものだ。製品開発からサービスのサポートまでを一貫して提供できるようになった現在でもオープンである意味ベンダーニュートラルな製品展開を続けている。たとえば、ソリューション提供においては、ネットワーク機器ではオープンないわゆるホワイトボックスを推進し、ストレージ機器ではVMwareやNutanixと連携したSDS製品を展開する。また、仮想化環境基盤ではマイクロソフト、VMware、RedHatなどをパートナーとしアプライアンス製品を展開する一方、OpenStackも積極的に推進する。

そんなオープンさにこだわるデルが、ソリューション提供の基本戦略として提唱しているのが「Dell Blueprint」だ。

「ユーザー企業はいま、従来のITと新しいITの両方に対応していく必要に迫られています。デルでは、両方のITに対応していくことをFuture-Ready ITと呼んでおり、そのための戦略がDell Blueprintです」とAhmad氏。

文字通り、ユーザーに対してITのこれからを示した青写真となるものだ。

ユーザーに求められるワークロードを7つのカテゴリーに分類

デルのDell Blueprintは「検証済みソリューション設計書」に位置づけられ、現在、ワークロードごとに7つのカテゴリーとして体系化されている。

7つのカテゴリーとは、「UC&C」「VDI」「Business Processing」「Virtualization」「Cloud」「Bigdata & Analytics」「HPC」を指している。この分類は2014年からはじまり、少しずつ具体的なソリューションが展開されていき、今年の「Dell World 2015」で、ほぼかたちとして仕上がったという。

UC&Cは、マイクロソフトの「Lync」や「Skype」といったユニファイドコミュニケーション&コラボレーションに関する製品を取り扱う。VDIは「VMware Horizon View」や「Citrix XenDesktop 」「Dell Wyse」といった製品群で、Business Process Workloadは、SAPやOracleのミドルウェア、業務アプリケーション製品群で構成。また、Virtualizationは、マイクロソフト、VMwareの各仮想化ソフトのほか、「EVO:RAIL」などのコンバージドインフラを扱い、Cloudはハイブリッドクラウドを構成するための製品が中心となる。Bigdata & Analyticsでは、マイクロソフトのAnalytics Platformや、Cloudera Apache Hadoop Solution、SAP HANA Applianceなどで構成。HPCでは、ハイパフォーマンスコンピューティング向けのサーバやストレージ構成の提供が中心となる。

「従来のITと新しいITの両方で求められるワークロードごとに、ユーザーが対応しやすいようにカテゴリーを分類しています。事前に検証したソリューションのアーキテクチャを推奨構成として提示するとともに、ハードウェアやソフトウェアを統合した具体的なソリューション製品として提供します。これにより、ユーザーは、取り組みの進捗や必要に応じて、将来に向けたITをシンプルに利用することができるようになるのです」(Ahmad氏)