2015年11月11日の朝、ついに三菱リージョナルジェット(MRJ)の初飛行が成功裏に行われた。国産旅客機が日本の大空を舞ったのは半世紀ぶりの快挙。度重なるスケジュールの延期を乗り越えて初飛行を実現したのは、とても喜ばしいことだ。しかし、これからが本当の勝負でもある。

ハードル1 : 飛行試験

初飛行でエアボーンした直後のMRJ(右はチェイス担当のT-4練習機)

初飛行は、単に「飛ばしてみせるセレモニー」ではない。初飛行も飛行試験のうちである。そもそも、飛行機の試験は初飛行よりずっと前、機体の製作を開始した時点で、すでに始まっている。

たとえば、搭載する各種システムや電子機器の動作検証がある。それを作動させるには電源が必要になるので、エンジンを実際に作動させて電力を供給する試験もある。無論、エンジンそのものの試験運転もあるが、これはエンジン・メーカーが受け持つ部分が多い。とはいえ、エンジン単体だけの試験で済むわけではなく、実機に取り付けなければ行えない試験もあるだろう。

そして、機体構造に関する試験がある。これは大きく分けると、静強度試験と疲労試験がある。静強度試験とは、シンプルに「設計どおりの荷重をかけても壊れないかどうかを確認する」というものだ。それに対して疲労試験とは、「繰り返し荷重をかけて、それが規定の回数に達しても機体が壊れないことを確認する」となる。

どちらも、実際に飛ばして確認するわけにはいかないので、地上でテストリグに供試体をセットして、油圧ジャッキなどを使って実際に荷重をかける方法でテストする。強度試験で問題ないことを確認しなければ、そもそも飛行試験に駒を進めることができない。

そしてようやく初飛行となるが、これもまず、地上滑走試験(タキシー試験)から始める。段階的にスピードを上げていって、問題なく滑走できるか、ちゃんと止まれるか、機体のコントロールに問題はないか、といったことを確認していく。それで初めて初飛行を実施できる。

その初飛行では、まず機体に変なクセがなく素直に飛ぶかどうか、基本的な操縦操作に問題はないか、といったことを試したり、空中で摸擬着陸操作を行ったりする。これが、長い飛行試験の道のりの始まりだ。

今は昔と違い、風洞試験やコンピュータ・シミュレーションの技術が発達しているが、それでもやはり「飛ばしてみないと分からない」「飛ばしてみたら、初めて問題が露見した」という類の話はいろいろある。

就航してから問題が出るようでは、それこそ問題である。その前の試験段階で、さまざまなテストケースを設定して(言い方は悪いが)機体をいじめ抜かなければ、いい飛行機、信頼できる飛行機は完成しない。試験で問題が出るのは悪いことではないし、むしろ試験で問題を出し尽くすべきなのだ。

それだけに、試験のプロセスは重要だし、そこでどういったテストケースを設定するか、試験で発生した問題をどう解決してその後の生産機にフィードバックするか、といったところでメーカーの力量が問われる。