米VMware CEO パット・ゲルシンガー氏

米VMwareのCEOを務めるパット・ゲルシンガー氏が、都内で開催された同社の年次カンファレンス「vForum 2015」に合わせて来日し、本誌などの取材に応じた。

ゲルシンガー氏は、デルによるEMC買収などについて改めて説明。「デルによる買収後も、VMwareは何も変化しないと考えている。独立性はこれからも保たれることになる。変化するのは、デルによって、VMwareの成長が加速されることだろう」と述べた。

この中で、ゲルシンガー氏は買収発表があった日の朝一番に、Hewlett Packard Enterprise(HPE)のCEO、メグ・ホイットマン氏と電話で話したことを明かし、「今後も独立性を保つことについて説明し、お互いにそれを確認した。VMwareとHewlett Packard Enterpriseは、パートナーとして強力な関係があり、早い時点で、メグから正しい情報を同社の営業現場に伝える必要があった。買収については驚いていたが、独立性を保つという点では理解を得ている」と語った。 また、ホイットマン氏との会話後に、マイケル・デル氏から電話で連絡があり、「そこでも独立性を維持することを確認した」と述べるとともに、「マイケル・デルは、VMwareの独立性の維持を明確に示し、取締役会もエコシステムも、デルとは別の体制を維持することを示した。その考え方は一貫している。マイケルは、オープンなエコシステムの時代において企業を経営してきた経緯を持ち、その経験の中で、こうした企業の独立性を保つことの重要性も知っている。デルにとってもそれが最適な判断になるだろう。変化を必要最小限に留めようと考えている」と説明した。

さらに、ホイットマン氏が自社の従業員に宛てたメールでデルの買収戦略を厳しく批判したことについては、「メグが社員に送信したメモは、デルとHPEの関係を指したものであり、どちらが正しいのか、どちらが間違っているのかという問題ではない。市場での立場も異なり、やり方が違うのは当然である」とも付け加えた。

「パートナーや顧客からは、デルによるEMC買収については驚いたという声を数多く聞いた。だが、私が聞いているのは、それに伴う素直な質問と、ポジティブな意見であり、ネガティブな声はひとつもない。デルにとっても、株価を維持するという点で、VMwareを手に入れる価値があると言える。今後、技術面での連携も進むことになるだろうが、その点はこれからの話し合いになる。シンクライアント事業との親和性などもメリットになり、エンドユーザー・コンピューティングの広がりも期待できる。また、デルが得意とする中小企業市場に対してアプローチできるというメリットもある」

これまで、EMCはVMwareの80%の株式を取得していたが、ゲルシンガー氏の説明によると、今回の買収では、EMC所有株の7割が一般公開株となり、デルの出資比率は30%にとどまることになり、「株主のベースを広げることになる」とゲルシンガー氏。

デルが今後買収に伴い抱えることになる負債についても、「VMwareのキャッシュフローを、デルの負債の返却に活用することはない。VMwareの株式を売却するということもない」とコメント。「VMwareとして、独自にM&Aを実行したり、革新的なイノベーションに対して投資したりして、ポートフォリオの拡大にも取り組む」という。

今回のゲルシンガー氏の来日は、vForum 2015への参加が主な目的であったが、「富士通、NEC、日立などの日本のパートナー企業と話し合いを行う機会を持ち、今回の買収によっても、体制には変化がないということを理解してもらい、今後の協力関係を確認した」と述べた。

「EMCはストレージベンダーであり、日本のベンダーをはじめとして、ストレージ分野で競合関係にある企業とも取引をしてきた。デルはサーバの大手ベンダーであり、競合関係がある企業も存在するが、今回の買収でも関係が維持される状況に変わりない」

同席したヴイエムウェアの会長である三木泰雄氏は、「10年前にEMCに買収された時も、パートナー、顧客から、今後の独立性の維持について多くの質問を受けた。その後の独立性は周知の通りであり、今回のデルによるEMC買収も、その実績をもとに判断されているようだ。10年前ほど多くの質問がない。自然に受け入れられている」と語った。

なお、ゲシルンガー氏は仕事用のデバイスとしてMacを使用していることで知られるが、「1週間前に、マイケル・デルから、Macをそのまま使ってよいと言われた」と明かした。

一方、VMwareのパブリック・クラウド・プラットフォーム「VMware vCloud Air」については、今後、EMCとVMwareによって設立する新会社「Virtustream」へと事業が統合されることになるが、「社名をVirtustreamとしたのは、法律的な観点から選択したもの。Virtustreamは、SAPによる基幹業務を提供するなど、ユニークな強みを持っている。さらに、VMware vCloud Airも継続的に提供を行っていくものになる。新会社の設立によって、クラウド領域において、幅広い要求に対応できる体制が整うことになる」と語った。

「今、変化が激しいIT時代を迎えている。それは、vForum 2015の参加者数が記録的な数を達成していることからも明らか。パートナーの関心が高まり、顧客が直面している課題の解決に強い関心が集まっている。VMwareは、Software-Defined Data Center、統合ハイブリッド・クラウドのほか、エンドユーザー・コンピューティング環境や、クラウドネイティブ・アプリケーション環境を実現するソリューション、そして、セキュリティといった製品群を提供している。日本では、多くのパートナーと共に、顧客の課題解決を提案することができる体制が整っている。今回、富士通やNTTコミュニケーションズとの協業を発表し、日本市場に強くコミットメントをしていることを、改めて強調することができた。エントユーザーコンピューティング分野においても、AirWatchによるエンタープライズモバイルの実現、VDIの伸張など、この分野のナンバーワンプレーヤーである」

さらに、インテル時代を含めて30年以上にわたり、日本でビジネスを行ってきた経験をもとにした発言もあり、「アジアの学生の海外留学経験率は、日本が最も低かった。日本の文化は、密な関係を持つことがベースにあるが、他国と比べて、外と関わり合うことには課題がある。急激に変化する技術をとらえるには、グローバルとのコラボレーションが重要であり、共通の言語で話すことが大切になってくる。ここに、日本が、有効性を発揮するための阻害要因がある。日本の中だけでは、イノベーションは不十分であり、日本の技術力を最大化できない要因になっている」と語った。