2015年を振り返ると、世界を大きく揺るがすニュースが数多く報道された。

めまぐるしく変化していく世界。その中で、これから日本はどのように生き抜いていくべきなのか、変わるために今必要な覚悟とは何か。ジャーナリストの池上彰氏が「cybozu.comカンファレンス2015」で語った。

ジャーナリスト 東京工業大学教授 池上彰氏

なぜ、ヨーロッパへ難民が押し寄せているのか?

現在ヨーロッパへ押し寄せる大勢の難民たち。なぜこのような事態になっているのか。「ニュースではこの夏以降、"大勢の難民たちがヨーロッパへ押しかけるようになった"という報道があるだけ。なぜかということについては報道されていない」と池上氏は語る。そして、池上氏は自身が続けてきた難民取材によって「はっきりとわかったこと」があるという。

「この夏以降のヨーロッパへの難民たちによる奔流は、スマホが普及したからだ。2年前にシリア難民を取材した時には、一部の人が携帯電話を持って、国外に逃げた家族と連絡を取り合っているような状況だったが、今では皆がスマホを持っている。これによって何が起きているのかというと、一昨年や昨年に逃げている人々が、『ドイツに行って難民申請をすると、アパートの世話をしてくれるし、生活費も出される。6カ月たつと働く場所も用意してくれて、ドイツはいいぞ』とスマホで連絡してくるようになり、残っていた人々は、『それならヨーロッパへいこう』と目指すようになった」(池上氏)

現在、難民支援を行っているボランティアの人々は、スマートフォンの充電ステーションを設置し、難民たちに提供している。そのため、スマートフォンが充電切れする心配はないという。また、スマートフォンにはGPS機能がついているため、難民たちは道に迷うこともなく、目的地へ向かっていける。

「スマホを持つことによって、難民たちはヨーロッパへ押し寄せるようになった。これは、大勢のイスラム教徒が、キリスト教であるヨーロッパへと押し寄せているということ。かつて、ゲルマン民族の大移動によって、西ローマ帝国は滅び、今のヨーロッパがつくられた歴史がある。ヨーロッパは今、民族だけでなく、言葉や宗教も異なるアラブ民族をどのように受け入れればよいのか、ヨーロッパの覚悟を問われている」(池上氏)

現在、ヨーロッパでは難民受け入れができなくなっており、先進国が手分けをして受け入れていこうということになると、日本も関係のない話ではなくなってくる。その時、日本社会はどのような対応をとるのだろうか。