ヴイエムウェアは11月10日・11日の2日間、東京・芝公園のザ・プリンスパークタワー東京で「vForum 2015」を開催した。

ヴイエムウェア 代表取締役社長のジョン・ロバートソン氏

同社は、「vForum 2015」を「クラウド、仮想化、ビジネスモビリティの実現に向けた国内最大級のITカンファレンス」と位置づけており、「Software-Defined Data Center」「ハイブリッド クラウド」「エンドユーザーコンピューティング」「クラウドネイティブアプリケーション」の4つのカテゴリーについて、119のセッションが行われたほか、ヴイエムウェアおよびパートナーの製品および技術を一堂に展示するソリューション・ショーケースも用意した。 10日のゼネラルセッションでは、初日の米VMwareの最高経営責任者(CEO)であるパット・ゲルシンガー氏と、ヴイエムウェアの代表取締役社長であるジョン・ロバートソン氏が、「デジタル化時代におけるビジネスの進化に必要な5つの要件(The 5 Business Imperatives of Digital Transformation)」をテーマに、同社の取り組みについて説明した。

最初に登壇したヴイエムウェアのジョン・ロバートソン社長は、「私は長年IT業界で仕事をしているが、今、訪れているトレンドは過去最大のもの」と前置きしながら、VMwareの成長について言及し、2014年度の売上高が約60億ドル、1万8000人の社員となり、7万5000社のパートナー企業、50万人の法人への導入実績があることを示した。日本においては、直近3四半期の売上高成長率が37%増、新たなテクノロジー分野における成長率が72%増、社員が15%増となり、そのうち、3分の2がテクニカルスタッフであることなどを紹介した。

VMwareのビジネスの概況

「VMwareは、サーバ仮想化ソフトウェアの企業にとどまることなく、ネットワーク、ストレージの仮想化にも乗りだしており、さらにはデータセンター自動化ソフトウェア、クラウドシステム管理ソフトウェアも提供している。また、5年連続でエンタープライズ・モビリティ管理分野のリーダーであり、6年連続でx86サーバ仮想化インフラストラクチャ分野でのリーダーとなっている」(ロバートソン氏)

国内では、2300社以上のパートナー企業があり、1万5000社以上への導入実績があることを明らかにしたほか、新たなテクノロジー分野におけるこの1年間の成長率についても言及。ネットワーク仮想化ソフトであるNSXは250%増を達成し、すでに100社以上が導入。パブリッククラウドであるVMware vCloud Airは100%増の成長を毎四半期記録していること、エンタープライズモビリティ製品であるAirWatchは300%増、プロフェショナルサービスは380%増と、著しい成長を続けていることを示した。

「ここにきて、金融分野や製造分野などの顧客が増加しており、プロフェッショナルサービスが重要になってきた。そこで、2016年1月にVMware Briefing Centerを東京に設置し、ワークショップ形式でソリューション導入を支援する。SDDC、ビジネスモビリティ、統合パブリッククラウド、セキュリティなどを、シームレスにデモができるような環境を整えている」と説明した。

また、VMUG(VMware User Group)への参加者が、この9カ月間で500人から1000人に増加していることも明らかにした。

米VMware 最高経営責任者(CEO) パット・ゲルシンガー氏

一方、ゲルシンガー氏は、市場を取り巻く環境変化から話を切り出した。

「1995年にインターネットに初めて触れた時は大きな感動を受けた。当時、57億人の世界人口のうち、オンライン人口は1600万人。これが2015年には世界人口73億人に対し、オンライン人口は31億人にまで増加し、半数近くの人たちがインターネットを利用していることになる。所有するデバイスも、1995年は1人当たり0.1台であったのに対し、今では1人で3台のデバイスを持っている。2020年には1人当たり6台のデバイスを持つ時代がやってくる。さらに、2025年には世界人口81億人に対して、オンライン人口は50億人となり、人口の80%がつながることになる。この時、インターネットによる経済効果は8兆ドル。世界のGDP成長に占める割合は21%に達する」と述べた。

続けて、「今や、iOS用アプリの売上高はハリウッド映画業界を超える規模になっている。アプリが1つの文化を作るようになってきた、すなわち、社会的な責任を持たなくてはならないとも言える。一方、宇宙規模でもITが活用されてITの成層圏を形成する一方、医療分野においては人間の血液の中にもITが入っている。幅広い環境とさまざまな産業領域において、ITが活用されている」と、ITの重要性を説いた。

次に、ゲルシンガーCEOは本題である「デジタル化時代におけるビジネスの進化に必要な要件」について説明した。

要件として最初に挙げたのは「ビジネスの非対称性」である。「現在、大手企業にスタートアップ企業が挑戦できる環境が整っている。それは、モバイルとクラウドが、スタートアップ企業に強大な力を与えることになるからだ。インターネットやクラウドによって、無限の顧客に対するリーチ、無限のアクセスが可能になり、無限のリソースを利用できる」とした。

また、自動車業界の例を挙げ、「現在、自動車の稼働率はわずか4%であり、ほとんどが駐車場に止まっている。これが、ITの活用により、カーシェアが広がり、75%にまで使用率が上がるとどうなるか。自動車を所有するために投資をするのではなく、使用するための従量課金の世界がやってくる。この時、自動車業界のリーダーになるのは、既存の自動車メーカーか、それともUberか。だが、それ以上に大きな影響は、自動車業界と取り巻く業界にも影響を与えるという点だ。2000億ドルの市場規模を持つ自動車保険会社に加え、不動産の価値が変化し、ホテルやレストラン業界にも影響が波及することになる」とし、「これは、象もダンスを覚える必要があるということを意味する。スタートアップ企業のようなイノベーションを、まるで大企業のように実現していく必要がある」と語った。

2つ目の要件は「クラウドのプロフェッショナルの時代」に入ってきたという点だ。「クラウドサービスをバラバラに組み合わせるのは時間の無駄である。これから求められることは、複数のクラウド間でシームレスなプラットフォームを拡張できる統合ハイブリッドクラウド。拡張性を持ったパブリッククラウドと、強固なガバナンスを発揮するプライベートクラウドの長所を生かし、共通のネットワーク、共通の管理機能、共通のセキュリティを活用することで、これを実現できる」とした。また、「クラウドは実験的段階から脱却し、本格的に使われる時代に入ってきた」とも語った。

デジタル化時代におけるビジネスの進化に必要な要件