3つ目の要件が、「ユーザー、アプリケーション、データの保護」。いわばセキュリティだ。

ゲルシンガー氏は「IT予算全体は10%下がっているが、セキュリティの予算は倍増している」と前置きしたうえで、「今や、セキュリティ・アーキテクチャには新たなものが求められている。これまでは組み込みにするか、後付けにするかが議論の中心となっていたが、これからのセキュリティは、仮想化による整合性と汎用性を両立したアーキテクチャに組み込まれたものとなる。そして、エンド・ツー・エンドで対応するものでなくてはならない。これこそが正しい方法で守ることにつながる。安全性は2倍、コストを半減できる。セキュリティのルネッサンスが起きており、IT業界をさらに進化させていくことができる」と説明した。

4番目の要件は「プロアクティブなテクノロジー」である。ここでは、AIの動向について言及。AIは30年前にスタートしたものの、今、振り返るとそれは失敗であったが、現在はアルゴリズムが成熟して、本当の意味でAIが使えるようになったことを示しながら、「スマートフォンで利用するサービスは、基本的には事後対応型である。だが、AIの活用により、事前に行動を予測して、エージェントがわれわれをサポートしてくれるようになる。これは、さまざまな業界に影響を及ぼすことになる。例えば、小児喘息の子供の気道の変化を見て、予防するための治療を事前に施すといったことも可能になる」とした。

また、「この技術は、不気味なのか、便利なのかといった議論もあるだろうが、これからは、干渉なのか、有益なのかということが議論されることになるだろう。Facebookが登場した時、私は自分の性格上、この技術はどうかなと思った。だが、自分の子供たちの行動を把握できるということでアカウントを取った。今では不気味なのか、便利なのかという議論はない」と話したうえで、「プロアクティブな技術によって、すべてのものが自動化され、あらゆることを予測できるようになる。これが、次の時代を動かすポイントになる」と語った。

最後の要件が、「今後10年でIT企業の半分が消滅する」という大胆な予測だ。

ある調査会社は、今後10年でS&P 500社の40%が入れ替わると予測しているが、ゲルシンガー氏は、変化の激しいIT業界で半分が入れ替わるという予測を示した。

「今後10年、大手のIT企業の半数が消えてしまうとすれば、現在、大手企業であることに意味はない。これから現状を打破する時代が到来しており、リスクを取ることが、リスクを最小限にすることができると言える。これまでやってきたビジネスモデルの快適さはもはやない」

デジタル化時代におけるビジネスの進化に必要な要件

さらに、ゲルシンガー氏は「今日のITプロフェッショナルが抱える3つの課題」についても触れた。

3つの課題とは、プライベートクラウド、マネージドクラウド、パブリッククラウドがそれぞれ分断している「クラウドのサイロ化」、従来のアプリケーションとクラウドネイティブアプリケーションが分断している「アプリケーションのサイロ化」、そして、アプリケーションやコンテンツを利用するための「デバイスの急増」だ。

「最適なクラウド環境をどう構築するのか、そして、これまでに投資してきた既存のアプリを新たなアプリとどうつなげるのか。また、モバイルで生産性を上げようと考えている企業が多いなか、PCだけを管理していればいいという時代はすでに終わっている。これにどう対処していくかが大切」とし、「こうした課題に対して、VMwareは、ONE CLOUD、ANY APPLICATION、ANY DEVICEという戦略を打ち出している。ハードウェアをアーキテクチャ化し、統合されたハイパーコンバージト環境で取り扱い、既存のアプリとクラウド・ネイティブ・アプリを単一の環境で利用できるようにする。また、PCやスマートデバイスも管理ができ、能力を増強していくことができる。1つのアーキテクチャで対応できるのが、VMwareが描く世界である」と、3つの課題に対するVMwareの解決策を提示した。

最後にゲルシンガー氏は、「これからはテクノロジーのエキスパートがリードする時代に入る。また、ITプロフェッショナルは、ビジネスにおける起業家であり、改革者でなくてはならない。そうした時代において、VMwareが打ち出すコミットメントはシンプルである。この時代をナビゲートするベストパートナーになるということである。私は36年間のIT業界での経験があるが、今ほど大きな変革が起こっていることはないと考えている」とし、「デルとEMCの合併においても、VMwareはスローダウンすることはない。VMwareは革新的なイノベーターである。テクノロジストとしてリーダーであり、ビジネスへの貢献を行っていくことができる」と締めくくった。

また、ゼネラルセッションでは、ヴイエムウェアの国内先進導入企業サーバの仮想化に加えて、ネットワークの仮想化により、次世代プライベートクラウドを構築した味の素、VMware vCloud Airにより、統合ハイブリッド・クラウド戦略を推進している熊谷組、AirWatchによるビジネス・モビリティの導入によりワークスタイルの変革に取り組んでいるバンダイナムコホールディングスの3社が登壇し、それぞれの事例を紹介した。

「ネットワークの仮想化をエンタープライズに活用するという点で、不安を持つ企業も多いが、これにより、利用品質と運用スピードを向上し、コストを最適化できる」(味の素情報企画部・山口浩一専任部長)、「もはや、データ保護さえしっかりとできれば、クラウドとオンプレミスの比較検討に迷う必要はない時期に入ってきている」(熊谷組経営企画本部経営企画部IT企画グループ・鴫原功部長)、「ビジネスモバイルの実現においては、デバイスの管理ではなく、情報資産を守るという視点が大切である」(バンダイナムコホールディングスグループ管理本部情報システム部・暉由紀ゼネラルマネージャー)などと説明した。