前回の基調講演レポートでも触れたが、Renesas Devcon 2015開催中の10月13日にRenesas Americaは「Renesas Synergyシリーズ」の第1弾として「S7G2」と「S3A7」の2製品をアナウンスし、発売を開始した。実際DigiKeyやAvnetなどの代理店経由では同日から購入可能になっている状態で、さらにこれを搭載した「SOM(System On Module)」や開発キットも入手可能である。そのRenesas Synergyだが今回のDevConではTechnical SessionやKeyman Interview、さらにExibitionでの展示などで大分情報が収集できたので、まとめてお届けしたい。加えていえば、Synergy以外の製品のロードマップなどについても同時にご紹介したいと思う。

Synergy Platformの概要

まずはTechnical Sessionの内容からいくつかご紹介したい。Photo01はこれまでも出てきたものだが、もう少しブレークダウンしたのがこちらである(Photo02)。OSはもちろんThread Xで、さらにThread Xが提供するFileX/USBX/GUIX/NetXといったミドルウェアが標準提供される(Photo02)。具体的にそれぞれのミドルウェアなどはどんなものを提供するのか、というのがこちら(Photo03)。かなり多くのデバイスやサービスに対しての機能が提供されるのが判る。これを利用して、例えばオーディオアプリケーションを作成した例がこちら(Photo04)。別セッションではもう少し細かくアプリケーションの記述方法を説明していたが、か、基本的な機能に関してはかなり簡単に構築できる仕組みになっている。

Photo01:すでにお馴染みの感もあるSynergy Platformの全景

Photo02:ミドルウェアのうち汎用の部分はThreadXのもので、もう少しSynergyに特化した部分はルネサスからApplication Framework/Functional Libraryとして提供される

Photo03:もちろん、これを全部ロードしたらメモリが足りないので、必要なものだけ選んで使う形になると思われるが

Photo04:DACあるいはSSI/PWMへのアクセスはフレームワークから直接ハードウェアにアクセスするあたりが面白い

ところでRenesas Synergyは品質保証についての言及があったが、具体的にどんなものが提供されるかというのがこちら(Photo05)。Synergyの場合ベアメタルなMCUとして使うものではないだけに、割り込みの応答時間はどの程度なのかといった事は予測しにくくなっている。これをカバーするために、ソフトウェアデータシートなどが提供されるのは、汎用向け製品としてはやはり珍しい部類に入るが、広く利用されるためには必要なのであろう。

Photo05:産業向けにはMISRA Cが提供されるというのも、別にSynergyが最初な訳ではないが、汎用向けMCUで最初からこれがラインアップされているのはちょっと珍しい

こうしたSSPのアップデートポリシーがこちら(Photo06)。基本的には、SSPは半年ごとにマイナーリリースが行われ、また2年ごとにメジャーアップデートがある。これらのサポートは継続して行われていくとの事で、ここで新機能の追加やBug Fix、あるいは(後で出てくる)QSA/VSAのSSPへの統合などが進んでいくことになると思われる。そのQSAとVSAだが、どちらもアドオンである事は変わらず、違いはルネサスが品質保証する(Photo07)か3rd Partyが保障する(Photo08)かの違いであるが、今回はその品質保証についての仕様がもう少し明確化されているのが判る。

Photo06:SSPは基本的に2つのリリースが並行してサポートされる予定で、つまりSSP 2.0がリリースされても、SSP 1.xは引き続きサポートやアップデートが続く。理屈上では1.xのサポートが終了するのは、なのでSSP 3.0が登場するであろう4年後ということになるが、このあたりは確認はしていない

Photo07:ルネサスから提供するものをSSPとQSAに分ける理由の1つは、かならずしもSSPに収める事が現時点では適当とはいえない(例えば基調講演で紹介されたVerizonとの協業に関係するStackは、現時点では米国でしか意味を成さないからSSPに入れるのはあまり適当ではない)ものをQSAにしているようだ

Photo08:おそらくどこかのタイミングで、VSAに関するCompatibility Testのサービスをルネサスが始める(でなければ"Renesas Approved"という文言は出てこない)と思われるが、こちらの詳細はまだ不明

ただ、こうしたAPI/ミドルウェアやアドオンを、アプリケーションは必ずしも使う必要が無い(Photo09)というのはSynergyの強みの1つであって、実際例えばモータ制御の中でPWMなどは直接MCUのレジスタをアプリケーションから操作可能となっている。このあたりは必要なところだけ、ミドルウェアを使えば良いという形でアプリケーションプログラマの自由度が高くなっている。

Photo09:逆説的にいえば、APIなりミドルウェアを一切使わずにアプリケーションを記述する事も原理的には可能だそうで。ただそれがどこまで意味があるのか、といわれると謎だが