イメージングの未来

続けて御手洗氏は、キヤノンがイノベーションをもとに切り開く、イメージングの未来について、「Now」「New」「Next」という3つの観点から紹介した。

まず「Now」としては、映像制作カメラシステムの「CINEMA EOS SYSTEM」を紹介。

「5年前に開催したCanon EXPOでは、コンセプトを展示するに留まっていたが、この5年間で製品化するとともに、すでに60%のシェアを獲得している。最新のC300 Mark IIは発売前から待ち望む声があり、この5年間で、キヤノンは、世界の映画産業において欠かせない存在となった。美しい画像や映像を届けるという領域から、その場にいるような臨場感を届ける領域へと事業を拡大し、入力から出力まで繊細な空気間や瑞々しい躍動感までを忠実に再現していくことになる。二次元の画像や映像に、三次元の立体感や質感を与えることで命を吹き込む役割を担っていく」(御手洗氏)。

「CINEMA EOS SYSTEM」(キヤノンのWebサイトより)

ここでは、製造分野におけるウェアラブルデバイスを活用した、3DによるVRシステムも紹介。実際の映像と、3Dデータを組み合わせることで、開発期間の短縮とコストダウンを実現できる技術であるとした。

2つ目の「New」では、オランダのオセ社を買収し、スピードと耐久性を持つVario Printや、高度な色再現性を持つImagePressを製品化し、プリンティング業界のリーダーを目指していることを示した。加えて、成長分野であるネットワークカメラ市場に参入するため、監視カメラメーカーであるスウェーデンのアクシスコミュニケーションズ、ビデオ管理ソフトを開発するデンマークのマイルストーンシステムズを買収したことに触れた。

キヤノンが買収した企業

「この2つの会社が加わったことで、キヤノングループは世界最大のネットワークカメラシステム企業になった。これにより、家庭だけでなく、オフィス、空港、都市の監視のほか、情報収集衛星や公共インフラに至るまで、あらゆる可能性を視野に入れて、事業を強化したい」(御手洗氏)。

最後に「Next」という観点では、「イメージング技術に磨きをかけて、インダストリやソサエティという分野にも事業の幅を広げたい」と語る。

「ここでは無限の可能性を秘めたセンサーが重要な役割を果たす。これまでにも、世界最高峰のイメージセンサーを開発し、これを絶えず進化させてきた経緯がある。5年前には、0.3ルクスの照度に対応したイメージセンサーを披露したが、今回はISO感度400万相当で、最低被写体照度0.0005ルクスの多目的カメラを開発した。肉眼ではなにも見えないような被写体を、カラーでくっきりと映し出すことができる。

また、2億5000万画素のイメージセンサーの開発にも成功した。これは4Kの30倍にあたる多画素であり、18km先を飛んでいる飛行機のロゴをはっきり映し出すことができる。そして、時間を越えて被写体を捉えることにも挑戦している。2022年に完成する直径30メートルの主鏡を持つ超大型望遠鏡のTMTの開発にも、光学、精密、計測技術の分野から協力している。これを活用して宇宙の歴史を過去に遡ることができる」(御手洗氏)。

さらに、微細化技術への取り組みにも言及。「キヤノンが取り組んでいるナノインプリントは、微細化とともに、コストダウンも可能になり、IoT時代を支える最先端技術である」と位置づけた。