去る10月23日、カシオ計算機とKADOKAWAの音楽レーベル「Mono Creation」に所属するミュージシャン、Stella.J.Cの「Stronger Every Day」リリースパーティーが、Billboard Live Tokyoで行われた。当日は彼女のライブに加え、ゲストのスペシャルライブや国内インディー系レーベルオーナーによるパネルディスカッションなど、盛りだくさんの内容が披露された(以下、敬称略)。

ウーター・ヘメル

Stella.J.C

第1部はStella.J.Cのライブ。シングル「Stronger Every Day」をともに制作したジャズピアニスト・平戸祐介(P)、元Ovallの関口シンゴ(G)、オランダジャズ界の天才シンガーであるウーター・ヘメル、クラブミュージック界で活躍する鈴木信吾(B)などを迎えたスペシャルバンドでのお披露目だ。クラシックピアノのスキルに、ブラックミュージックを融合させたサウンドメイクを得意とするStella.J.C。クラブミュージックのグルーヴを持つメロディに、透明なウーターの歌声が乗るパフォーマンスは、今後のコラボへの期待と飛躍を感じさせるものだった。

「Best Jeanist Award」一般新人部門アーティスト賞のStella.J.C。その縁から参加している被災地支援Tシャツを紹介した。ウーター氏も着用し、サインで協力

第2部は、個性あふれる国内レーベルのプロデューサーによるパネルディスカッション。主催のMono Creationから梶浦氏、関口シンゴ氏やSWING-O氏が所属するorigami PRODUCTIONSから対馬氏、イベント「KAIKOO」を主催するPOP GROUPから坂井田氏、goontraxから寿福氏、GAGLEが所属するJazzy Sportからファンタジスタ雅也氏という5名が、現在の音楽業界や楽しい音楽の聴き方などについて語った。

本ライブの開催経緯を「レーベルの横のつながりを強め、コラボレーションも加えたイベントを作りたかった」と語った梶浦氏。

国内レーベルのプロデューサーによるパネルディスカッション

それに重ねて「各レーベルが競い合ってきた音楽業界も今は協力が必要になってきた。小さいレーベルでも皆で集まれば楽しい音楽を世界に広げられると思う」(津島氏)、「好きを第一に音楽を作ってきたが、個々の力ではどうにもならなくなってきた。多くの人が聞く音楽=よい音楽では必ずしもないことを伝えるためにも協力していきたい」(坂井田氏)と、他のプロデューサー諸氏も肯く。

信念にもとづく音づくりを続けるためには、レーベル側も工夫と変化の必要があると考えていることが伝わってきた。さらに梶浦氏は「1980年のカシオトーン201(編注:電子キーボード)から生まれたものづくりの遺伝子が、レーベルのベースにはある。誰でも楽しめる楽器を提供したいというシンプルな思いから、音楽をアピールしたいと考えた結果がMono Creation。音楽と日本に"CASIO"という視点から一石を投じたい」と、レーベルの方向性を解説した。

さて次に、POP GROUPとorigami PRODUCTIONが立ち上げ予定の教室「ロンズルーム」について。

津島氏は「情報過多の時代だが、もっと音楽を楽しんで聞ける状況を作りたい。そこで最もハイレベルなリスナーであるアーティストに、解説つきの演奏をしてもらうといいのではと考え付いた」と骨子を説明。この日はギター・ドラム・ベースという3ピースバンドの演奏に関口シンゴ氏が解説をつける形で、J-POPに多い速めのテンポとバラードに多い遅めのテンポの違いをドラムのハイハットの変化から感じる、という例が披露された。会場には若い女性からブラックミュージックのファンまで幅広い層がいたが、珍しくもわかりやすいアプローチに、みな興味深く耳を傾けていた。

AFRA(左)とSWING-Oのセッション

HUNGER(中)を加えたスペシャルコラボ

第3部は、ピアノとラップとヒップホップの融合がモットーであるSWING-Oのライブ。ソロ曲だけでなく、大阪つながりでヒューマンビートボクサーのAFRAがゲストで登場。笑いを交えつつも、きっちりとクールなライブを披露した。日本にヒューマンビートボックスを根づかせた第一人者であるAFRAのオリジナル曲「DayBreak」や、GAGLEのHUNGERとの2MC1DJ…ならぬ2MC1キーボードで奏でる「聞こえるよどこにいても」と、ファンでも見たことがないであろう珍しいコラボレーションが繰り広げられた。

第4部は、ヴォーカリスト・Ai Ninomiyaのライブ。Sixpence None The Richer「kiss me」で親しみ、アリシア・キーズ「Enpirestate of Mind」ではノビのある歌声で「これぞディーヴァ!」という迫力、スティービー・ワンダー「Another Star」ではファンキーな楽しさとカラフルな歌声を披露した。

Ai Ninomiyaのライブ

Stella.J.Cが再び聴かせる歌声

ラストはStella.J.Cが登場し「Don't Cry」を。「フラれた女の友達を慰める友情の歌なので一緒にできて嬉しい」という言葉の通り、優しいピアノの旋律にしっとりと力強く響く言葉という、この上ない歌を聞かせてくれた。

GAGLE

トリを飾ったGAGLE。「Jazzy Sportsに所属して初めて作った」という曲や、「カシオはものづくりの大切さを知る大先輩。イチから作ることにこだわってきたので、今後も粘り強くやっていきたい」と言葉を添えた曲のほか、初セッションだという平戸祐介と「屍を超えて」を披露した。

イベントの最後には、平戸氏からBest Jeanist賞を祝う花束がStella.J.Cに贈呈

楽器メーカーが運営する国内では珍しい音楽レーベル「Mono Creation」。バリエーション豊かなライブを体験した観客はもちろんだが、参加したミュージシャンたちも新しいコラボの結果に満足そうな一晩だった。