フィギュアスケートのシーズンが本格化してきました。10月24日にはグランプリシリーズの初戦となるスケートアメリカが開幕し、国内でも「第19回全日本フィギュアスケートノービス選手権大会」が10月23日から25日にかけて行われました。これらの主要大会だけではなく、国内各地でも全日本選手権やインターハイなど、それぞれの全国大会に向けての予選が行われています。

試合が続くなかで大切になってくるのは、選手たちの身体をつくるための栄養補給です。今回はフィギュアスケーターの栄養管理について、少しお話しさせていただきます。

フィギュアスケート・高橋大輔さんは現役時代に徹底的な栄養管理を行っていた

他競技選手との合同合宿での衝撃

アスリートにとっては「食事もトレーニングの一環」であることは、現在は多くの人に知られていると思います。競技の特性に適した食事の取り方や、年齢に応じた栄養摂取方法など、アスリートたちはさまざまな観点から食事を考えています。

私がノービスの選手だった頃、「フィギュアスケート」「新体操」「体操」「シンクロナイズドスイミング」の4つの芸術スポーツのジュニアのトップ選手を対象にした合同合宿で、他競技の選手と交流する機会がありました。同じ芸術スポーツということで通ずるものもあり、すごく刺激になったのを覚えています。

同じ講義を受けて食事も共にしましたが、競技によって食事の取り方に差があり、このときに初めて食事のことを意識し始めたと記憶しています。シンクロナイズドスイミングの選手は、ごはんの量を調べてカロリーを計算していましたが、「ここまで意識をしないといけないものなのか」と驚きが隠せませんでした。

「栄養のプロ」に支えられていた高橋さん

現在では各地の一流選手が集まる野辺山合宿でも栄養指導が行われており、フィギュアスケート選手も栄養面に気を遣っている選手が増えてきたように思います。アスリートと一般の人では摂取量が異なるため、アスリートを専門にしている栄養士さんに相談する選手もいますし、チームやクラブで栄養士さんに講演をお願いしているところもあります。

今はアスリートの栄養についての書籍はもちろん、情報がすぐに検索できる環境になってきているため、そういった情報を頼りに自分自身で管理をするという選手も多いのではないでしょうか。

私も現役時は栄養士さんに相談することはありましたが、トップ選手の多くは、「栄養のプロフェッショナル」にさまざまな形でサポートを受けています。高橋大輔さんもその一人でした。

スケートファンの中では有名な話かもしれませんが、高橋さんの遠征には「栄養アドバイザー」とも呼べるそのプロの方がほぼ毎回帯同されており、現地でバランスの整った食事を毎日提供されていました。

遠征中だけではなく、日々のトレーニングでもきちんと食事が取れるよう、週に1度、高橋さんの家で1週間分の食事を料理されるなど、栄養面での二人三脚で身体をつくりあげてこられました。情感たっぷりなステップを踏むためのしなやかでたくましい脚は、この徹底した栄養管理によって支えられていた一面もあるはずです。

サポートが始まってからは、高橋さんも作りおきされている物をお弁当箱に詰めてくるなど、食事を楽しんでいるなという様子がうかがえました。当時は私もまだ現役選手だったので、一緒に食事をしながら、「野菜一つとっても、葉物と根菜では食べる意味が異なる」などの食材にまつわる豆知識を高橋さんから教わるといった楽しい時間を過ごさせていただきました。

選手応援のため、ファンの方も栄養補給を

こうした徹底したサポートを受けられるのはごく限られた選手になりますが、サポートの方法はさまざまです。毎回の食事を写真で栄養士さんに送り、足りないものを次の食事で補ったり、栄養士さんと決めたルールに沿って食事をしたりするなど、選手の性格によってもサポート方法は異なってきます。

これから選手は連戦になり、疲労を早く回復し、次へのエネルギー補給をしなくてはいけなくなるため、今まで以上に栄養に気を遣うことになります。選手のために各地へ応援に来てくださるスケートファンの皆さまも、体調を崩すことがないよう、ぜひ選手たちと共に栄養面にも気を配ってくださいね。

筆者プロフィール: 澤田亜紀(さわだ あき)

1988年10月7日、大阪府大阪市生まれ。関西大学文学部卒業。5歳でスケートを始め、ジュニアGP大会では、優勝1回を含め、6度表彰台に立った。また2004年の全日本選手権4位、2007年の四大陸選手権4位という成績を残している。2011年に現役を引退し、現在は母校・関西大学を拠点に、コーチとして活動している。