芝本産業は29日、米3D ROBOTICS社との提携を発表した。合弁子会社の日本ニューホランドを通じて、3D ROBOTICSのドローンおよび関連機器を国内販売する。本稿では、都内で開催された記者説明会の模様をお伝えする。

芝本産業は米3D ROBOTICS社との提携を発表。日本ニューホランドを通じてドローンおよび関連機器を国内販売していく

世界初のスマートドローン

都内で開催された記者説明会の会場では、3D ROBOTICSの最新ドローン「Solo」も展示された。Soloは、3D ROBOTICSが"世界初のスマートドローン"とうたうフラッグシップ機。GoPro(Woodman Labs社)との協力関係により、世界で初めて飛行中のGoPro操作を可能にした。パイロットは、iOS/Android向けの無料アプリを通して、GoProカメラからの美しいライブ映像を楽しめる。経験の少ない初心者でも、安全に飛ばせる配慮も込められているという。また、オープンソースで設計されており、エンジニアが自由に開発できるのも特長のひとつ。

世界初のスマートドローン「Solo」。飛行中、自由にGoProカメラを操作できる。消耗品のバッテリー、プロペラは交換できる仕様で、機械に不慣れな初心者にも扱いやすい

テレビゲームのコントローラをイメージしたという専用コントローラには、手持ちのスマートフォンやタブレットを取り付けられる仕様。指先で、Soloのフライトとカメラ操作の両方を行えるように設計されている。

テレビゲームのコントローラをイメージしたという専用コントローラ。背面にはドローンと通信するWi-Fiのアンテナ、GoProを操作するボタンが付いている

ドローン一式を収納し持ち運べるリュックも用意されている

ギャラリー

まずは農業分野から

芝本産業 取締役社長の芝本尚武氏。「ドローンは『玩具』から『データを収集する空飛ぶ機械』へと進化してきている」と話していた

記者説明会には、芝本産業 取締役社長の芝本尚武氏、3D ROBOTICSのCEOであるクリス・アンダーソン氏、日本ニューホランド 取締役社長の芝本政明氏が登壇した。

芝本尚武氏は「農業をはじめとして様々な産業にSoloが活躍できるのではないか」と期待感を口にした。そして「合弁子会社の日本ニューホランドは、大型の農業機械に関しては先駆的な存在。Soloの活躍を念頭に事業展開していく。広範囲の産業のお役に立てるよう、これからも努力を重ねていきたい」と述べた。

3D ROBOTICS CEOのクリス・アンダーソン氏は「パートナーシップでは教えていただくことも多い。芝本産業と提携でき、非常にワクワクしている」と興奮気味に語った

クリス・アンダーソン氏は、同社がこれまで時間をかけて作り上げてきた、信頼性が高く扱いやすいドローンを紹介。「これからは、どのように使っていくかに焦点を絞っていく。Soloは、写真や動画を撮る以上のことが可能になる製品。世界をデジタル化すれば、もっと色々なことを効率よくマネージできるようになる」と説明した。

「弊社では、創業当時から海外の大型農業機械を日本国内に提供してきた」と話すのは、日本ニューホランドの芝本政明氏。

日本ニューホランド 取締役社長の芝本政明氏は「農業に尽くす者は、人類に奉仕する者である」という社是を紹介した

「昨今、日本の農家では大規模な農地を、いかに少ない人数でマネージしていくかにシフトしている。弊社にとっても、新しい農業のソリューションを提供できる良い機会になるのではないか」と話した。芝本政明氏によれば、農業分野においてもテクノロジーの進歩は目覚ましいものがあるとのこと。その一例としてGPS、衛星システムを使った精密農業などを紹介し、「未来型の農業が始まっている」と解説した。

農家からは、すでにドローンを使った農業に期待する声が寄せられているという。芝本政明氏は「Soloを使えば、高所から作物の状況を見ることができる。田畑のどこで病気が発生しているかなどを把握でき、必要なところに必要なだけの農薬を散布できる。しかしそれは最初のステップに過ぎない。得たデータをもとに、さらに効率よく農業を進める方法を考え、新しい技術を日本の農家にお届けしていきたい」と話した。

値段、発売時期は?

最後に質疑応答の時間がもうけられた。「業務領域は農業だけか」という質問に、芝本尚武氏は「はじめは農業に軸足を置きながらサービスの体勢を整えていく。同時並行で各産業の皆さんにサービスを紹介していき、ゆくゆくは中身の開発まで皆さんと一緒になって進めていければ良い」と回答。

値段について聞かれると、同氏は「コンシューマータイプのドローンとはコンセプトが違う。従って一般的なドローンよりは高価になる。プレミアムなプライスで提供して、それに見合った性能、サービスをお届けできればと考えている」とした。

アンダーソン氏は「Soloには様々な可能性がある。現在販売されているドローンの中で最も性能が良く、サードパーティがアプリを開発することもできる。まったく新しい使い方ができるのではないかと期待している」と話した。

質疑応答で記者団の質問に回答する三氏

アンダーソン氏によれば、3D ROBOTICSのドローンは現在、9カ国で販売しているとのこと。来年(2016年)の第1四半期には全世界で販売する予定だという。想定される販売台数については「現在は大きな数としかいえない。1日に1,000台ほどのペースで生産しているので、10万台とか、そういった数になる」と話す。

いつ発売されるのか、という質問に芝本尚武氏は「3D ROBOTICSからは、(2015年)12月の初めには日本の法律にかなったものを出荷したい、と聞いている。それは私どもの願いでもある」と回答。続けて日本での販売台数の目標を聞かれると、「日本のお客様の目は厳しい。お客様の反応を勉強させていただきながらやる。まずは慎重に販売したいので、最初の6カ月で数百台以上は売りたくない。(ハード、ソフト、サポートなどが)安定した後に、それを越えて販売できるようになれば嬉しい」とした。

他社製品との差別化要素について、アンダーソン氏は「(空撮ドローンを展開する)DJIは操縦性に重きを置いている。私どもは、自動で飛べることに重きを置いている。SoloはGoProとの提携関係をもとに開発した。ドローンでGoProを使うのに一番良い製品だといえる。我々は現在、世界で3番手かも知れないが、今後は企業向けにも積極的に展開していく。他社のドローンは空飛ぶ玩具、Soloは空飛ぶコンピューターといえるのではないか」と言葉に力を込めていた。