日本政策金融公庫(日本公庫)が実施している「第3回 創造力、無限大∞ 高校生ビジネスプラン・グランプリ」。7月1日から応募受付を開始、9月18日にエントリーは締め切られ、その間、264校からエントリーがあった。応募に当たっては、希望する全国の高校に公庫職員が訪問し、ビジネスプラン作成をサポートする「出張授業」を4月から実施。前回、埼玉県八潮市の同県立八潮南高校で行われた同校で第1回となる「出張授業」をレポートしたが、今回は、ビジネスプランシート提出直前に行われた同校で第4回目となった「出張授業」の模様についてレポートしたい。

「高校生ビジネスプラン・グランプリ」とは?

「高校生ビジネスプラン・グランプリ」は、約2万の創業企業に融資をしてきた日本公庫が、その経験・ノウハウを「起業教育」の現場に還元することや、活力ある日本を創り、地域を活性化するため、次世代を担う若者の創業マインドの向上を図りたいという想いから開催しているもの。

「第3回 創造力、無限大∞ 高校生ビジネスプラン・グランプリ」は、全国の高校(中等教育学校後期課程を含む)の生徒からなるグループまたは個人に応募資格があり、募集内容は「若者ならではの自由な発想や創造力を活かした以下のプランとなっている。

  • 人々の生活や世の中の仕組みをより良いものに変えるビジネスプラン

  • 地域の課題や環境問題などの社会的な課題を解決するビジネスプラン

10月16日がビジネスプランシートの提出期限で、12月上旬にファイナリスト(最終審査会参加者)が発表され、来年(2016年)1月10日に最終審査会が開催される予定。グランプリ、準グランプリ、審査員特別賞、高校生ビジネスプランベスト100などが、表彰対象となる。

「出張授業」で生徒たちの熱意に火がついた!

埼玉県八潮市にある同県立八潮南高校も、同グランプリに応募。同校はビジネス教育に力を入れており、日本公庫からの呼びかけに応じ、「ビジネスプラン・グランプリ」に参加することとし、「出張授業」も受けることにした。「出張授業」と同グランプリに応募の際必要となるビジネスプランシート作成は、手島明良教諭が統括する同校3年生の授業科目「課題研究」の一貫として行われてきた。

前回レポートしたのは第1回の「出張授業」だったが、同校はより高いレベルのビジネスプランシート作成を目指し、第2回(9月11日)、第3回(9月28日)と出張授業を受講。筆者が今回取材したのは第4回となる「出張授業」で10月8日に実施された。授業前にはすでに6つのグループがビジネスプランを作成をしており、最後の「出張授業」はビジネスプランシート提出直前に最後のブラッシュアップを図るためのものとなった。手島教諭によると、ビジネスプラン応募のためのグループは生徒が自発的につくったという。また、日本公庫によると、同じ高校への4回にわたる出張授業は初めてとのことで、いずれからも八潮南高校の生徒たちの熱意がうかがえる。

今回の出張授業は、第1回と同様、日本公庫 国民生活事業 北関東信越創業支援センター 所長代理の濱田健志氏が担当。まず、各グループがそれぞれのビジネスプランを発表した上で、他の生徒から質問を受け、最後に濱田氏がアドバイス。生徒からの質問は鋭いものも多く、発表者との熱い質疑応答が交わされた。

濱田健志氏

「PHVプロジェクト」「身近に草加せんべい」「献立冷蔵庫」

最初に発表したグループは「M5」。ビジネスプランのタイトル(取材時点、以下同)は「STOP温暖化 PHVプロジェクト」だった。内容(取材時点、以下同)は「プラグインハイブリッドカー限定価格でガソリンを通常よりも安く販売するサービス」。ビジネスプランを思いついたきっかけ・目的(取材時点、以下同)は、「少しでも温暖化をとめたいと思った時に、PHV車があることを知った」、「それを多く普及できれば地球温暖化対策になると思ったから」とした。

「STOP温暖化 PHVプロジェクト」の発表

これに対して他の生徒からは「最終的にガソリンを売りたいのか、PHVを売りたいのか?」などの質問が出た。また、濱田氏からは、「電気自動車との違いや真似されないための工夫などを盛り込んではどうか」などのアドバイスがあった。

次のグループは「NATURALs」で、ビジネスプランのタイトルは「いつでも身近に草加せんべい! 移動車で手焼き体験」。内容は「移動販売で草加せんべいを販売し、作ることも体験できるサービス」。ビジネスプランを思いついたきっかけ・目的は、「地域活性化のために埼玉県の特産は何かと考えたところ、草加せんべいが他県からの認知度が高く、県をPRするためには草加せんべいが最適と思ったから」としている。

「いつでも身近に草加せんべい! 移動車で手焼き体験」の発表

これに対して、生徒から、「移動範囲をどこまで広げるのか?」「いくらで売るのか?」「せんべいは自社で作るのか?」「せんべいの保管場所はどうするのか?」など、プランを具体化させるための質問が数多くあった。濱田氏は、「この移動販売車でわざわざせんべいを買うかどうか。最大の特徴はここだという点を打ち出す必要があるのではないか」とアドバイスした。

「いつでも身近に草加せんべい!」に関して質問

「いつでも身近に草加せんべい!」に関して答える生徒

続いてのグループは「☆rebolution☆」。ビジネスプランのタイトルは、「献立冷蔵庫」で、内容は「冷蔵庫と液晶画面を一体化し、毎日献立を考える必要性をなくす」。ビジネスプランを思いついたきっかけ・目的は、「毎日の献立に悩む主婦のために思いついた。時間をかけずにバランスの良い献立を提供し、主婦を助けるほか、家族の団欒の増加を促し、さらに料理を作る技術をあげる」とした。

「献立冷蔵庫」の発表

これに対し、生徒からは、「野菜は傷みやすいけどどうする?」「冷蔵庫内の食材を出し入れするときにバーコードで読み取るというが、その読み取り作業は煩雑になるのでは?」などの質問があった。濱田氏からは、「ターゲットが多すぎるのでは? 世帯数などを調べてプランを練り直したほうがいいのでは?」などとアドバイスがあった。

「お菓子作り機械」「椅子で発電」「翻訳アプリ」

第4のグループは「Vizas」。ビジネスプランのタイトルは、「cooking house」。内容は、「お菓子作りで面倒な材料の計量や刻み作業を簡単に行える機械」で、ビジネスプランを思いついたきっかけ・目的は、「プレゼントやバレンタインデーでお菓子を作る際にお一つ一つの材料を計ることが面倒なため、自動で計量する機械があれば時間と手間が省けると思った。また、お菓子作りの初心者や子供がこの機械を使うことによって、料理をすることに興味を持ち、インスタントだけではなく自炊する習慣も付く」とした。

「cooking house」の発表

これに対しても、説明図を見て「左利きの場合はどうする?」などの質問が生徒からあり、濱田氏からは、「親子で楽しめるような要素を入れたほうがいいのでは」とのアドバイスがあった。

「cooking house」に関して質問

図を示しながら回答する生徒たち

第5グループ「QUO」のビジネスプランのタイトルは、「座☆発電」。内容は、「授業中に椅子に座って発電し、学校の電力需要に貢献する」。ビジネスプランを思いついたきっかけ・目的は、「原子力発電の多くが止まっている中で、電力不足が懸念されていることに注目し、エコで簡単にできる発電方法を考えたことから思いついた」。

「座☆発電」の発表

生徒からは、「椅子に置くのは人ではなく物でもいいのか?」「男子と女子の場合の違いはあるか?」「コードはどうするのか?」など数多くの質問があった。濱田氏は、「発電する仕組みや蓄電する仕組みをもう少し詳しく説明したらいいのではないか」などのアドバイスがあった。

最後に発表したグループは、「エスペラント」。ビジネスプランのタイトルは、「私たちから始まるオリンピック」で、内容は、「東京オリンピックに向けて急増する外国人に向けた、言語での『お・も・て・な・し』となる翻訳アプリケーションサービス」。ビジネスプランを思いついたきっかけ・目的は、「オリンピックとは自国民だけでなく他国の人も訪れる。そこで外国人観光客がより快適にすごせるような、私たちなりの『お・も・て・な・し』ができるようなサービスを企画した」。

「私たちから始まるオリンピック」の発表

生徒からは、「東京オリンピックが終わったら外国人が減るリスクがあるのでは?」「Web技術は真似されやすいがそれはどうするのか?」などの質問があり、濱田氏からは、「この翻訳サービスのポイントが日常会話であることをもっと主張したほうがいいのでは」などのアドバイスがあった。

生徒同士のやり取りが次第に活発化、社会的課題意識したプラン多数

以上、それぞれのプランとそれぞれのプランに対する質問、アドバイスの一部を紹介したが、生徒たちの質問が次第に鋭くなり、発表者たちとのやり取りが次第に活発化する様子が印象的だった。起業が盛んな欧米などでは、おそらくこういう授業が数多く行われているのではないか、だが日本でもこうした日本公庫のグランプリなどに参加することによって、起業へのハードルは低くなるのでは、との感想も持った。

また、「東京オリンピック」や「電力不足の懸念」、「埼玉県の活性化」や「環境問題」など、ビジネスプランのテーマが社会的課題に対応したものが多かったのも印象に残った。「イマドキの若い者は…」との枕詞には、「よく物事を考えている」と続けたくなった一日でもあった。

他のグループの発表に最もよく質問し、「エスペラント」のリーダーでもある奈良夏希さんは、「質問することがそれぞれのプランの課題を見つけるのに役立つと思い質問しました。自分たちのビジネスプランの作成については、壁も多くありましたが、東京オリンピックに来た外国人の方々がさびしい思いをしないようにとサービスを考えました」と話していた。

「☆rebolution☆」のリーダーを務めた小倉恭介さんは、「みんなで協力しあった結果としてビジネスプランができました。ここまでみんなと頑張れて本当に良かったと思っています」とプラン作成の意義を話していた。

八潮南高校の皆さんがファイナリストに進み、さらに受賞されることを願ってやまない次第である。