シュア・ジャパンは10月22日、都内で新製品発表会を開催。米Shureからワイヤード・カテゴリー・ディレクターのマット・エングストローム氏と、プロダクト・マネージャーのショーン・サリバン氏の2名が来日し、コンデンサー型イヤホンシステム「KSE1500」やポータブルヘッドホンアンプ「SHA900」のほか、フラッグシップイヤホン「SE846」の新色を発表した。本稿では、発表会で語られた新製品の開発秘話と、KSE1500の試聴レポートをお届けする。

米Shureのショーン・サリバン氏(左)とマット・エングストローム氏(右)

世界初のコンデンサー型イヤホン「KSE1500」

KSE1500。価格はオープンで、推定市場価格は税別360,000円

今回最大の目玉であるKSE1500は、コンデンサー型のイヤホンとUSB DAC搭載のポータブルアンプがセットになったモデル。開発をスタートしたのは2007年で、同社のエンジニアがコンデンサーマイクの技術を応用し、コンデンサ型イヤホンのプロトタイプを作ったのが始まりだという。そのプロトタイプは、お世辞にも見た目が良いとは言えず、ハウジングやケーブルはむき出しのまま。「まるでサイファイムービー(SF映画)のよう」であったとサリバン氏は語る。

イヤホンのプロトタイプ。サリバン氏にサイファイムービーと言わしめたのは中央

アンプ部のプロトタイプも公開した。シンプルなつくりのように見える

しかし、このプロトタイプからは思いがけない高音質を得られたという。そして、時間がかかるタスクであることを承知で開発に乗り出した。それから約8年のあいだ改良を重ね、製品としてのクオリティを確保するに至ったのだ。

ドライバーには、非常に小型のダイアフラム(振動板)を搭載。ダイアフラム固定極板内の空間は驚くことに2000分の1インチ、毛髪の直径の半分程度しかないという。入力した音声信号に対して、とにかく速く、忠実にレスポンスできる点が特徴だ。サリバン氏は、「ボーリングの球を手に持って腕を振ることは難しいが、ピンポン玉を持ったときは速く振れるのと同じ」と、独特な表現で小型ダイアフラムの優位性をアピールした。

ドライバーの構造。超小型のダイアフラムを「無質量」と表現している

KSE1500のレスポンスは複数のBAを搭載したイヤホンに比べ、原音に忠実だ

「ポータブル」であるため、太すぎるケーブルは採用したくない。新たに、細くて丸型のイヤホンケーブルを開発した。

コンパクトなきょう体に多くの機能を詰め込んでいると、基板上で干渉しあいノイズを生みそうなものだ。しかしKSE1500のポタアンは、10層基板を採用することで、各機能が独立してドライブできるよう工夫を施している。

KSE1500のアンプ部(クリックして拡大)

付属イヤーピース

KSE1500を試聴

筆者はKSE1500を直接iPhoneにつなぎ、女性ボーカルのポップスを試聴した。普段試聴の機会をいただくと、再生ボタンを押した瞬間に何かしら感じるものがあるのだが、今回は感想が何も思い浮かばなかった。恐ろしいことに、音に嫌味がなさ過ぎて、このイヤホンの特徴が「ピュアである」ということに瞬間で気付けなかったのだった。

そのまま聴き続けていると、今まで自分の耳に聴こえていなかった音がどんどん聴こえるようになってくる。高音の細かい粒が押し寄せてくる感覚がありながらも、かなり澄み切っているので、聴いていてストレスを一切感じない。ボーカルも、マイクを通さずに耳元でささやかれているように感じた。息遣いやかすれ声がかなり鮮明に聴こえてくる。また、音の滞りがまったくないので、スピード感もあった。

大きな声で言うのは恥ずかしいが、このイヤホンには、ピュア、さわやか、せせらぎなどといった言葉が似合うと思っている。間違いなく、10月24日から開催される「秋のヘッドフォン祭」の目玉となることだろう。秋のヘッドフォン祭のShureブースでは、24日13時からKSE1500を一般公開。試聴も行えるという。