町家バーで京都の夜を"粋"に過ごそう(写真は、「ぎをん フィンランディアバー(FINLANDIA BAR)」店長の仲井知亨さん)

京都を訪れる人の多くが、夜はどこで過ごそうか迷っていると聞く。京都のナイトスポットは数え切れないほどあるが、京都らしさを求めるなら、京町家を改装した町家バーで"粋"にきめるのがおすすめだ。「一見さんお断り」のイメージがある京都だが、今回紹介する京都市内の店は、初めてでも気軽に楽しめるところばかりだ。

京都の花街・祇園で楽しむ北欧の味

まずは、京都の花街の代表ともいえる祇園のバー「ぎをん フィンランディアバー(FINLANDIA BAR)」を紹介しよう。

祇園では、にぎわう花見小路から一歩路地に入れば、京町家が軒をつらね、いかにも京都らしい風情が漂う。その中の一軒の町家が「フィンランディアバー」だ。店先には小さな看板が出ているだけなので、通り過ぎてしまわないように注意が必要。

この町家は、もともと芸妓(げいこ)さんが個人宅として使っていたという、昔のお茶屋さんの建物だ。その1階部分をバーに改装したという店内に入ると、桜の木そのままのフォルムを生かしたカウンターと、カウンターの後ろに並べられた豊富な種類の酒のボトルが目に入る。他店ではなかなか目にしない北欧諸国の酒を豊富に扱っているのが、同店の大きな特色だ。

店先の小さな看板を見逃さないように

店内には、桜の木のフォルムを生かしたカウンターが備えられている

しかし、なぜ祇園でフィンランドなのか。店長の仲井知亨さんに聞いてみたところ、そのきっかけは、1970(昭和45)年に開かれた大阪万博を同店のオーナーが訪れたことまでさかのぼる。万博内のフィンランドのパビリオンで北欧文化に魅せられ、その後、京都の某所にフィンランド料理専門店を開業。その店を母体として、1982(昭和57)年から祇園でバーの営業をはじめたのだそうだ。

ちなみに、同店には酒のメニューは置かれていない。バーに慣れている人なら好みの酒の種類と飲み方を伝えればいいが、酒に詳しくない人が、上手に自分の好みをバーテンダーに伝えるコツなどはあるのだろうか? 仲井さんに聞いてみた。

「カクテルなら、例えば"ウォッカは苦手なので使わないでほしい"など、ご自身の苦手なものをおっしゃっていただくと良いでしょう。あとは"甘いもの"、"辛いもの"、"フルーツが好き"などの好みをお伝えいただければ、その日の気候や材料の相性などを考えながらおつくりします」とのことだ。

今回は、フィンランド産のウォッカ「FINLANDIA」をベースにしたウォッカトニック(1,000円)と、つまみに「トナカイのソーセージとピクルスの盛り合わせ」(800円)を注文した。トナカイの肉が一体どんな味か想像がつかなかったが、食べてみるとクセがなく食べやすい味だ。サンタクロースの橇(そり)をひいているイメージのトナカイだが、北欧ではステーキで食べることもあり、ごく日常的な食材なのだそうだ。

「トナカイのソーセージとピクルスの盛り合わせ」(800円)

また、BGMを一切流さないのも同店の特徴。落ち着いて会話を楽しんでほしいのはもちろん、お酒のメイキングやシェイキングの心地よい音も味わってほしい、との思いからそうしているのだそうだ。

祇園の静かなバーのカウンターで、ほろ酔い気分で北欧の大地に思いを馳(は)せてみる、そんな夜を味わってみてはいかがだろうか。

●infomation
ぎをん フィンランディアバー
京都市東山区祇園町南側570-123
定休日: 年末年始、お盆
営業時間: 18:00~翌3:00
最寄り駅: 京阪本線「祇園四条」駅