既報のとおり、Microsoftが米国時間10月6日に開催した発表会は新デバイスが中心となり、Windows 10に関して多くは語られなかった。だが、「Surface Pro 4」や「Surface Book」など話題に事欠かない。そこで本レポートでは数回にわたってMicrosoftの新デバイスが持つ可能性を考察する。

発表会のトップバッターはTerry Myerson氏。以前より痩せた印象を受ける

Microsoft Surface担当CVPのPanos Panay氏

デスクトップPCを置き換える「Surface Book」

まずは、2-in-1スタイルでありながら、ノートPCとしての性格を色濃く持つ「Surface Book」の特徴を確認していこう。最大の注目ポイントはキーボード周りだ。脱着式のキーボードにはGPUを内蔵しており、ドック的な存在として機能する。

Microsoftが新たにリリースする「Surface Book」。Intel HD GraphicsのみのCore i5モデルと、NVIDIA GeForceを併せ持つCore i5モデルとCore i7モデルが存在する(メモリー構成を含めると全5種類)

公式スペックに「GeForce」という名称を確認できるが、GPUの詳しい性能は明らかにしていない。説明によれば「Adobe PhotoshopやAutoCADが利用できる」とあるが、少なくともIntel HD Graphics 520以上の性能を期待して構わないだろう。なお、キーボード部分の重量は約788gと本体の728gを超える。

発表会での説明や動画を見る限り、キーボードの打鍵感もよさそうだ。レイアウトはType Coverと同じ。キーピッチやキーストロークの数値は明らかにされていないため、ハンズオンレビューする機会を得ないと断言できないが、キー入力の快適性はSurfaceシリーズの中でも群を抜いているだろう。

ヒンジ部分も興味深い。「Dynamic Fulcrum Hinge」と名付けた独自構造のヒンジは、Panay氏のデモンストレーションを目にする限りスムーズに動作し、意図する角度で固定できそうである。

Surface Bookはキーボードを脱着できるが、本体側にロック機能が備わっている。Surface Proシリーズと同じくマグネット装着に加えて、接続を固定するスイッチが動作する仕組みだ。

キーボード左側面にはUSB 3.0ポート×2、フルサイズSDカードリーダーを備える

キーボード右側面にMini DisplayPortとSurfaceConnectと呼ばれるドック端子が並ぶ

キーボードバックライトを備えているのは歴代SurfaceのType Coverと同じだ

キースイッチユニットはパンタグラフ式。トラックパッド部分はガラス製で5点マルチタッチ式

Surface Bookの独自構造ヒンジ「Dynamic Fulcrum Hinge」

Dynamic Fulcrum Hingeの内部構造。メカニカル感にあふれている

ディスプレイ側のロック機構。Microsoftは動画で「Muscle Wire Lock」と説明している

MicrosoftがノートPCをリリースした理由

以前から、Microsoftが"さらに大きなSurface Pro"をリリースするのでは、という噂が流れていた。既存のSurface Proシリーズでは画面が小さく、作業しにくいというビジネスユーザーを対象に、13~14インチクラスのデバイスをラインナップに加えるのでは、というものである。

改めて述べるまでもなく、13~15インチクラスのノートPCは各社がしのぎを削る市場だ。初代Surface ProおよびSurface Pro Pro 2は10.6インチだが、Surface Pro 3は12.0インチに、今回のSurface Pro 4は12.3インチとさらに拡大している。これはユーザーニーズとして、大きなディスプレイを持つデバイスが求められていることの裏返しだ。

Microsoftは13インチクラスという新たな市場へ果敢にチャレンジする。ARMデバイスでは敗戦したMicrosoftだが、新たなチャレンジはどのような結果を生み出すのだろうか。GPU性能や解像度の高さを踏まえると、ビジネスユーザーやクリエイターなど一定以上のマシンパワーを欲するユーザーのニーズをしっかりと埋めることだろう。

阿久津良和(Cactus)