シリーズにおけるプレミアムラインの「Manta」(マンタ)、そしてGPSハイブリッド電波ソーラーモデルともに新製品が発表され、ますます波に乗るカシオのアナログウオッチブランド「OCEANUS」(オシアナス)。ダイヤル上でひときわ存在感を放つ深く青い輝きは「オシアナス・ブルー」と呼ばれ、シリーズのアイデンティティとなっている。その青へのこだわりについて、カシオ計算機 時計事業部 デザイン開発部の藤原陽氏にお話を伺った。

モノクロから青へ

今でこそ、店頭では「青がキレイだから」と選ばれることも多いというOCEANUS。だが、「OCEANUS=青というイメージは、実は最初からあったわけではなかった」と、藤原氏は語る。「スポーティ・エレガンス」を標榜して2004年に誕生したOCEANUSは当初、従来の高級時計の不文律に沿ってモノトーンのイメージをまとっていた。その中でOCEANUSマークと針にのみ、差し色として海の神オケアノス(OCEANUSのネーミングルーツ)からイメージした青が配されたのだ。

カシオ計算機 時計事業部 デザイン開発部 藤原陽氏

藤原氏「当時は、現在のようなキービジュアルとしてのオシアナス・ブルーという意識はなく、青への思い入れも今ほど強くはありませんでした」

その後、金属パーツを着色する蒸着技術の進歩もあり、ダイヤルの中で青の比率が少しずつ増えていく。マーケティング手法としても、「OCEANUS=青」をイメージとして押し出す戦略が確立されていった。そして「オシアナス・ブルー」は、2012年に登場したOCEANUSのプレミアムライン、Manta「OCW-S2400」で、ひとつのブレイクスルーを迎える。

藤原氏「他の時計メーカーがまだどこもやっていなかった『スパッタリング』という着色技術を採用したのです。青というのは難しい色で、なかなか思い描いた色が出ないうえに、着色結果を安定させにくい(量産時のブレ幅が大きい)。それまでもIP処理や蒸着という着色皮膜形成技術で青を表現してきたのですが、特に発色の鮮やかさという面で今ひとつ納得がいきませんでした。でも、スパッタリングでは非常に鮮やかな青を表現できたのです。

OCW-S2400は想像以上のヒット作となり、カシオとしても、また私自身も青の重要性を再認識しました。10万円台から20万円台の時計にモノトーンのモデルが多い中、青はキャッチーで目を引くんですよね。OCEANUSには、やはり印象的なブランドカラーの青が大切だということ。そして、OCEANUSに興味を持ってくれるお客様は、他とは違うものを求めているんだと感じました。それからは、プロモーションでも青を強く押し出しています」

【左】箱の中には、藤原氏が手がけた歴代のOCEANUSが並ぶ。【右】写真右から、スパッタリングを初採用したManta「OCW-S2400」、スポーティなクロノグラフイメージでヒットしたManta「OCW-S3000」、Manta史上最薄の最新「OCW-S3400」。Mantaはこのバンドも自信作とのこと