ロングレールの溶接方法、主流は4種類
鷲宮保守基地の一般公開では、保守用車の公開だけでなく、ロングレール溶接のデモンストレーションも人気を博している。この出し物についても取り上げたい。
鉄道というと、「ガタンゴトン」というジョイント音がつきものだと思われている。どうしてジョイント音が発生するのかといえば、レールとレールの継目に隙間(遊間)があるからだ。遊間を作っておかないと、夏期に熱せられたレールが延びたとき、それを吸収する余地がなくなってしまう。
ただ、レールの継目は道床を劣化させる原因になるし、振動や騒音を防ぐ観点からいっても好ましくない。そのため、目下の主流はロングレールである。業界の定義では、長さ200mを超えるものをロングレールといい、長いもので数十kmにも及ぶ。
そんな長いレールを工場で作って運び込むわけにはいかない。レールを製造している製鉄会社は日本国内に2社あるが、基本的には25mまたは50mの定尺レールで、最近になって200mの長尺レールを作るケースが出てきているくらい。だから、それらを現場で溶接してロングレールにしている。
鉄を溶接する方法はいろいろあるが、ロングレールの溶接に関してはさまざまな制約がある。現場作業だから、大がかりな機材を必要とする方法では困る。それでいて、溶接部の強度や信頼性も十分に確保できなければ困る。そういった事情を勘案した結果、目下の主流は以下の4種類とされる。
溶接方法(1) ガス圧接
2本のレールを突き合わせて圧力をかけたところをガスバーナーで加熱して、やわらかくなった鉄を接合させる。
溶接方法(2) フラッシュバット溶接
少し隙間を空けて置いた2本のレールに高圧電流を流し、レールの間にアークを飛ばして加熱する。熱でやわらかくなったところで圧力をかけ、一気に接合する。道具立てが大がかりになるため、レールセンターのような専門の地上施設で作業をする際に用いられることが多いが、最近では機材一式を積み込んだフラッシュバット溶接作業車もある。
溶接方法(3) エンクローズアーク溶接
少し隙間を空けて置いた2本のレールの間に溶接棒を溶かし込んでいって溶接する。レールの形状に合わせて周囲を囲んだ状態で作業するので、エンクローズという。
溶接方法(4) テルミット溶接
少し隙間を空けて置いた2本のレールの上に坩堝(るつぼ)を置き、そこにアルミと酸化鉄の粉末を入れる。それに点火して還元反応を起こさせると、アルミが酸素と結合し、鉄が残るので、それを坩堝の下に流してレールとレールを接合させる。レールの形状に合わせて周囲を囲むのはエンクローズアーク溶接と同じ。
筆者はこれら4種類の溶接方法すべてを生で見たことがあるが、見た目が最も派手なのはテルミット溶接だろう。ロングレールの溶接方法としては、最も手軽な部類に属する。鷲宮保守基地の一般公開で見たことがあるのは、テルミット溶接とガス圧接だ。ではまず、ガス圧接から写真でご覧いただこう。
続いてテルミット溶接である。こちらのほうが見た目は「華」がある。
列車が速く、安全に、かつ快適に走るためには、ロングレール化は不可欠といってよい。それを迅速・確実に行うために、さまざまな方法が考え出されているわけだ。
とくにロングレールの溶接作業を実地で見る機会は、「まずない」といってよいくらいだから、それを誰でも見られる保守基地の一般公開は非常に貴重なイベントといえる。今年のイベントはすでに終わってしまったが、来年の開催も期待したい。
といったところでトリビアをひとつ。レールの溶接を行ったときには、「ここで溶接しましたよ」ということが後でわかるように、マーキングを行っている。また、溶接を行った日付・溶接の方法といった情報もステンシルでマーキングしている。たとえばフラッシュバット溶接だったら、「ZFB-●●-▲▲」といった具合だ。
電車に乗る機会があったら、足もとのレールを観察してみよう。ひょっとすると、溶接部位を示すマーキングが目の前にあるかもしれない。