女優の新垣結衣が、1日ごとに記憶がリセットされる"忘却探偵"こと掟上今日子を演じる、日本テレビ系連続ドラマ『掟上今日子の備忘録』(毎週土曜21:00~21:54)が、きょう10日(第1話は~22:09)、初回放送を迎える。

『掟上今日子の備忘録』に主演する新垣結衣(左)と、原作小説イラスト Illustration / VOFAN (C)西尾維新/講談社

寝るとすべてを忘れてしまう――そんな大きな弱点を抱える名探偵・掟上今日子(新垣)のモットーは、事件のスピード解決。ヒロインの今日子による鮮やかな謎解きと、毎回犯人に間違われる、史上最も運が悪い男・隠館厄介(岡田将生)との恋物語が見どころの1つだが、演出面をふくめて、非常にチャレンジングな作品になっていることにも注目したい。

ドラマ冒頭、まず目を奪われるのが、新垣ふんする今日子のシャワーシーンだ。忘れてはいけないことを、自分の体にマジックペンでメモ書きをする癖がある今日子は、そのメモ書きをシャワーで丹念に、だがどこか悲しげに洗い流している。

厄介ならずともドキドキしてしまうそんなセクシーシーンは、番組中盤あたりにも何度か訪れる。今日子は人目もはばからず自分の体に書かれたメモを見るため、ロングスカートをまくりあげた、新垣の美脚が太ももあたりまであらわになるのだ。この新垣の体当たりの演技も話題になるに違いない。

新垣(左)と、隠館厄介役の岡田将生

では早速、第1話の事件のあらすじから見ていこう。物語の冒頭、厄介は彼が務める研究所の機密データが入ったSDカードの盗難犯人だと決め付けられてしまう。厄介は日頃、探偵をあっせんしてくれるアパルトマン兼カフェ「サンドグラス」のオーナー・絆井法郎(及川光博)に電話。派遣されてきたのは、どんな事件でも1日で解決する掟上今日子だった。

今日子と初対面の厄介は、その可憐(かれん)な姿に思わず心を奪われる。だが、今日子はそんな厄介にお構いなしに捜査を開始。今日子が調べたところ、研究所のセキュリティーは万全だった。また、犯行推定時間、所員5人は部屋を出入りしていない。「SDカードはまだ部屋のどこかにある」。そう確信した今日子は、全員の事情聴取を始める…。

多くのミステリー作品の定石どおり、本作もこの後、どんでん返しが何度も起こる。その中で、あれよあれよと事件を解決に導いていく今日子の姿はコミカルに映るかもしれないが、実はそれらすべてが、ミステリーのルールをストイックに順守した上で進行しているのだ。このルールは「ノックスの十戒」と呼ばれるもので、具体的な条件は以下のとおり。

1.犯人は物語の当初に登場していなければならない。
2.探偵方法に超自然能力を用いてはならない。
3.犯行現場に秘密の抜け穴や通路が2つ以上あってはならない。
4.未発見の毒薬、難解な科学説明を要する機械を犯行に用いてはならない。
5.既存の価値観での解決が必要とされるため、文化が著しく違う外国人を登場させてはならない。
6.探偵は、偶然や第六感によって事件を解決してはならない。
7.変装して登場人物をだます場合を除き、探偵自身が犯人であってはならない。
8.探偵は読者に提示しない手掛かりによって解決してはならない。
9."ワトソン役"は自分の判断を全て読者に知らせねばならない。
10.双子・1人2役はあらかじめ読者に知らされなければならない。

特に見てほしいのは、項目の1と8。つまり、視聴者はなにげなくドラマを見ているようで、すべての事件のヒントを、画面やセリフのどこかで、すでに知らされていることになる。録画した本作を再度見てもらえれば分かるが、「今日子は、この時からすでに、ここに着目していたのか」と、"解決編"として2度、楽しむことができるという構成だ。