宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月8日、超小型人工衛星などの軌道上実証機会を提供する「革新的衛星技術実証プログラム」を開始すると発表した。

JAXAが打ち上げ費用を負担

日本では人工衛星の打ち上げ機会が限られるため、民間企業などが人工衛星技術を開発してもそれを実証する場を得ることが難しい現状がある。これに対し、2015年1月に決定した宇宙基本計画では"H-IIA/Bロケットの相乗りやISSの利用機会を継続的に提供するとともに、小型・超小型人工衛星を活用した基幹的部品や新規要素技術の軌道上実験をタイムリーかつ安価に実施する環境整備に2015年度に着手し、イプシロンロケットを用いた軌道実証実験を2017年度に実施することを目指す"としており、今回のプロジェクトはその一環として実施される。

具体的には、民間企業や大学などから軌道実証を行いたい部品・機器・衛星システムを公募し、JAXAが打ち上げ費用を負担することで安価に軌道実証の機会を提供し、宇宙産業への新規参入を促したい考えだ。

公募するテーマと対象

構想レベルまで含めた幅広い提案を募集

選考の対象となるのは上述の通り、部品・機器・衛星システムだが、同プロジェクトを率いるJAXA研究開発部門革新的衛星技術実証グループの香河英史氏は「お話だけでもお伺いしたい」と話し、構想やコンセプトレベルの提案まで幅広く受け付け、革新的な衛星技術と、人工衛星の活用アイデアのマッチングを目指したいとしている。

JAXA研究開発部門革新的衛星技術実証グループの香河英史氏

公募形態としては、宇宙基本計画にある通り、イプシロンロケットを革新的衛星技術実証プログラム1号機として用いる2017年度の打ち上げに向けた実証テーマを募集するとともに、通年公募を実施する。2017年度のイプシロンロケットを用いた実証では、提案の中から選出した部品および機器を組み合わせて構成する100kg級の「革新実証衛星」を製作するほか、100kg以下の超小型衛星および3kg以下のキューブサットを打上げる予定。また、打ち上げ軌道は選定した提案によって最適な軌道を選択するが、現時点では太陽同期軌道が有力となっている。

革新的衛星技術実証プログラム1号機の概念図。なお、右下に記載されている"2019年度打上(目標)"は"2017年度"の誤り

衛星システムの規模が100kg以下の超小型衛星またはキューブサットとして定められているのは、開発費が大型衛星に比べて少なく済むことや、比較的短期間での開発が可能であり、近年研究が盛んに行われ新規参入が相次いでいる領域であるため。また、キューブサットでは多数個の衛星を連携させてシステムを構築する衛星コンステレーションの実証も視野に入れている。

衛星システムについては、2017年度に打ち上げ予定のイプシロンロケットの打ち上げ能力がおよそ500kgと見込まれていることから革新実証衛星の100kgを除いた400kg分の衛星が採用されることになる。革新実証衛星のバスはJAXAが提供する予定だが、香河氏はバスの提案も受け付けるとしている。

また、革新実証衛星はバラバラの提案を組み合わせて作り上げていくため、部品および機器の提案自体がどんなに優れていても採用されない場合がある。ただし、そのように優れていながら落選した提案は、H-IIA/Bへの相乗りなど、2017年度のイプシロン以外の打ち上げ機会で採用される可能性があるという。

ビジネスとしての将来性がポイントに

募集は10月9日より開始し、2017年度のイプシロン打ち上げに向けた提案の締め切りは11月9日に設定されている。かなりタイトなスケジュールであるため、2017年度の打ち上げでは、ある程度完成度の高い提案を選定する方針だ。

プロジェクトのスケジュール

通年公募に関してはどのロケットで打上げるかは決まっておらず、H-IIA/Bへの相乗りのほか、国際宇宙ステーションからの射出、2020年の打ち上げを目標としているH3を用いる可能性がある。また、同プログラムは宇宙産業の活性化に向けた取り組みであるため、両公募形態とも宇宙ビジネスとしての将来性が重要な選考基準になると考えられる。

応募できるのは日本政府または日本国内の機関、法人、団体およびそれに属する者、かつ提案テーマの開発・運用までの作業を責任をもって実施する意思がある者と定められている。ちなみに、外資系企業でも日本法人を経由した応募であれば問題なく、例外もあるので詳しくはJAXAのウェブサイトで応募要領を確認されたい。