説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりでも正しく理解していないことがあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、「9月のイベントでAppleが他社製品を皮肉っていた、ってどういうこと?」という質問に答えます。

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2015年9月のイベントでiPhone 6s/6s Plusが発表されたとき、気になる文言が「Apple A9」のスライドに使われていました。「Optimized for real-world use」という一文ですが、覚えているでしょうか? そのときプレゼンテーションを行っていたフィル・シラー上級副社長は、特にコメントしませんでしたが、この一文には意味があります。

無粋を承知で解説しましょう。これは、Xperia Z4やARROWS NXなど多くのAndroidスマートフォンに採用されているQualcomm社製SoC「Snapdragon 810」の発熱問題を意識していると考えられます。

検証は他記事に譲りますが、Snapdragon 810搭載のスマートフォンで高負荷の処理を続けると、とても熱くなるとの報告があります。8コアCPUを搭載した高い処理性能を有するSoCですから、フルパワーで稼働し続ければそれなりに熱くなるのは当然です。

システムのチューニングには、高度なノウハウと"見極め"が要求されます。SoCの演算性能をフルに発揮すると発熱量が増すため、スマートフォンというデバイスの現実に即して性能と快適性のバランスをとる、言い換えれば「性能を犠牲にしてでも発熱を抑え快適性を優先」させるという割り切りが必要な場面もあるのです。Appleは、iPhoneにおけるこの部分のチューニングの巧みさを「Optimized for real-world use」という一文に込めてアピールしたのでしょう。

この皮肉には、当然Quallcommサイドも気付いています。先日、軽口を叩けるくらいに親しい"中の人"に、この前Appleにイジられてましたねと話を振ってみたところ、すぐに意味を理解し苦笑いしていました。SnapDragonは戦略商品ですから、次世代チップを発表する際にはなんらかの「意趣返し」があるかもしれず、こちらにも注目したいところです。

スライドに使われていた「Optimized for real-world use」の意味するところは……