Twitterのデータを分析すると、世の中のトレンドが分かる ―― そう言っても過言ではないだろう。

Twitter Japan(以下、ツイッター)では季節ごとに、特定のイベントに関するツイート内容やその盛り上がりを解析する取り組みを行っている。これは、企業がTwitterを活用して効果的なプロモーションを行うための"ヒント"を提供しようと企画されたものだ。

2015年7月には「夏休み」に関するツイートのインフォグラフィックスが公開され、実際にTwitter上ではハッシュタグ「#花火」を盛り上げるキャンペーンも展開された。

今回は、これからの季節で最も盛り上がるであろう「クリスマス」に関連したツイートを分析。どんな傾向があり、それをどうプロモーションに役立てられるのか ―― 同社の名物リサーチャー 櫻井泰斗氏の解説をうかがった。

Twitter Japan 櫻井泰斗氏

Question : Twitterユーザーのクリスマスは、いつから盛り上がる?

Answer : ユーザーは、9・10月から予定を考え始めます

同調査では、2014年9月1日~12月26日までの「クリスマス」に関連するツイートを分析。「クリスマス」を含むツイートの総数は1,830万件におよび、時期を区切って見てみるとその内容が徐々に変化していることが分かる。

「クリスマス」と共にツイートされたキーワードを調べると、9・10月は「ディズニー」や「ライブ」「彼氏」など予定を考えることへのワクワク感を思わせるキーワードが並ぶ。皆さんも、「クリスマスまでに彼氏ほしい」といったツイートをどこかで目にしたことがあるのではないだろうか。

12月24~26日には236万ツイート/日を記録

11月に入ると「クリスマスツリー」「イルミネーション」といった街中の風景の変化が読み取れる。一方で、クリスマスの予定が「バイト」だったり、プレゼントやパーティーに「お金」が必要など、現実的な焦りが感じられるワードも見られる。

12月には「クリスマスパーティー」「クリスマスプレゼント」などの具体的な行動がキーワードも現れるようになる。そしてクリスマスイブから26日にかけては、「幸せ」「最高」という言葉と同時に、「仕事」「普通」といった言葉も並ぶ。

イベントがあることがわかっていれば、その盛り上がりに合わせてリアルタイムなプロモーションのプランを立てられるのがTwitterの特徴だ。櫻井氏は、「クリスマスについては過去2~3年、毎年同じような波形を見せています。去年の流れを理解することで今年の対策をたてられるのではないでしょうか」と説明する。

通勤時やお昼時、休日など状況に合わせて適切なツイートを心がけている企業アカウントも多いだろう。それぞれのタイミングで、誰を対象にどんな内容を伝えたいのか、受け取るユーザーの状況をどう想像すればいいのか、この解析結果から読み取れることは多い。

Question : Twitterユーザーは、クリスマスをどう過ごしてる?

Answer : ユーザーの過半数が一人で過ごしているようです

さらに詳しくユーザーの状況を伝えるデータを見てみよう。

クリスマスイブに「クリスマス」と共にツイートされるキーワードから、ユーザーが誰と過ごしているのかを推測できる。それぞれのツイートが投稿された時間帯のピークと並べてみると、ユーザーのクリスマスイブの過ごし方が見えてくる。

「クリスマスイブにクリスマスについてツイートしているユーザーの過半数が一人で過ごしている、という結果になりましたが、Twitter上ではつながっている。ユーザーにとってTwitterが癒しや慰めの場になっているということが想像できます。また、時間については仕事が終わって帰る時間に『一人だな』と感じたり、遅くまで友達とパーティーを楽しんだり、といったユーザーの行動の様子が分かります」(櫻井氏)

ツイートの多い時間帯から、それぞれのクリスマスイブの過ごし方が想像できる

また、「クリスマス」と共にツイートされる場所やイベントを解析することで、どこに行くか、何をしているかといった行動も読み取ることができる。

「ディズニーランドやUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)といったアミュズメントパークが、多くのツイートを生み出すことに成功している事例です。パーティーやライブなどのイベントも、ユーザーにツイートしてもらえる可能性が上がるタイミングだと言えます」(櫻井氏)

クリスマスにツイートしてもらいやすいイベントを考えるヒントにも

Question : Twitterユーザーがクリスマスに欲しいモノとは?

Answer : 欲しいけど自分では買えないもの、手に入らないもの

また、この期間に「欲しい」とツイートされたアイテムを調べると、スマートフォンやカメラなどの「エレクトロニクス」関連、バッグや財布・時計などの「ブランド品」などが挙げられている。逆に「もらった」とツイートされたものは「お菓子」「服」「アクセサリー」が多いことが分かった。

「ユーザーにとって、欲しいけど自分では買えないもの、手に入らないものをプレゼントキャンペーンに使ったら盛り上がるのではないでしょうか。逆に、ユーザーがもらう可能性が高い商品は、その感想をツイートしてもらうキャンペーンなどが向いているのでは。モノ以外を欲しいという人も多く、例えば『センス』が身に付くようなプレゼントも話題になるかもしれません」(櫻井氏)

プレゼントに関連するツイートでは、興味関心を持つものが明確になる

TIPS : ハッシュタグをうまく活用しよう!

なお、Twitterではイベントに関連して盛り上がるハッシュタグがある。昨年は「#クリスマスボックス」キャンペーンが実施され、ハッシュタグの総ツイート数が140万を超えた。このほか、クリスマスには「欲しいプレゼントの商品名」や、いわゆる「大喜利ハッシュタグ」も必ずトレンドに入ってくるそうだ。

「企業が何かしらのキャンペーンを行う場合、自社商品に関心を持つ人だけでなく、みんなが優しい気持ちになったり、面白いと思ってくれる企画だと良いのではと思います。それが結果として、自社や自社商品について語ってもらえるチャンスにつながるのではないでしょうか」(櫻井氏)

トレンドに挙がったハッシュタグを活用するのも手段

Twitterはユーザーにとってパーソナルな領域だ。情報源という側面はあっても、マスメディアなどとは接し方が異なってくる。そのため企業のプロモーションにおいても、マス向けとは異なるアプローチで活用する事例が多く見られる。

「プレゼントキャンペーンなら、『中の人はこれが欲しいです』とユーザーとしての側面を出しつつ『弊社からはこれをプレゼントします』といったように、中の人もユーザー目線になることがテクニックのひとつです」(櫻井氏)

この際、多くの企業は、ある程度の反応を得るためにフォロワーの数を増やしておきたいと考えるかもしれない。ツイッターの提供する広告商品「プロモアカウント」や「プロモトレンド」などを活用することもできるが、「ユーザーさんや他の企業アカウントとたくさん会話をすること」も効果的だという。

Question : クリスマスキャンペーン、企画の中身はどう考える?

Answer : 会議室で考えるより、タイムラインで考えよう!

「中の人もユーザー目線になる」という考え方は、プロモツイートやターゲティングを運用する場合も同様だ。例えば、「イルミネーション」に関連したツイートをしているユーザーに他のイルミネーションイベントや夜景を撮れるカメラアプリを紹介するツイートを届ければ、年齢・性別はバラバラでもイルミネーションに興味があるユーザーの目に触れる可能性は高まる。櫻井氏は、「メッセージを届けたいユーザーたちの気持ちを理解することが重要だ」と語る。

「プロモーションに限らず、自分たちなら一番盛り上がるタイミングはどこか、どこでどんなユーザーにどんな内容で盛り上がって欲しいのかと考えながらプランニングすることで、より大きな反応が期待できるのではないかと思います」(櫻井氏)

人々の趣味趣向や生活スタイルが多様化する中、クリスマスへの思いも過ごし方もまた、人それぞれ。しかし、クリスマスというイベント自体はTwitter上で双方向に共有されている。その動向が分かっていれば、ユーザーに寄り添ったプロモーションを計画することが可能だ。

「会議室で考えていても、アイディアが生まれないこともあります。また、キャンペーンを行う際には、世の中で何が起きているのかを把握し、そのタイミングで動くことが必要になります。もちろん、実際に見に行くこともできますが、Twitterのタイムライン上でも"今渋谷で何が起きているか"が分かります。それが、マーケティングにおけるTwitterの良さ、Twitterでしかできない面白さだと思います」(櫻井氏)