説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりでも正しく理解していないことがあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、「どうしてSiriは機械っぽくないのでしょう?」という質問に答えます。

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iOSの音声アシスタント機能「Siri」は、iPhone側で人間が発する音声をデータ化し、それをクラウドに送信し言葉として認識します。iPhone側の処理はいわば"素材づくり"で、音声を言葉として解釈する"料理"は基本的にクラウド上で行います。その具体的な内容は秘密のベールに覆われていますが、膨大な声のサンプルが認識精度を高める柱だと考えられます。

Siriの賢さを支えるもうひとつの柱は「経験」です。認識精度を高めるのは、日々増えるユーザから集めた声のサンプルだけでなく、そのサンプルをもとにどの言葉/命令を割り出したか、という結果の部分もあります。おいしい料理は素材も重要ですが、練習を繰り返し調理の腕をあげることも必要なのです。

その調理の腕には、経験に裏付けられた応用力とでもいうべき要素も含まれます。膨大なデータと豊富な経験は、機械的というよりは人間的な曖昧さをSiriにもたらしています。命令として認識される言葉もまた然り、"だいたいこう言いたいのだろう"という部分を汲んでくれるのです。

実例を挙げてみましょう。iOS 9では、緊急性/優先度の低い機能を無効化してシステムへの負荷を下げバッテリーを長もちさせる「低電力モード」が用意されており、Siriに命令して切り替えることが可能ですが、「省電力モード」などと言い間違えても低電力モードとして処理してくれます。いかにもコンピュータらしい厳密な判定とは、明らかに異なります。

命令のなかでもっとも重要なキーワードがこのような扱いですから、言い回しや語尾の違いは推して知るべし、さらにファジーです。恋愛に関する質問など、言葉遊びのような機能の存在が知られるSiriですが、人間的な質問に対するおもしろ回答より、適当な言い回しで話が通じてしまう"練度"あるいは"応用力"こそが、Siriに機械的な部分をあまり感じない最大の理由なのではないでしょうか。

似た言葉や適当な言い回しで通じてしまうところが、Siriに機械っぽさをあまり感じない理由なのかもしれません