収入保障保険というと「収入を保障してくれるって失業保険みたいなもの?」と誤解を受けることがありますが、そうではありません。収入保障保険について、聞いたことはあるけれど、詳しくは知らないという人も多いでしょう。収入保障保険が実際にどんな保険で、どのように活用したらいいのか、一緒に考えてみましょう。

収入保障保険とは?

収入保障保険は万一のときに保険金が受け取れる死亡保障の保険の一種です。

死亡保険金は保険をかけられている人が亡くなったときに一度にまとめて支払われますが、この保険は万一のときにはそれ以後、分割で保険金を少しずつ受け取れます。いざというときでも収入が保障されるような形の保険ということです。

保険金をまとめてもらってもどうしていいかわからず、あっという間になくなってしまったということがなく、必要な期間を決めて継続的に受け取ることにより、生活保障としての意味合いが強い保険といえます。

収入保障保険は死亡保険金を年金形式でもらえる

家計を支える人が万一亡くなったときに困るのは、残された家族のその後の生活です。一度に何千万円もの保険金を受け取った場合、そのお金を自分でコントロールしながら毎月取り崩していくのは思ったよりも大変なことです。

また、計画なしに使ってしまって、気がついたら子供の教育資金が足りなくなっていたなどということになったら、せっかくの保険が生かしきれません。

そのような心配をせずに万一のことがあったあとも残された家族が安心して暮らせるための保険が所得保障保険です。

加入するときには、いつまで月々いくらの給付金が必要なのか考えます。保険期間は保険会社によってさまざまですが、55歳~70歳の間で5年刻みで設定できるというところが多いようです。

たとえば60歳満期、年金月額20万円で加入した場合、不幸にして42歳で亡くなったときには、以後18年にわたって毎月20万円を遺族が受け取れることになります。同じ条件で加入し、55歳で亡くなった場合には、年金が受け取れるのは5年間となります。

このように、満期までの残り期間に応じて受け取る保険金の総額が減っていくことに加え、保険金を少しずつ長期にわたって受け取るため、通常の定期保険よりも安い保険料で保障を得ることができます。

子どもが独立するまで限定の保障を収入保障でカバーする

高額な保障が必要な時期は、子どもにお金のかかる一定期間なので、その時期に必要な保障を収入保障保険で準備するというのがもっとも有効な方法です。子どもの成長に伴って必要な保障額は減っていきますが、一般の死亡保障の保険ではこまめに見直さないと無駄な保障が生じてしまいます。その点、収入保障保険なら、必要な時期まで月額で保障されるので無駄なく安心が得られます。

たとえば一番下の子どもが大学を卒業するまでは生活費をしっかり確保したいということなら、末子が22歳になる時期に合わせて保険期間を設定するといいでしょう。仮に末子の大学卒業時の夫の年齢が58歳なら、60歳満期で契約すればOK。妻が自分の年金を受け取るまで保障が必要なのであれば、その時期に合わせて満期の設定をすればいいわけです。

必要な年金月額の計算も、今の生活費を基準に団信生命保険でカバーできる住宅ローンの返済額や遺族年金から受給できる額などを差し引いた上で不足する額を基準に考えればいいので、必要保障額がわかりやすいのもこの保険の特徴です。

ひとつ注意したいのは、死亡時の保障をすべて収入保障保険で準備すると、葬儀費用などいざというときすぐに必要となるさまざまな出費に対応できないということ。また、教育費などまとまった額が必要な分を年金月額にどのように含めていくかも考慮しなければなりません。

さらに、保険期間が満了すると死亡保障自体がまったくなくなってしまうことになるので、ある程度の保障は通常の死亡保障保険で準備しておいたほうが安心です。

収入保障保険が向く人、向かない人

収入保障保険は何度も説明しているように、死後に残された家族が少しずつ保険金を受け取るものです。通常の死亡保険金は亡くなった人の相続財産として相続税の対象となります。生命保険金は相続税の非課税分があるため、よほど高額な保険に加入していない限り税金の心配はありません。しかし、収入保障保険は相続税が課せられない代わりに、受け取るときに所得税の対象となります。

具体的には払い込んだ保険料と受け取る保険金との差額相当額が雑所得としてその年のほかの所得と合算されて課税されます。

ですから、妻が働いているなどで収入がある場合には、その所得と合算されて課税されるので、所得税や住民税が高くなってしまう可能性もあります。また、国民健康保険に加入している場合には、所得に応じて保険料が決まるので、それらの負担も高くなってしまう可能性もあります。

ですから、すべての死亡保障を収入保障保険で準備するとかえって税金が高くなってしまうケースもあるので、妻の収入や子どもの人数など考慮したうえで、通常の死亡保険との金額のバランスを決めるといいでしょう。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 堀内玲子

証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て1993年に独立。1996年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。