9月20日にWOWOWでスタートする連続ドラマW『しんがり~山一證券 最後の聖戦~』。江口洋介主演の本作は、1997年に起きた山一證券の自主廃業を追った人間ドラマだ。廃業の要因となった簿外債務が、どのように生まれて隠されてきたのか。その真相究明と清算業務を続け、最後まで会社にとどまった"しんがり"社員たちの懸命な闘いを描いている。

連続ドラマW『しんがり~山一證券 最後の聖戦~』

原作となったのは、2014年度講談社ノンフィクション賞を受賞した清武英利氏の『しんがり 山一證券 最後の12人』。1997年当時、読売新聞社で社会部次長として、山一證券の破たんを取材していた清武氏は、元社員に対して追加取材を実施。そこで、このたび清武氏に、取材エピソードやドラマ化についての話を聞いた。

清武英利(きよたけ ひでとし)
1950年10月12日生まれ。宮崎県出身。立命館大学経済学部卒業後、1975年に読売新聞社に入社。中部本社社会部長、東京本社運動部長などを経て、2004年より読売巨人軍球団代表兼編成本部長を務めた。2011年に解任後は、ジャーナリストとして活動中。著書に、2014年度講談社ノンフィクション賞受賞の『しんがり 山一證券 最後の12人』、『切り捨てSONY リストラ部屋は何を奪ったか』などがある。

――ドラマ化の話を聞いた時、どう思いましたか?

ありがたいことですけど、『ドラマに向いていないんじゃないか?』と思いました。実話ですし、証券界のトリックを暴く過程や専門用語が難しいですからね。でも、脚本を読んで『上手く作るもんだ!』と驚きました。俳優さんが演じることで、さらに息を吹き込んでくれると期待しています。特報映像だけで、思わずジンときてしまいましたね

――撮影現場を見学されたそうですね。

『半沢直樹』のようなスーパーマンと違って、普通の会社員を描いたノンフィクションでもドラマになるんだと感じました。土壇場に陥った時に見えてくる心の中の固い芯を、上手く表現していると思います。『江口さんみたいな格好良い人は証券界にいたかな?』とは思いましたけど(笑)。"しんがり"の志の高さを表現する江口さんは、素晴らしかったです

――18年前に起こった事件ですが、ノンフィクション本を執筆したきっかけを教えてください。

一介のジャーナリストに戻った時に、『そう言えばあの時、貧乏くじを引いた人たちは今どうしているのか? 書き洩らしていることがあるんじゃないか?』と思ったんですよ。あんな生き方が出来る人は少ないし、志操高く生きる人の人生を追い掛けてみたかった。彼らに取材をして感じたことは、『為すべきことをキチンとやっていれば人生に悔いはない』ということでした

――取材中に印象に残ったことはありますか?

大きな事件において、事実というのは掘ったら必ずそこに待っているものだと実感しました。社長の号泣会見の真相、破綻の遠因になった三菱重工CB事件の闇など、ハッとする新事実がいくつもありました

――"しんがり"の方々を追った理由は何でしょうか?

魅力的な人たちだったというのもありますが、社会で脚光を浴びない人を取材したいと思っていて。“折れない人”が自分の中のテーマであり、社会の流れとは全く違うところにいる人を取材することが、これからの自分の仕事だと思っています

――清武さん自身も"折れない人"なんでしょうか?

自分もそういう風に生きていきたいという気持ちがあったので、読売(新聞社)と争いになりましたけどね。『簡単には引き下がらないぞ!』という人が、マスコミ以外にもたくさんいればいいのですが。そんなマスコミも権力者に迎合する風潮にあり、批判的な人が少ないのは事実なんです

――ジャーナリストとして、今思うことはありますか?

流されないようにするためには、優しくて強いことが大事ですが、そんな人は滅多にいない。自分の中に芯を持っている人が、もっといて欲しい。権力者に迎合するのは楽な生き方ですが、反権力というジャーナリズムの原点を忘れないでほしい

――最後に、このドラマを通して伝えたいことをお聞かせください。

最近、『負け組になりたくない』という若者がすごく多いですが、志あらば負けはなし。"しんがり"メンバーが、人生の敗者ではないことが1つの教訓だと思います。人生を勝ち負けで考えるのは愚かなことだし、貧乏くじを引くことを恐れないで欲しい。勇気と決意を持っていれば、人生で後悔することは少ないはず。1回きりの人生なので、棺桶に足を突っ込んだ時に、『しまったな。こうすればよかった』と後悔することがないようにしてもらいたい

WOWOWの連続ドラマW『しんがり~山一證券 最後の聖戦~』

9月20日スタートの本作は、清武英利のノンフィクションを実写化した人間ドラマ。1997年11月、突然の自主廃業を発表した山一證券において、その要因となった約2,600億円の簿外債務の真相究明と顧客への清算業務を続けた“しんがり”の社員たちを描く。キャストは江口洋介、萩原聖人、林遣都、真飛聖/勝村政信、佐藤B作、矢島健一/岸部一徳ほか。監督は『沈まぬ太陽』の若松節朗、脚本は『相棒』シリーズの戸田山雅司が手掛ける。ドラマは、毎週日曜22時から、全6回で放送予定(第1話は無料放送)。