真夏に大手企業の選考活動がスタートした2016年卒の就職活動。2年目となる来年の採用はどのようにかわるのか。マイナビ編集長 吉本隆男氏に見通しを聞いた。

採用活動における新しい動き

2017年卒採用の見通しは?(画像はイメージ)

――今年は動画を使った選考も話題になりました

学生は、スマホをフル活用しているため、動画を使用したSNSツールなどに対する敷居が近年とても下がっています。動画を活用することはインフラ的に問題ないでしょうし、自社を動画で紹介している企業もあります。もし、動画で学生を確認することができれば、論理的思考力までは測れませんが、表情などが直接会う前に確認できるので、今後、採用で導入する企業が増えてくるかも知れません。

――真夏に選考活動が実施されましたが、クールビズを推奨していた企業はどれくらいありましたか?

数多くの企業が「推奨」していますが、「推奨」レベルではなく、「クールビズを絶対条件」にしないと普及は難しいと思います。

学生の立場で考えると、「クールビズで選考にお越しください」と言われたらそれで行きますが、「クールビズも可」と言われたらスーツにネクタイでいきますよね。直前までノーネクタイでも、面接の場ではネクタイをつけるはずです。「どちらでもいい」と言われたら、不安要素は1つでも減らして安全な方向にするのが心情です。

2017年卒採用の動きはどうなる?

――来年の動きはどのようになりそうですか?

基本的には今年と同じスケジュールだろうと考えられます。ただ、大手企業の中には面接の予定があっても他社から早々に内々定が出たことにより、面接の予定をキャンセルされるケースが見られました。そのため、8月前半のスケジュールを見直す企業が増えるかもしれません。

――中小企業はどうでしょうか?

採用対象とする学生が本当に自社に合っていたのか、という検証をする企業が増えると考えられます。今年は中小企業の選考が先におこなわれたため、優秀な学生を確保できたと思っても、大手企業の選考が始まった途端そちらに行かれてしまうことが多々ありました。ものすごく優秀だから自社に入社して欲しいというのは当然ですが、そのような学生は大手企業も欲しい人材である可能性が高いからです。

そのため、内々定を出したあとも企業理解を深めるためのフォローは非常に重要です。なぜその学生に内々定を出したのかという理由をきちんとフィードバックしていくことが必要かと思います。また、一人ひとりの学生の動きを注視していくことも重要な鍵になりそうです。

――8月1日の選考解禁日より前に選考を始めた企業の方が、やはり採用面では有利なのでしょうか?

経団連に加盟していない企業もありますし、早めに選考を開始したからといって有利かといえば、8月に大手企業の選考が始まった段階で内定辞退されることもありますので、判断は難しいところです

経団連に加盟する企業は、他社と足並みをそろえようとする意識もありますので、解禁日は守るべき、というのが一般的です。今年を振り返ると、採用広報開始前にインターンシップを通して企業理解を深めようと努力する企業が多く、また、採用広報開始後も、少しでも自社を深く知ってもらおうと説明会に工夫を凝らしたり、面談や懇親会を実施して、できるだけ学生ときめ細かく接点を持とうとする動きが活発に見られました。

終わりに

逆転現象が起こり、内々定辞退など目立った2016年卒の採用活動。吉本氏が「2017年卒採用では採用対象と選考スケジュールの見直しが必要」と推測するように、来年はどんな学生をどのタイミングで採用し、どのように学生をフォローして辞退防止するかが鍵になりそうだ。