飛行機に乗るとき、一番長い時間お世話になるのが客室乗務員(キャビン・アテンダント)。狭き門を通った人だけがなれるこの華やかなポジションの先には、どんなキャリアが待っているのか。日本航空の客室乗務員・菅野伊佐美さんに聞いてみた。

日本航空 客室乗務員 菅野伊佐美さん

役員秘書から客室乗務員へ

菅野さんは大学の文学部英米文学科を卒業後、大学の教授室助手として1年3ヶ月間務めた。その後、企業で役員秘書として働いた後、2001年に既卒採用で日本航空に入社。2013年4月から機内販売の商品企画や、機内販売誌『JAL SHOP』の制作に携わっている。

――航空会社に入ろうと思ったきっかけは?

映画『フォレスト・ガンプ/一期一会』を見てから「一期一会」という言葉に惹かれていたのですが、大学卒業後、別の航空会社で働いていた友人に「一期一会は、客室乗務員の仕事の醍醐味だよ」という話を聞いて、私もそんな仕事をしてみたい! と思うようになりました。ちょうどその頃、日本航空でほぼ3年ぶりに既卒採用があったので、チャレンジしてみることにしたんです。

――予備校には行きましたか?

大学時代に、就職活動対策として一般常識などをセミナーには参加したことがありますが、とくに客室乗務員向けのスクールなどには行きませんでした。

――では、就職して初めて乗務員の仕事を学んでいったんですね

乗務員どころか、接客業も初めての経験でした。秘書は、ある意味で裏方のような仕事ですが、乗務員は最前線でお客様と向き合う仕事ですから、想像もしなかった部分がたくさんありました。

――例えば、どんなところが想像と違いましたか?

最初に感じたのは、思いのほか体力が必要ということでした。乗務員は1日1万歩も歩くんです。国際線で初めて乗務したときは、「ニューヨークまで歩いていくの!?」と思いましたから(笑)。食事をサービスするカートも重くて、まるで筋トレのようでした。

でも、仕事に慣れてきたら、限られた時間と空間の中で仕事をパーフェクトにこなすというのがすごく新鮮で、楽しくなってきました。秘書だった頃は、今日の仕事が終わらなくても、翌日早めに出勤すればフォローできましたが、私たち乗務員は1回のフライトですべてを完結させなければなりません。それが怖いところでもあり、醍醐味でもあり。まさに一期一会の仕事だと実感できました。