海外旅行先では地元ならではのグルメを味わいたいもの。しかし、食品の"生産量"がわずか1%という香港ではそんなのちょっと難しいのでは――なんて思っていたら、今、香港の若者たちを沸かせているのはクラフトビールだそう。そこで今回、クラフトビールがいただける注目の2店に行ってみた。

クラフトビール人気は世界的。個人によって味の好みが全く違うのが面白い

香港きってのオシャレ地区の人気店

このところ、日本だけでなく世界中でクラフトビールが人気だ。クラフトビールとは、「クラフト=手工芸品」という言葉からも分かる通り、バーの片隅にあるようなマイクロブリュワリー(小さな醸造所)で丹精込めて作られたビールで、いわゆる「地ビール」のことである。「のどごし重視! イェ~イ♪」みたいに飲むというより、じっくり味わいながらいただくのがツウな感じ。日本と同じように夏場かなり暑くなる香港でも、このクラフトビール人気が押し寄せているという。

というわけで訪れたのは、香港きってのオシャレエリア「SOHO」。香港の地下鉄「MTR」の中環(セントラル)駅から徒歩7~8分でアクセスできるエリアで、ここはもともと香港在住の欧米人が多く訪れることもあってか、かねてよりナイトライフが充実していることでも知られる。このSOHOエリアでバーをオープンするとなると激戦を強いられるわけだが、クラフトビールの専門店「Roundhouse(ラウンドハウス)」は2013年のオープン以来、平日でも店の外にまで客があふれるほどの人気を誇っている。

「Roundhouse(ラウンドハウス)」の料理はテクス・メクス。おつまみからがっつりステーキまである。左から、「Deep fried Jalapeno poppers」(60香港ドル=約930円)と「Brisket Chessy Fries」(68香港ドル=約1,050円)

自分好みのビールも造れる

世界のクラフトビールを扱っており、常時25種類を68香港ドル(約1,050円)からそろえているという充実ぶり。メニューにはオーストラリアやスコットランド、アメリカとさまざまな国のビールが名を連ねる。……が、メニューを見てみると24種類しかないじゃない? と思いきや、25種類目のビールはなんと店内で自分で造る"マイ・ビール"「TAP25 U-Brew」(45香港ドル=約700円)なのだ。

自分でビールを造るU-Brewのマシーンは片隅の樽に。発酵から醸造までを小さなタンクで行う。クラフトビールの奥深さにハマりそう

クラフトビールといえばいろいろな材料で作ることができるわけで、自分好みのオリジナルテイストのものが作れるというのはかなりの魅力。発酵などの手順をふまなくてはならないため作ってすぐに飲めるわけではないものの、長期滞在や出張でしばらくしたらまた香港を再訪する、なんていうチャンスがある人にはぜひともトライしていただきたい。

とは言え、自分のビールが造れなくともここのメニューだけで魅力は十分。中でも気になるのが香港のクラフトビールだ。なにしろ自給率1%という香港において、"Made in Hong Kong"のものを探すのはなかなか大変。それが、訪れた日には3種類もの香港ビールがあり、どれを飲もうかなかなか迷って決められない。

すると「味見する? 」と小さいグラスにちょこっと入れてくれるという。いろいろ試したうえで決められるのがありがたく、なるほど人気があるのも納得だ。もちろんこの味見は無料だが、180香港ドル(約2,790円)で6種類のビールを飲み比べすることができる「Beer Platter」もあるのでこちらもオススメだ。

Roundhouseでは無料で味見もさせてくれる。味見用にしてはけっこう量が入っていてうれしい

COEDOビールの海外初店舗が香港に!

そしてもう1軒、香港のグルメ雑誌などで注目されているのが、日本のクラフトビール代表、埼玉・川越のCOEDOビールを提供するレストラン「Taproom(タップルーム)」だ。高級感あるレストランやショップが集まる、これまたオシャレな銅鑼湾(コーズウェイベイ)地区にあり、8月19日にグランドオープンしたばかり。MTRの銅鑼湾駅からだと、徒歩5分となる。

レセプションブースがあるところもなんだか高級感のCOEDO「Taproom(タップルーム)」

料理は日本料理、それも「川越太麺やきそば」(82香港ドル=約1,271円)など地元・埼玉の郷土料理も提供している。ビール自体は3年前から香港で売られているが、満を持しての登場だ。ちなみに、COEDOビールのタップルームとしては海外に進出した第一号店でもある。

ちょっと太めのつるんとした麺が特徴の「川越太麺やきそば」」(82香港ドル=約1,270円)。香港で「川越」という言葉が流行りそうな予感

香港オリジナルも登場

COEDOビールのケグに冷蔵庫から直接温度管理されたチューブをつなげて新鮮な状態でサーブ。きっちり訓練を受け最高においしいビールを注ぐサーティファイド・ビア・サーバーもおり、ツウをも満足させることはうけあい。また、苦みがばしっと利いたドラフト専用のIPA(India Pale Ale、インディア・ペール・エール)スタイルビール「毬花-Marihana-」(XSサイズ24香港ドル~=約370円~)がいただける。

注ぎ方にまでこだわりがあるのも、クラフトビールだからこそ

さらに、9月下旬には香港オリジナル(川越で醸造)のビールも登場するという。フレーバーについては現在はまだ内緒だが、「季節のフルーツを使用するかも」とのことなので、どんな味なのかを想像しながら待つとしよう。

COEDOのビールはそれぞれに主張がある。取りあえず全部試してみたいという場合は「COEDO Beer Platter」(120香港ドル=約1,860円)を注文しよう。タップルームではXSからLサイズまでのグラスサイズ展開をしているが、そのXSサイズで紅赤、瑠璃、伽羅、漆黒、白の5種類のビールをいただくことができる。スタッフに聞けば料理とのペアリングも教えてくれるので、最強の組み合わせでビールを堪能していただきたい。

「COEDO Beer Platter」(120香港ドル=約1,860円)は絶対試したいところ。実際はビンでなくタンクからサーブされる

まだまだ広がりを見せそうな香港クラフトビール事情。香港の人たちがどんな雰囲気の中でビールを楽しんでいるのかにも注目しつつ、香港のオシャレな夜を楽しんでいただければと思う。

※1香港ドル=15.5円で換算。記事中の価格・情報は2015年8月取材時のもの