8月31日から4日間の日程で開催されている「VMworld2015」。2日目の基調講演には同社でCEOを務めるPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏が登壇し、VMwareの目指す今後の方向性とともに、IT業界の展望について語った。

米VMwareでCEOを務めるPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏。VMworld基調講演の登壇は、今年で4回目だ

冒頭、Gelsinger氏は、近年30年間におけるITの進化について、具体的な数字を交えながら紹介した。「1995年にインターネットに接続していた人は、世界人口の0.5%以下だった。しかし、2019年の第3四半期には、世界人口の半数がインターネットに接続する時代になると言われている。"コネクティビティ"は、人類全体のものとなる時代が到来する」(同氏)

ユーザー1人当たりが所有するデバイス数も急増している。1995年には0.1台(10人に1人しか持っていない)だったものが、2020年には5.9台になると予想されている。iOS上のAppStoreで販売されるアプリ全体の年間売上金額は、米国の映画産業の年間売上総額を上回った。さらに、インターネット関連の市場規模は8兆ドルとなり、世界のGDP成長の21%を占めるまでになっている。Gelsinger氏は、「もはや、ITが社会的、文化的なインパクトを牽引しているといっても過言ではない。今後その影響力がさらに大きくなる」との見解を示した。

新技術が引き起こす"業界下克上"

こうした状況下、Gelsinger氏は「ITリーダーが自社のビジネスを成長させるうえで、必ず考えなければいけないポイントは5つある」と指摘する。それは、「.ビジネスの非対称性」「クラウドのプロの時代」「セキュリティ」「プロアクティブな技術の導入」「リスクを取らないことへのリスク」であるという。

「ビジネスの非対称性」とは、既存の企業とスタートアップ企業の関係を指す。現状のルールの下では、スタートアップが既存企業に勝つことは難しい。したがって、スタートアップが勝利をつかむにはルールを変える必要がある。そのためにはどうすればよいのか。Gelsinger氏は以下のような考えを示した。

「失うものがないスタートアップ企業は、新技術を積極的に取り入れればよい。その新技術とは『モバイルクラウド』だ。モバイルデバイスを使い、クラウド上にある無限のリソースにアクセスできる環境は、従来のビジネスを一変させる可能がある」

例えば、自動車業界は、「モバイル」「クラウド」そして「ビッグデータ」によって、その構造が大きく変化している。自動運転やIoT(Internet of Things)など、新技術を持つスタートアップ企業やIT企業も続々と参入し、自動車に新たな付加価値を提供することで、そのプレゼンスを高めている。Googleの自動運転車などは、その好例だろう。

Gelsinger氏は、「こうした変化は、自動車業界に関連する企業にも影響を及ぼす。そこで勝ち残っていくには、『スタートアップがイノベーションをしながら、エンタープライズのように(安定したサービスを)提供していくこと』だ」と語った。

「クラウドのプロの時代」についてGelsinger氏は、「クラウドが実験(様子見)の時代ではなくなった」と指摘する。クラウドの活用が浸透し、企業は業務内容に合わせて、プライベートとパブリックを選択するようになった。

Gelsinger氏は「企業にとってハイブリットクラウドは、この10年間で最も戦略的な要素だ」と指摘した