以前から日本マイクロソフトは、マイクロソフトジャパンパートナーコンファレンスといったプライベートイベントを実施してきた。そして今年は前述のコンファレンスに加え、The Microsoft Conference、Microsoft Dynamics Forumの3つを1つにまとめて、「Foresee, Empower, Spark & Transform」の頭文字を取った「FEST2015」を開催した。初日の基調講演(キーノート)で語られた「パートナーと共に推進する"変革"」の概要を紹介しよう。

平野社長、ワークスタイル変革やWindows 10、クラウドについて語る

最初に登壇したのは日本マイクロソフト 代表執行役社長の平野拓也氏。この1年を振り返りつつ「2014年度はWindows XPサポート終了や消費税の増税による駆け込み需要があったものの、2015年6月末で終わった2015年度は特需はなかった」と述べつつ、3つのトピックを振り返った(編注:日本マイクロソフトの会計年度は6月末で終わる)。

日本マイクロソフトの平野拓也氏

1つめは「クラウドビジネスの加速」。日本マイクロソフトは国内東西にデータセンターを開設し、Microsoft Azureを提供し始めたのが2014年2月、Office 365は同年12月、Dynamics CRM Onlineは2015年3月と、3つのサービスを立て続けにローンチしてきた。重要データを海外のサーバーに置くのは問題があるとして、クラウドビジネスを遠巻きに見てきたユーザーからも、「安心や安全、信頼感がある」と評価されたと平野氏は述べる。

さらにワークスタイル変革を推進する立場を改めて表明した。日本マイクロソフトはこの数年間ワークスタイル変革を推し進め、2015年8月にも「テレワーク週間2015」を設けて"場所に縛られない働き方"を実践したばかり。平野氏は「(本社がある)品川オフィス開設から4年経つが、その間の来訪者は60万人以上。実体験に伴うショーケースとしてクラウドのビジネス活用を訴求した」と説明した。

昨今のセキュリティ動向を踏まえつつ、2015年2月に開設したサイバークライムセンター日本サテライトもアピール。Microsoftは米国・国防総省についで、2番めに攻撃を受けている組織だと説明し、それゆえ攻撃に対する対策方法を蓄積できたという。さらにマルウェアの発生状況なども把握し、サイバー攻撃に対する能動的な対策を進めていると平野氏は説明した。

日本マイクロソフトが振り返る2015年度のトピック

FEST2015は3日間の開催を予定しており、初日は「Partner Day」、2日めは「Business Day」、最終日は「Technical Day」とサブタイトルを設けている。キーノートのタイトルからも分かるように、パートナー企業を対象としているため、ここまで述べてきたアピールポイントは主にパートナー企業から評判のよかった点を取り上げたのだろう。

さて、2つめのトピックは「Windowsデバイスへの高い関心」だ。エンタープライズ向けのタブレットはまだ盛り上がっているが、コンシューマー向け需要は一段落し、タブレットの長短が浸透してきたと説明した。一方でタブレットの物足りなさや、かゆいところに手が届かないという見方から、Surfaceシリーズのような2-in-1 PCのニーズをユーザーから強く感じるという。「OEMメーカーからも魅力的な2-in-1 PCが多数登場している」と前置きしながら、Surface Pro 3は前モデルと比べて、初日の引き合いがコンシューマーからは25倍(エンタープライズからは7倍)と増加したそうだ。

3つめのトピックは「お客様からの声」。Microsoft CEOがSatya Nadella氏に変わってから、ビジネススタイルが大きく変化したと平野氏は語る。「これまではWindows、Windows、Windowsと閉鎖的な部分が多かった。(だが、Nadella氏就任後は)排他的ではなくなった、親しみやすいといった評価を頂くようになった」という。

ちょうど2015年はMicrosoftは設立40周年を数える年だが、平野氏は「(人にたとえれば)いい中年どころになってきた」と冗談を交えながら、 創立者の一人であるであるBill Gates氏が掲げた「すべての机と家庭にPCを」の時代から大きく変化したことを強調した。

今やPCはもちろん、スマートフォンやタブレットなど、人は1日に数台のデバイスに触れるのが当たり前になりつつある。そのため平野氏は「(WindowsやMicrosoft製品を)『便利だから使う』『仕方なく使う』から、喜んで使ってもらえるクラウドとデバイスを提供する」という、日本マイクロソフト独自のビジョンを改めて説明した。

Microsoftが考えるこれからの未来(上段)と、日本マイクロソフトが掲げたビジョン(下段)