モバイル向けイメージセンサ増産で今年度2100億円規模投資

世界規模の半導体装置材料業界団体Semiconductor Equipment and Materials International(SEMI)の日本法人SEMI Japanが8月20日に会員企業向けイベント「SEMI Members Day 東京」を開催した(図1)。

図1 SEMIメンバーズデ―講演会場風景 (写真はSEMI提供)

図2 ソニーのイメージセンサ戦略を語る大場重生氏(写真はSEMI提供)

そのなかで、ソニー デバイスソリューション事業本部イメージングシステム事業部事業戦略部統括部長の大場重生氏が「イメージングの深化とセンシングの進化で新たな感動・価値を撮る ~IoT/IoEの世界におけるイメージセンサーの可能性~」と題して同社の将来を見据えたイメージセンサの事業戦略を語った(図2)。

同氏は1988年にソニーに入社後、メモリ、システムLSI事業部門を経て、現在は、イメージセンサの将来の可能性を探り、10~20年先を見据えた長期戦略立案し、新たな市場開拓するチームを統括している。

ソニーは今年 イメージセンサ事業に2100億円の設備投資をすることを公表しており、半導体製造装置・材料メーカーにとって、国内では数少ないビジネスチャンスであるため、参加者は熱心に大場氏の講演に耳を傾けていた。

著者注:「イメージセンサ事業部」は最近「イメージングシステム事業部」と改名し、イメージセンサという部品提供にとどまることなく、システムソリューションの提供に力点を移しているようだ。

目標は「フィルムを越える」から「人の目を越える」へ

ソニーは1970年からイメージセンサを開発してきて、1981年には今のデジタル・スチルカメラの原型とも言える電子カメラ「Mavica」を発表した。CCDイメージセンサの開発に着手した際の目標は「写真フィルムを超える」だった。時代は、CCDからCMOSへと移り、CMOSイメージセンサの開発目標は「人の目を超える」に定めて長期的視野で開発を進めている。

現在、イメージセンサは、スマートフォン、タブレットなどのモバイル、デジタル・スチルカメラ、デジタル・ビデオカメラ。一眼レフ、医療用、防犯・監視用、放送・シネマ用、車載用と様々なエレクトロニクス製品に使われている(図3)。

図3 イメージセンサおよびイメージング・モジュール(中央)とそれを利用したエレクトロニクス商品や用途 (出典:ソニー、以下すべて)

イメージセンサの市場規模は、デジタル・ビデオカメラ向けが四半世紀以上前から1000万個規模(年間出荷台数)、今世紀に入り急拡大したデジタル・スチルカメラ向けがその10倍の1億個規模、そして携帯電話からスマートフォンへと変貌したモバイルフォン向けがデジタル・スチルカメラの10倍の10億個規模である(図4)。衰退気味のデジタル・ビデオカメラやスチルカメラ市場に対して、モバイル向け市場はさらに20億個へと規模拡大中で、まだまだ伸びる。その次の主役については後述する。

図4 イメージセンサ市場の変遷。デジタル・カメラからデジタル・スチルカメラ、そしてモバイルフォンへ。次の主役は? 縦軸(出荷量)は対数目盛である点に注意

ソニーにおけるイメージセンサの売り上げは、2014年は前年比5割増し、2015年は3割増しと勢いが止まらない(図5)。モバイル向けビジネスの比率は高まるばかりで、現在売り上げの8割を超えている。今後少なくとも数年はスマートフォン向けの拡大に注力し、新たな価値提案をしてスマートフォン向けカメラの世界を変えていく。Audio-Visual向け需要は減る方向だが、これを監視用で補って非モバイル向けビジネスの売り上げは現状維持する。新規領域としては、医療向けや車載向けの仕込みを着実に行う。

図5 ソニーのイメージセンサ事業状況・売り上げ推移

ソニーのイメージセンサ生産能力は、2010年末に月産2万5000枚(300mmウェハ換算)だったが、現在は6万8000枚と3倍近く増産しており、2016年9月には8万7000枚へと増やす計画だ(図6)。今までも熊本テック、長崎テック、山形テック(旧NEC山形、旧ルネサス山形セミコンダクター鶴岡工場をソニーが買収)に継続的に設備投資をしてきたが、今後もいままで以上に効率的な投資を行い、ROIを改善させる。

著者注:ソニーの吉田憲一郎・最高財務責任者(CFO)は2014年4月30日の決算記者会見で、「2016年3月期、イメージセンサ分野に2100億円を投資する」と述べている

図6 ソニーにおけるイ―ジセンサ・ウェハ生産能力推移(左)とイメージセンサ増産用設備投資の推移(右)

(後編はコチラ)