「別にファンではないけど……」と思いながら、ゴールシーンにもらい泣きした人も多いのではないか。8月22~23日にかけて放送された『24時間テレビ38 愛は地球を救う』でチャリティーマラソンランナーとして100kmを走り抜いたDAIGO。番組の瞬間最高視聴率(34.6%)が日本武道館へのゴール直後だったこともあって、「DAIGOは数字を持っていた!」なんて声が上がっている。

さらに今年は、「チャリティ番組なのに高額ギャラ」「本当に走っているのか?」など毎年物議を醸してきたネガティブな話題がほとんど聞かれなかった。いつにない穏やかなムードは、「これもDAIGOの持つ人柄のおかげなのかも」と思ってしまうのだ。

しかし、いったいなぜ彼は愛されるのか。今後の活動展望なども含めて考えていきたい。

嵐にも通じる売れっ子の3要素

歌手でタレントのDAIGO

24時間マラソンを見ていて気づいたのは、DAIGOのファン層が予想以上に広いこと。沿道に集まった人々は、子どもから高齢者まで全ての年齢層がそろい、例年以上に声援の数が多かった。

確かにDAIGOは、『火曜サプライズ』や『ボンビーガール』などのバラエティ番組だけでなく、『白熱ライブ ビビット』や『ひるおび!』などの情報番組にも出演していて全世代への認知度が高い。また、2012年には映画『ウルトラマンサーガ』で主演のウルトラマン役も演じた子どもたちのヒーローでもある。

ファン層の広さは、声援のフレーズからもうかがえた。老若男女を問わずほとんどの人が「DAIGO、頑張れ!」と呼び捨てにしていたのだ。DAIGOはそんな声にできるだけ手を振って応え、ボロボロの姿でたどり着いた武道館の階段では、四方に頭を下げる誠実さを見せていた。

嵐の国民的人気からも分かるように、現在の芸能界で最も求められているのは、"親しみやすさ""誠実さ""清潔感"。DAIGOはこの3つを高いレベルで併せ持つ、稀有な存在と言っていい気がする。

そもそも人の悪口を言わないし、庶民的なコメントが多いから、スタッフは安心して起用できるし、視聴者も嫌な感情を抱かないですむ。例えば24時間マラソンの中では、休憩中に吉野家の店先でおいしそうに牛丼を食べるシーンが印象的だった。

「ゴールに北川景子はいない」のユーモア

今回の24時間マラソンには、「DAIGOがトレードマークのロック手袋をいつ外すか?」という小さな見どころがあったのだが、こだわりがあると思いきや、あっさり外してしまった。理由を聞かれたDAIGOは、「GK(限界)。"蒸れまくりマクリスティ"でしたから」と笑わせる。

さらに、徳光和夫から「キミはゴールしたら抱きしめてくれる人(恋人の北川景子)がいそうだから(うらやましい)」と急振りされて、「ゴールにはいないんですけどね」と笑顔で返すサービス精神とユーモアは、優れたタレントのそれだった。

それでいて「ゴール間近でこらえきれずに号泣してしまう」ピュアさを見せるのだから、もはや「好き」「嫌い」というより、「嫌いになれない」としか言えないのではないか。育ちの良さがそうさせるのか、これほど嫌みも嫌らしさも感じないタレントは珍しい。

DAIGOと同じ「すごく好きとは言えないけど、嫌いになれない」タイプのタレントには、中山秀征、小堺一機、恵俊彰、設楽統など、MCとして活躍する人が多い。いずれも「好感度は高く、期待値は低く(もちろんいい意味で)」というイメージの持ち主と言える。

「ただの坊ちゃん」ではない過去

先月、『女性自身』の取材で「次にブレイクしそうなMCは?」と聞かれ、バカリズム、博多大吉、石井亮次アナ(CBC)とともに、DAIGOの名前を挙げさせてもらった。「バラエティ番組のMCが芸人ばかりになる中、芸能界屈指の好感度を持つDAIGOが風穴を開けてくれるのではないか」と密かに期待しているのだ。

DAIGOは、すでに朝昼晩全ての時間帯に出演している上に、24時間マラソンでさらに認知度アップ。『くりぃむクイズ ミラクル9』などのクイズ番組では地頭の良さも見せているだけに、スキルのほうは問題ないだろう。さらに、今回の24時間マラソンで、眉間にシワを寄せ、メイクが取れて口ヒゲが目立つなどのやつれた表情も見せたことによって、引き出しが1つ増えたのではないか。

また、「ミュージシャンとして辛酸をなめてきた」つらい過去は、有吉弘行やマツコ・デラックスと相通ずるものがあり、決して世間と価値観のズレた「ただの坊ちゃん」ではない。あとは、若者言葉の出し入れさえうまくできれば、どんな番組のMCもこなせるだろう。

もともと育ちの良さから上品さが漂い、立ち居振る舞いはスマート。加えて、北川景子との交際という話題性もあり、もし結婚して家庭を持つことになれば、ますますファミリー層からの好感度は上がり、盤石になるはずだ。

モノマネや自虐ネタもハイレベル

現在DAIGOが売りにしているのは、「わざわざ略すほどではない略語=DAI語」だが、L'Arc~en~CielのhydeやB'zの稲葉浩志など歌モノマネのレパートリーは多く、「featuring おじいちゃん」や「宇宙から舞い降りたロック王子、DAIGO☆STARDUST」などの自虐トークをいつでも繰り出せるのも強み。つまり、バラエティタレントとしてかなり多彩であり、世間の支持率は間違いなく、おじいちゃんを超えているだろう。

もちろんDAIGOが全力を注ぐバンド・BREAKERZの活動にも、何らかの変化があるかもしれない。24時間マラソンを終えた今、次にどんな曲を書くのか。DAIGOは作詞・作曲・演出をこなすだけに、すでに構想が浮かんでいるのかもしれない。

DAIGOは『24時間テレビ』のPRで多くの番組に出まくっていたのだが、どれだけ顔を見ても不思議に飽きなかった。これも売れっ子タレントの条件なのだが、DAIGOがどんなに欲張って、仕事の幅を広げたとしても世間は受け入れるのではないか……と感じる。

小雨が降り、気温が下がるなど、24時間マラソン当日の天気すら味方につけてしまったDAIGO。「デビュー曲を憧れの氷室京介に手がけてもらう」「24時間マラソンの日が北川景子の誕生日」など、節目で"持っている男"ぶりを見せているだけに、今後どんな道を切り開いていくのか注目していきたい。

■木村隆志
コラムニスト、テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴する重度のウォッチャー。雑誌やウェブにコラムを提供するほか、取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。著書は『トップ・インタビュアーの聴き技84』など。