今年の夏のボーナスは、企業業績の回復を受けて、リーマン・ショック前の水準に戻ったと言われました。SNSなどを見ていると、海外旅行や国内旅行、だいぶみなさん景気がいい夏休みを送ったように思います。実際のところ、家計や消費の実態はどうだったのでしょうか?

夏のボーナスは前年比2.81%UPだったが…

日本経済団体連合会が発表した今年の夏のボーナス(※)は、平均89万2138円で、前年比2.81%と好調な結果がでました。製造業では91万8542円(対前年2.29%)、非製造業では79万1498円(対前年4.05%)と、業種によって妥結額にばらつきがありますが、総じて、前年比UPとなっています。

※東証一部上場、従業員500名以上、主要20業種大手245社が調査対象のうち169社の妥結額平均。2015年7月30日発表

一方、8月17日に内閣府が発表した4~6月期の国内総生産(GDP)の速報値は前期比0.4%のマイナスとなり年率換算では1.6%の減少。まだ、ボーナスが支給される前とはいえ、相次ぐ食品の値上げなどで個人消費が0.8%減となったことが影響を受けた格好です。

政府は、6月の天候不順や増税による軽自動車の販売台数の減少などが要因であり、これは一時的な落ち込みとの見方を示し、7~9月期はプラスになると予測していますが、企業収益が家計に反映されない限り、個人消費が伸び悩むのでは、という予測もあります。

夏のボーナスは景気のいい話が飛び交いましたが、賃金自体は、前期比0.2%の減少(全雇用者への賃金総額を示す雇用者報酬の4~6月期)となっており、なかなか節約志向からは脱することはできない状況です。

さらに、これより少し前に発表された総務省の家計調査では、4~6月の貯蓄率は21.7%と前期から0.6%の上昇を示しており、消費よりも貯蓄志向の高まりが強くなっています。

では、実際のところ、この夏、みなさんの家計は潤ったのでしょうか。

2人以上世帯の消費支出は約26万8600円

7月に総務省が発表した6月の家計調査をみてみると、2人世帯以上の消費支出は26万8652円で、前年同期比で2.0%の減少でした。5月はいったん増加したものの、6月には再び財布のひもを締めた家庭が多かったのです。2人世帯のうち勤労者世帯に限ってみると、収入自体は3期連続の上昇であったにも関わらず、消費は抑える傾向にあったといえます。

と、ここまで紹介した金額を見ても、ピンと来ない人は多いでしょう。消費支出が26万円を超えるなんて、自分の収入より多いよ、と感じる人も少なくないはずです。同じ総務省の家計調査の1~3月期の平均値で、こんなデータがあります。

2人世帯以上の勤労者世帯の可処分所得(税金や社会保険料などを除いた、実際に使える収入)は37万6814円。消費支出を除いた黒字額は5万5470円です。このうち預貯金に回された金額は2万6000円で、平均貯蓄率は6.9%です。

平均的なデータですが、毎月、貯蓄に回せる金額は5万5000円が限界ということです。1年頑張っても66万円。ボーナスが思いのほか多く出たなら、消費ではなく貯蓄しようと考えるのは無理もないでしょう。逆に、ボーナスからもしっかり貯蓄をしなければ、将来の不安を消すことは難しいといえるでしょう。

実際の預貯金額は4400円! 節約に頼りすぎない資産防衛を

実は先に紹介した黒字額5万5470円。このうち金融資産に回された金額は2万6000円ですが、純粋な預貯金額は、なんと4400円という衝撃的なデータなのです。実際は2万円以上も保険に回されています。株や投資信託といった有価証券の購入額は、わずか774円。

もちろん平均のデータなので、ゼロの人もいれば、多額の資金を預貯金や有価証券の購入に充てている人もいるでしょう。保険の詳細はわかりませんが、貯蓄性のある保険や子どもの教育資金のための学資保険の保険料ということでしょう。ただ、傾向として、家計収支が黒字になったからといって、その多くを純粋な預貯金に回しているでもなく、投資商品を購入しているわけでもないのです。いかに日本人が保険好きかを示しているかということです。

日々の生活で1万円を節約するのは、大変なことで、それを毎月継続していくと節約疲れを起こします。しかし、保険を見直してムダな保険を省く、投資でお金に働いてもらう、という視点を持てば、無理な節約に頼った資産防衛から脱することができるでしょう。

夏休みに使いすぎたと反省するのもいいですが、このあと、どのような家計運営をしていくのか、その計画を立てるのに、絶好のチャンスではないでしょうか。消費を我慢するだけではない、メリハリのある家計を心がけてほしいものです。

(※写真画像は本文とは関係ありません)

<著者プロフィール>

伊藤加奈子

マネーエディター&ライター。法政大学卒。1987年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。不動産・住宅系雑誌の編集を経て、マネー誌『あるじゃん』副編集長、『あるじゃんMOOK』編集長を歴任。2003年独立後、ライフスタイル誌の創刊、マネー誌の編集アドバイザーとして活動。2013年沖縄移住を機にWEBメディアを中心にマネー記事の執筆活動をメインに行う。2級FP技能士。