ユーザー主導の多様なアプリ開発に期待

オムロンは9月11日から、ネットワークカメラ「家族目線」(HVC-C2W)を発売する。税込価格は29,800円。同時に赤ちゃんとペットの見守り用アプリ(スマートフォン/タブレット用)を提供。さらにAPIを公開することで、ユーザー視点に立った多種多様なアプリコミュニティの成長を目指す。

8月25日の発表会では、オムロンのアプリケーションオリエンティド事業部 事業推進部長 細川速美氏が事業戦略上の位置づけを述べた。

もともとオムロンはB2Bの会社ではあるが、IoT時代における各種センサーデバイスで最もデータ量が多いものとして、画像(センサー)があると切り出す。とはいっても、画像センサーのデータを一般の人が取り扱うのは難しい。これを誰でも使えるデバイスにするのが、センサーメーカーとしての使命であると、家族目線の開発経緯を紹介した。

オムロン アプリケーションオリエンティド事業部 事業推進部長の細川速美氏

オムロンの主たるビジネスはB2Bだが、今回はコンシューマーを含む市場に向けた製品を提供

B2Bにおいても画像センサーに対する要求項目は多く、これらすべてに対応するのは難しい。そこでAPIを公開することによって、多くのアプリケーション開発者に開発をゆだねるオープンイノベーションの手法を取り入れることにした。

APIとは「Application Programming Interface」の略で、製品の仕様を外部に公開することで、その製品を活用する幅を広げるものだ。例えば、GoogleカレンダーはAPIを公開しており、様々なアプリやWebサイトから、Googleカレンダー(および機能)を利用できるようになっている。

「誰でもいつでもどこでも使えるイメージセンサーを提供」という使命に応え、さらに広範な要求に多数の開発者が応えるオープンイノベーションを活用

オムロンの持つ画像処理技術「OKAO Vision」を組み込んだヒューマンビジョンコンポの提供と、APIの公開によって開発者の負担を減らし、アイディアのアプリ化を可能とする

オムロンには、20年近く積み上げてきた顔情報センシング技術「OKAO Vision」があり、5億ライセンス以上の出荷実績を持つ。そこから11種類の機能を、今回の家族目線に組み込んだ。これによって、多種多様なアプリケーション開発が可能になるという。

メーカーがすべてを提供するのではなく、ユーザーのアイディアと開発者の力で使い道を広げるというコンセプトだ

すでにパイロットモデルを半年前に作成し、ハッカソンやアイディアソンに30回提供してきた。開発者向けのコミュニティ「Sensing Egg Project」もスタートさせ、WebやFacebookで情報発信することで開発者が集まれる場を提供している。結果、80件近いプロトアプリが創出されたことで、事業としての手ごたえを感じたという。

今回の家族目線はコンシューマー向けに出荷する一方、企業向けとしても客層分析や人数カウントとしての利用も期待できるとした。

すでにハッカソンやアイディアソンへの機材提供や、コミュニティをスタート。プロトタイプアプリも80件近く作らているという。写真にあるのはBluetooth LEモデル(HVC-C1B)

IoT時代に向けたデバイスとして商品展開を行う予定

まずはオムロンによる見守りアプリとともに提供。ちなみに静止画記録だけであり、動画記録はコンセプト上ないとのことだ

赤ちゃんやペットを見守るデモンストレーション

オムロン アプリケーションオリエンティド事業部 事業推進部 HS企画課長の寺川氏

細川氏に続いて、新製品「HVC-C2W」の概要を、オムロン アプリケーションオリエンティド事業部 事業推進部 HS企画課長の寺川氏が紹介した。

HVC-C2Wは、Wi-Fiでインターネット接続できるところに設置し、クラウドを通じてアクセスするネットワークカメラ。複数のスマートフォンやタブレット、パソコンから接続可能だ。

カメラそのものは1,280×720ドットの解像度を持ち、OKAO Visionのセンシング機能(11種類)に加えて、動体検出と音声検出機能を加えた計13種類のセンシング手法が使える。これらセンシング手法を用いて、ユーザーにプッシュ配信で状況を知らせたり、静止画記録を行う。

家族目線「HVC-C2W」は、Amazon.co.jpから発売され、楽天市場でも取り扱いを予定している。アプリは別途ダウンロード

HVC-C2Wは、無線LANでインターネット接続可能な環境が必要。通知設定はオムロンのクラウドを経由する

製品のデモでは、11日から配信を予定している「家族目線 赤ちゃん」アプリを使用し(Android版。iOS版は9月下旬公開予定)、赤ちゃんが笑顔になった際に通知・撮影を行う動作を披露。また、赤ちゃんが本格的に泣く前の"グズり"を検知して通知することで、洗濯ものや料理で目を離したときにも対処できることをアピールした。カメラには赤外線投影機能もあるので、夜間の見守りも行えるという。

同時に「家族目線 ペット」アプリも配信を予定している。部屋にいるペットの動体検知によって、ペットの「お気に入りの場所」を知ったり、逆に危険地帯に入ったりしたことを通知できる。さらに、正面を向いた自動撮影にも対応するそうだ(アプリはAndroid版が先行して公開され、iOS版は9月下旬を予定)。

もうひとつ、子どもの帰宅や祖父母の無事を確認する「家族目線 おるすばん(仮称)」も提供予定(Android版9月下旬、iOS版10月)だ。

提供が決まっているアプリは現在3本。「赤ちゃん見守り」は顔の表情や音で笑顔や泣顔を判定し、撮影・通知を行う

赤外線を照射することで、24時間の見守りが可能。画素数の少なさを別カメラで補完するアプリが欲しいところ

「ペット見守り」では、いわゆるヒートマップ作成によって「ペットお気に入りの場所」を知ることができる。逆に危険地帯への侵入時にアラートを出すことも可能

正面の画像を自動撮影する機能も。今のところは正面だけで、画像のような「やや斜め」はできず、ペット認証も現在、犬と猫に限定されているという

遅れて「おるすばん」アプリも提供予定。子どもの帰宅を通知したり、不審な動きを通知する

商品スペック。静止画はmicroSDカードに記録されるが、これをアプリがダウンロードすることも可能だという

ライブデモ画面。このように、ベビーベッドの上に設置することで、24時間の赤ちゃん見守りに対応。なぜかデモ中、終始ご機嫌

設定画面(これは動き見守りの例)。通知・写真撮影のオン/オフも可能だ

笑顔時の通知画面

泣き声検知の通知画面

検知ヒストリも一覧で表示可能

製品イメージ。もう一つの家族としてしっかり見てくれるという

HVC-C2Wを付属のスタンドで立てた例。下の唇っぽく見えるのは赤外線の照射部

【左】壁面設置も可能。【右】斜め下から見上げた状態。わずかにUSBロゴが見える。電源としてmicroUSB端子を使用しているので、1A出力に対応するモバイルバッテリーで動作させることも可能だそうだ