日立アプライアンスは8月24日、業界最大(※)洗濯容量11kgを実現したドラム式洗濯乾燥機「ヒートリサイクル 風アイロン ビッグドラム BD-V9800」(以下、BD-V9800)を発表した。会場では開発の背景や新製品の技術説明とともに、さまざまなデモンストレーションも行われた。

※日立アプライアンス調べ。

今回発表された「ヒートリサイクル 風アイロン ビッグドラム BD-V9800」。洗濯・脱水容量は、業界最大となる11kg

外形サイズはそのままで洗濯容量をアップ

今後もユーザーの声を反映させた製品開発を行っていくとコメントする松田氏

発表会の初めには、日立アプライアンス 取締役 家電・環境機器事業部長の松田美智也氏が登壇し、現在の洗濯乾燥機の動向やニーズについて語った。松田氏は「2013年の駆け込み需要の反動で、2014年は洗濯機の需要台数が大幅に落ち込んだ。しかし、2015年の需要は前年度比約106%の約440万台まで回復。今後も好調に推移すると予想している。日立ではユーザーの声をピックアップし、今後もニーズに合わせた製品を開発していきたい」とコメントした。

日立アプライアンスの調査によると、洗濯物について「できるだけまとめて洗うようにしている」人が多く、ふだん洗っているものとしては、カーテンや毛布といった大物が上位5位までに挙げられた。そこで、サイズは従来のまま、まとめ洗いや大物洗いがしやすい大容量化を目指したという。

さらに、すすぎについて、回答者の65%が「洗剤の溶け残り」「肌トラブル」などの不満や不安を抱えているとわかった。そこで、大容量化に加えて「しっかりすすげる」ことにもこだわったとする。

【左】まとめ洗いや大型ファブリックの洗濯などのニーズがあることがわかった。【右】調査の結果、「すすぎ」に対する不安や不満の声も多くみられたという

ドラム底板の中心から放射状に延びている突起は、従来3本だったが、これを6本に増やすことで強度を保ちつつ薄型化。ドラムの直径も4mmアップした。これにより、外形寸法が同じ2014年モデル「BD-V9700」よりも、ドラム容積が「82L→84L」と2L増えたという

【左】カットモデル。ドラム底板の突起が6本になっているのが確認できる。【右】国内のドラム式洗濯乾燥機としては業界最大となる11kgの洗濯容量(2015年9月19日において)。シングル毛布ならば、2枚同時に洗濯できる

すすぎ残しの不安を解消

洗濯機の不満点として挙げられた、すすぎ残しを解消するため、BD-V9800は「ナイアガラすすぎ」コースを搭載した。ナイアガラすすぎの特徴は、たっぷりの水で衣類をすすぐ「大流量Wシャワー」と、高速遠心力で洗剤をとばすという2点だ。

大流量Wシャワーは、「水道水シャワー」と、毎分最大約80Lの循環水「ナイアガラ循環シャワー」を組み合わせたもので、たっぷりの水によって繊維の奥の洗剤まで落とす。さらに、槽内の排水穴を増やして排水効率を高めたドラム槽を、毎分約1,200回転させて遠心力を発生させる。この遠心力によって、水分といっしょに衣類に残った洗剤も飛ばす。

発表会では、従来製品BD-V9700の「標準コース」と、BD-V9800の「ナイアガラすすぎ」で使用された水の比較も行われた。蛍光剤入りの洗剤で衣類を洗濯し、すすぎ後に絞った水をコップに入れて比較する。どちらのコップも一見すると無色透明に見えたが、ブラックライトを当てたところ、ナイアガラすすぎのコップには反応がなかったのに対し、標準コースのコップは水に残留していた蛍光剤が淡く光るのが確認できた。

【左】水道水シャワーと、最大80L/分の循環水を勢いよく注ぐ「大流量Wシャワー」。会場のデモ機では勢いよく水が流れる様子が見られた。【右】標準コースのすすぎ工程。ナイアガラすすぎでは、大流量の水と遠心力を用いて、1と2の工程を4回繰り返してしっかりすすぐ

すすぎ残しを検証する実験。すすぎ前の水、標準コースですすいだ水、ナイアガラすすぎ後の水、通常の水を比較。肉眼では「すすぎ前の水」以外は透明に見えたが、ブラックライトを当てると「標準コース」の水にも洗剤が残っているのがわかる

黄ばんだ衣類も元通り!?

ビッグドラムシリーズは、従来から大流量を特徴とした「ナイアガラ洗浄」を採用している。これは、毎分約80Lという大流量の水を衣類に通して汚れを落とすという洗浄方法。この方法で洗濯すると、繰り返し洗濯してもタオルがごわつかず、衣類の黒ずみも低減できるという。

新製品では、さらに「温水ナイアガラ洗浄」コースを搭載。これは、衣類を温めながら、高濃度の洗剤を温風で衣類に吹き付けるというもの。洗剤の酵素が活性化しやすいといわれる40℃~50℃に衣類を保ち、汚れが落ちやすくなる。

会場には、ナイアガラ洗浄で洗濯した白い枕カバーやシャツなどを展示。皮脂汚れなどで黄色く変色した袖口が、ナイアガラ洗浄によって白くなっているのが確認できた。また、日常的に温水ミストを使用することで、黄ばみの予防にもなるという。

【左】従来からある「ナイアガラ洗浄」で洗濯したタオル。ナイアガラ洗浄を搭載していない機種で洗濯したタオルに比べると、やわらかく、かさ高もある。【右】新機能の温水ナイアガラ洗浄では、温めた高濃度洗浄液を直接衣類に吹き付ける。吹き付けた洗浄液は循環させて再利用

皮脂汚れなどで生じる「黄ばみ」は比較的落ちにくいといわれるが、温水ナイアガラ洗浄を使用するとキレイに落ちていた

風アイロンの力がさらに強力に

日立アプライアンスのドラム式洗濯乾燥機といえば、乾燥機使用後でもシワが少なく仕上がる「風アイロン」機能も特徴だ。風アイロンは大容量のドラム内で衣類を大きく舞い上げ、時速約300kmの風を当てることで、衣類のシワを伸ばしながら乾燥させるという仕組み。風量とともに湿度もコントロールすることで、シャツの袖やズボンなどシワが取れにくい細長い衣類についても、きれいにシワを伸ばせるという(湿度コントロールは乾燥容量3.5kgまで)。約60℃以下の低温で乾燥させるため、衣類を傷めにくいのも特徴だ。

BD-V9800は先述のとおり、ドラム容積が2L増えた分、乾燥時に衣類が舞い上がるスペースも増加。また、洗浄槽内で衣類を持ち上げて移動させる「リフター」の形状を変更することで、槽内の衣類がまんべんなく前後にかき混ぜられるようになった。このため、衣類の乾燥ムラや風当たりムラも抑えられ、「風アイロン」機能の効率もアップした。

ドラム容量のアップや、リフター形状の改良などにより、風アイロン使用後の衣類にはシワが付きにくくなった

大量の白い衣類のなかに、1枚だけ青色の服を入れて乾燥させたところ。従来モデルの乾燥機では常に前面に青い服が見えていたが、BD-V9800では青い服が手前から奥に移動し、さらに前に……と、移動し続けていた

風アイロン使用時と未使用時では、かなりシワの付き方に差があるのがわかる。また、BD-V9800は98分で乾燥させる「おいそぎコース」が用意されているが、おいそぎコースでもシワは少ない(標準コースは165分)

【左】従来モデルに引き続いて「自動おそうじ」機能も搭載。洗濯後に16カ所のシャワー出口から勢いよく水を吹きかけて、ドラムに洗剤カスなどの汚れが付着するのを防ぐ。【右】新しく「おいそぎコース」と「香りコース」も追加。香りコースは、高濃度の柔軟剤をミスト状にして衣類に吹き付け、香りが残りやすいように洗うコース。会場では香りコースで洗ったタオルを嗅いで比較できた

幅60cmのスリムタイプも

今回の発表会では、BD-V9800のほか、幅が狭い場所向けの幅60cm「ビッグドラム スリム」も発表された。スリムタイプは操作部に液晶タッチパネルを採用した「BD-ST9800」と大型ホワイト液晶を採用した「BD-S8800」の2種類を用意。さらに、洗濯・脱水容量が10kgの「BD-V5800」も同時に発表された。

左から「BD-V5800」ピュアホワイト、「BD-V9800」シャンパンとシルバー、「BD-ST9800」シャンパンとシルバー、「BD-S8800」ライトグレーとライトベージュ