2015年6月8日付で、VAIO株式会社の代表取締役社長に就任した大田義実氏。設立1年での社長交代、しかも、これまでにIT業界での経験がない大田氏の社長就任は、様々な憶測を呼ぶ。社長交代の狙いはなにか。そして、新たな経営体制で、VAIO株式会社はどう変わるのか。VAIO・大田義実社長を直撃した。

2015年6月8日に発表された人事で、新たに代表取締役および執行役員社長に就任した大田義実氏。2015年5月21日に発表されたモンスタータブレットPC「VAIO Z Canvas」を手にする

――VAIO株式会社がスタートしてからわずか1年。なぜ、いま、社長交代なのでしょうか。

1年目はソニーから離れ、まずは会社を作るために軟着陸することが最優先でした。そのためにはソニーの文化を継承した方がいいということで、ソニー出身の関取高行氏が社長を務めた背景があると思います。会社の「姿」や「形」を作ったのが1年目です。

しかし、2年目以降は、しっかりと自立しなくてはなりませんし、会社を成長、存続させなくてはいけない。会社の中身を作っていくという作業が、2年目にやらなくてはならないことです。

VAIOは、技術は革新的だが、企業としては保守的なところがある。会社の中身を作るには、企業の体質も革新的にしていかなくてはなりません。そこで、私が外から入って、企業体質を変える役割を担うことになったというわけです。

――大田社長に、VAIOの社長就任に関する打診があったのはいつですか。

今年(2015年)4月に入ってからです。その段階で、前の会社(編注:ミヤコ化学)の社長を辞任することが決定していましたので、前向きに検討できました。

――1年目の成果が見え始めたところで、社長のバトンを渡すという具体的な話になった形ですね。となると、社長交代は、1年目の業績が計画通りにいかなかったことが理由ではないのですか。

創業1年目の業績次第で、社長が交代することはあまりない話です。VAIOもそれは同じです。今年5月末締めの1年目の業績は、営業赤字ではありますが、最終黒字にはなっています。もちろん、そこには、Windows XPのサポート終了や消費増税前の駆け込み需要などの要素があったことも否めません。しかし、2年目以降は、自力で黒字化していかなくてはならない。だからこそ、中身を伴った企業体質へと転換していく必要があります。