2016年卒業予定の学生の採用活動は、経団連の新卒採用スケジュールの見直しにより、選考活動を2015年8月開始にするようガイドラインが発表されている。とは言え、水面下では8月以前に選考をスタートしている企業は多く、アイデムの調査では、6月時点で既に採用が終了している企業は約2割に上るという結果が示されている。

また、ディスコの調査では、8月1日時点での2016年卒業予定の学生の内定率は67.3%で、内定社数は平均2.1社となっている。このうち、まだ継続して就職活動を行う学生は50.2%という結果となっている。就職活動を終えたい時期については、「8月後半」という回答が33.8%となっており、この8月の就職活動によって、就職活動生はいよいよ、どこの企業に就職するのかを決めていくことになる。

そうした中、PR会社のベクトルは8月17日に就職活動生向けの会社説明会を実施した。会社説明会というと、どこかの施設のホールや会社の会議室などで、人事担当者などが自社の仕事内容について説明するようなシチュエーションをイメージするが、ベクトルが説明会の場に選んだのは映画館「シネ・リーブル池袋」である。

同社では映画を使ったPR手法として海外で注目されている"ストーリープレイスメント"を取り入れ、自社を舞台にした"リクルーティング映画"を製作。映画館での会社説明会開催に加えて、自社にまつわる映画を上映するという試みとなった。

"ストーリープレイスメント"とは?

PR手法の一つとして、まず"プロダクトプレイスメント"が挙げられる。映画やテレビドラマの中で、商品などを表示させる手法である。これに対して"ストーリープレイスメント"は、ストーリーそのものが商品やサービスと連動することで、映画を観た人がより深いレベルで企業・商品・サービスについて理解を深められるといった効果のある手法である。

「プラダを着た悪魔」や「ソーシャルネットワーク」なども実際にある企業を舞台にストーリー展開する"ストーリープレイスメント"の手法を用いた映画となっている

同社では、なかなか言葉では説明しにくいPR会社の仕事を、映画を通して就職活動生に発信していくという。

8月22日から公開される「東京PRウーマン」。主演は「CanCam」の専属モデルである山本美月さん。山本さん演じる三崎玲奈が、PR会社ベクトルに転職し、仕事に奮闘する姿が描かれている。PR会社の仕事や醍醐味などが、ストーリーを通して伝えられている

同社では、自社のプロモーションだけでなく、BS-TBSと共同で映画製作事業を展開している。「東京PRウーマン」の次は、資産運用をテーマに、アパート経営のサービスやノウハウを伝える「アパリーマン」の製作も決定しているという。

同社によると、映画製作から公開までの期間は約10カ月で、最初の半年間で脚本やキャスティングを決め、撮影自体は数週間~1カ月程度、約4カ月間は上映までの宣伝期間となるという。

少子高齢化が進み、サービス産業化する日本において、"ストーリープレイスメント"の手法は、企業の新しいプロモーションのあり方となってくるのかもしれない。