【レポート】

ISC 2015 - HPLを補うベンチマーク「HPCG」(後編)

HPCGのランキング結果

HPCGは2014年6月のISC 2014からランキングが発表されているが、この時のエントリは15システムであった。それが2014年11月のSC14では25システム、今年7月のISC 2015では40システムと順調に伸びており、ベンチマークとして業界に受け入れられつつある。

HPCGのランキング結果を発表するJack Dongarra教授

今回のISC 2015でのTop10は次の図のようになっており、TOP500で1位の天河二号がHPCGでも1位となった。そして、2位は京コンピュータ、3位はOak RidgeのTitanである。

HPCG 1位の表彰を受ける国防科技大のYutong Lu教授(中央)。左はHPCG主催者のJack Dongarra教授と右はMichael Heroux氏

HPCG 2位の表彰を受ける理研AICSの辛木氏

今回のHPCGのTop10は次の図のようになっており、TOP500(HPL)で1位の天河二号がHPCGでも1位となった。そして、TOP500 4位の京コンピュータが2位で、TOP500 2位のTitanはHPCGでは3位という結果になった。異なるベンチマークであるので、TOP500の順位とは一致しないが、TOP500で上位のシステムはHPCGでも、かなり高い順位になっている。ただし、HPLは主に浮動小数点演算の性能を測定しているのに対して、HPCGはメモリバンド幅が大きく効くので、HPLの順位とHPCGの順位が高い相関を持つのは、大部分のシステムのメモリバンド幅/演算性能(Byte/Flops)が似通った値になっていることが原因ではないかと思われる。

しかし、HPCG/HPLや% of Peakの欄を見ると、アクセラレータを主体とする天河二号やTitanはピーク比では1.1%~1/2%であるのに対して、CPUで演算する京コンピュータは4.1%と高い効率を示している。

2015年6月のHPCGのTop10

次の図に示す11位から20位では、核融合科学研究所のプラズマシミュレータ、東工大のTSUBAME2.5、海洋研の地球シミュレータ、東大のOakleaf-FXと日本の4システムがランクされている。注目されるのはNECのベクトル機である地球シミュレータで、ピーク比で11%、HPCG/HPLで12%と圧倒的な効率を示している。NECのSX-ACEはばらばらのメモリをアクセスするScatter/Gather機能を持ち、高バンド幅のメモリを持っていることが効いていると考えられる。まあ、SX-ACEはメモリ系が強力な割りには浮動小数点演算能力が低いのでこのような結果になっているとも言える。

2015年6月のHPCGの11位から20位。核融合科学研究所のプラズマシミュレータ、東工大のTSUBAME2.5、海洋研の地球シミュレータ、東大のOakleaf-FXと日本の4システムがランクされている

次の図はTOP500の100位までのなかでデータのあるシステムについて、そのPeak演算性能、HPLのFlops値とHPCGのFlops値をプロットした図で、一番上の四角がピーク性能、2番目の三角がHPL性能、ずっと下にある×がHPCG性能である。

このような図にすると、ピーク性能とHPL性能は非常に近いが、HPCG性能はHPL性能の1/100程度で、大きな乖離があることが分かる。

Top500の上位100システムの内のデータのあるシステムについて、ピーク性能、HPL性能、HPCG性能をプロットした図

このように、HPLでは浮動小数点演算のピークに近い性能が得られているが、HPCGではピーク演算性能の1%~4%程度の性能しか得られていないシステムが多い。このため、大部分のアプリケーションではHPLとHPCGの性能の間の性能が得られるので、このベンチマークのペアはブックエンドの役目を果たすとDongarra教授は述べていた。その意味ではHPCGはHPLによるランキングを補完するベンチマークであると言える。

浮動小数点演算性能ではなく、メモリアクセス性能に重点を置くHPCGベンチマークはビッグデータ処理などのメモリアクセスが律速になる処理のシステム性能を計測する手段となってさらに人気が高まるのか、ビッグデータとしては別のベンチマークが出てくるのか分からないが、HPLによるTOP500だけではスパコンの性能を評価できない時代の入ってきたことは間違いない。

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