「IoT」という新たな市場の登場とその成長性に、電機や機械関連のみならず、さまざまな分野の企業が注目し、続々と参入を進めようとしている。IoTを実現し、サービスとして提供していくうえで重要となるのが、「通信(ネットワーク)」、「データの収集・分析」、「データの情報化」といった段階的に踏まれる各種の作業を実現するための各種のツール。中でも、末端の各種デバイスで生み出されるさまざまなデータを処理するためのホストに送信するための通信技術はさまざまなものが提供されているが、10年以上にわたって、独立系M2Mモジュールベンダとして3G/4G(LTE)やGNSS(位置情報)などのモジュールを提供してきたのが伊Telitだ。2013年より同社の日本カントリーマネージャーを務める佐藤修氏に話を聞く機会をいただいたので、同社の日本での取り組みなどを中心にお伝えしたい。

ショートレンジからクラウドソリューションまで1ストップで提供

同社は2013年に米国を中心にM2M向けクラウドソリューションの提供を行ってきたILS Technologyを買収。これにより、従来の通信モジュールのみならず、その先にあるクラウド向けAPIやMVNOサービスなどの提供も行えるようになり、「モジュール、キャリア、SIerなどを従来は個別に選別して組み合わせる必要があったが、これを1社で提供できるため、(顧客は)管理の手間の低減などを図ることが可能となる」(佐藤氏)としており、データを収集し、サーバに集約、その集めたデータを顧客に提供する、といったサービスに強みを発揮できるとする。また、通信モジュールのみならず、各国の通信における認証関係のサポートなども行っており、日本でもすでにNTTドコモならびにKDDI(au)より認証を取得した製品を提供しているほか、今後、ソフトバンクからも認証を取得する予定だという。

Telitが提供するIoT向け1ストップサービスのイメージ。従来は左側のProductsの提供が中心であったが、2013年のILS買収を機に、右側サービスやサポートの拡充が進められるようになり、クラウドソリューションとしてハードウェアからソフトウェア、サービスまで一括して提供できるようになった

さらに、その提供するモジュールも例えば2G、3G、4G/LTE製品でピンコンパチを実現しており、同一基板上に乗せ換えて、アップグレードすることも可能とするほか、モジュール形態として、mPCIeのほか、M.2もキャリアボードとして提供しており、すでにM.2のLTEモジュールがNTTドコモならびにKDDIの認証を取得済みとなっている。

基板の作り方などにもよるが、モジュールがピンコンパチブルのため、2Gから3Gに、3Gから4G/LTEに乗せ換えるだけで通信規格をアップグレードすることも可能となる

加えて、GNSSとして日本の準天頂衛星「みちびき」などにも対応したものや、ショートレンジ通信としてZigBeeやStar Networkなどに対応したモジュールも提供している。

IoTだと、こうしたショートレンジやBluetooth、Wi-Fiあたりの通信規格で対応を、というニーズも高いが、同社では4G/LTEなどを中心として今後も事業を拡大していく方針で、IoT/M2M向けに低消費電力で低レイテンシなLTE Cat.0を積極的に押し出していきたいとするほか、モジュールビジネスを拡張していくのではなく、これまで培ってきた通信に関するノウハウを生かしたサービスの提供を手厚く行っていくことで、ビジネスの拡大を図りたいとしている。

IoTを実現していく上で、通信はどうしても切り離せない技術となるが、こと無線通信に関しては、これまで製造業として、何かのものは作ってきたが、4G/LTEを搭載したモノを扱ったことがないエンジニアや企業はまだまだ多い。そうした技術的に不安がある、といった顧客に対して、佐藤氏は「我々は通信をIoTのエンジンと呼んでいますが、そうした技術的、ビジネス的な支援を、縁の下の力持ち的に行っていければ良いですね」としており、グローバルでのサポートも含め、日本のものづくり企業のグローバルに広がるIoT企業への成長に向けた手助けができれば、と抱負を語ってくれた。

同社の提供するクラウドサービス「m2m AIR」は、さまざまなサービスを提供する。大きなところではグローバルなMVNOとして各国の通信オペレータと提携済みのSIMの提供をしたり、クラウド上に用意したWebポータルから、各通信端末のモニタリングといったことなどもできる