保険はいざというときに必要なもの。若いうちは万一のことや病気になることも少ないので、早々と加入するのはもしかして損? なんて思っている人もいるのではないでしょうか。たしかに病気で入院したり不幸にして亡くなるリスクは年齢とともに高まります。でも、確率が低いからいらないと結論付けて後回しにして大丈夫なのでしょうか。保険の役割と必要性について考えてみましょう。

保険と貯蓄の違いは? しっかり貯金してれば保険は入らなくてもいい?

貯蓄は三角、保険は四角という言葉を聞いたことはありますか? 貯蓄は少しずつお金を貯めていくので、年々残高が増えていく様を図に描くと右肩上がりの三角形のようになります。それに対し、保険は加入した瞬間にいざというときには契約した保険金額が受け取れるので、手元にお金がなくても万が一のときに多額のお金が準備できるということで四角形で描かれます。

何が言いたいかというと、必要十分なお金を準備するには時間がかかるので、準備ができるまでの間は、いざというときに貯蓄だけでは足りないお金を、保険料というコストを払って用意しておくというのが保険だということです。ですから、しっかり貯蓄をしているから保険はいらない、あるいは保険はきちんと入ったから貯蓄は余裕があるときだけというどちらか一方に偏るのではなく、貯蓄はしっかりと行ったうえで、必要な保障は確保することが大切です。

社会人になったからには保険に入らないといけないの?

保険というのは若いから確率が低いのでいらないということではなく、確率はどうあれ万が一のときに困る人が加入すると考えるべきです。

ですから社会人になりたての人でも、養わなければならない家族がいるのなら、当然、その家族のために何らかの保障を確保しておく必要があります。ただしこれはあくまでの経済的な面で考えることであり、たとえ「社会人になったからには父母の面倒はみよう」と張り切っていたとしても、父母がまだまだ現役だったり、年金で必要最低限の生活はできるというのであれば、そのために大きな死亡保障の保険に加入する必要はありません。

一方、医療保障はというと、会社員の場合には健康保険、自営業などは国民健康保険という公的な保険制度に加入しています。病気やけがで入院した場合は医療費がかさみがちですが、それでも高額療養費制度があり1カ月の医療費の自己負担額は9万円程度。そのほかに食費や差額ベッド代など健康保険の対象外の費用もかかりますが、入院が長期化しない限り、ある程度貯蓄をしていれば何とかなる額です。独身で社会人になりたての人なら、急いで加入する必要はありません。ただし、糖尿病やがん家系で将来の健康が不安だという人は、健康なうちに早めに医療保険に加入しておいたほうがいいでしょう。

また、フリーランスや自営業の人は病気やけがで入院することで仕事の収入が途絶える可能性もあります。そうしたリスクに備えるために医療保険あるいは所得保障保険に加入しておくことは必要です。

お金がない人は後回しにしてもいい?

貯蓄する余裕もないほどお金がないから保険は後回しという人もいますが、それはとてもリスクが高い状態です。とくに若くして結婚し、子どもが生まれて生活自体にお金がかかり余裕がないという人に多いですが、そのような状況で家計を支える人に万一のことがあったら、残された家族は生活できなくなってしまいます。家系を見直して少しでも貯蓄をすることはもちろんですが、それと同時に保障も後回しにせず確保することが必要です。

逆に独身で就職したばかりで収入が少ないのに保険に月々1万円以上払っているという人は、払った分が無駄になっても一旦解約し、その分を貯蓄に回すべき。

保険に費やせる費用は、それぞれの収入などにより異なりますが、お金がないから保険は要らないというのは間違いです。保障が必要かどうかを考えた上で、今の家計から保険料に回せる額を検討し、その範囲で必要な保障を確保する方法を考えることが大事です。

<著者プロフィール>

ファイナンシャルプランナー 堀内玲子

証券会社勤務後、編集製作会社で女性誌、マネー関連書などの編集を経て1993年に独立。1996年ファイナンシャルプランナー資格を取得。FPとして金融・マネー記事などの執筆活動を中心に、セミナー講師、家計相談などを行う。著書に「あなたの虎の子資産倍増計画」(PHP研究所・共著)「年代別 ライフスタイル別 生命保険のマル得見直し教室」(大和出版)など。