【レポート】

夏の京都は叡山電車で涼み旅 - 風流の極み・貴船の川床を目指す

京都の観光シーズンといえば、春の桜と晩秋の紅葉の頃がまず思い浮かぶだろう。しかし、暑い季節ならではの風物を楽しめる夏の京都を旅するのも悪くない。

夏の京都で特におすすめなのが、洛北・貴船(きぶね)の名物「川床(かわどこ)料理」。鴨川(賀茂川)の源流である貴船川のせせらぎの上に張り出すように設(しつら)えられた「川床」の上で本格的な京会席を味わう、なんとも風流で涼しげな料理だ。

今回は「川床料理」をはじめ、夏の京都の魅力的な料理や風物をいくつか紹介する。京都北部の市街地から山岳部である八瀬・鞍馬までをつなぐ叡山電車を移動に利用し、ちょっとした電車旅としゃれこんでみよう。

貴船の川床。川床の上で本格的な京会席を味わう

古代京都の面影が残る「糺の森」へ

叡山電車の旅を京都市街から始めるなら、まずは叡山電車の始発駅である「出町柳」駅へ向かおう。出町柳周辺でぜひ立ち寄っておきたいのが、駅から300mほどのところにある「下鴨神社」だ。京都駅から直接神社へ向かうなら、駅前バスロータリー「A2」乗り場から、4号系統の市バスで「下鴨神社前」停留所まで30分ほど。

下鴨神社の境内には、「糺(ただす)の森」と呼ばれる鬱蒼(うっそう)とした森が広がっている。「糺」とは、川が合流する「河合」を意味する言葉で、下鴨神社の境内が鴨川と高野川が合流する中州に位置することに由来する。

「糺の森」入口

「糺の森」は、古代の京都の面影を今に伝える場所ともいわれる。西暦794年に平安京が造営される以前の山城盆地(京都盆地)は湖と森に覆われていたというが、その当時の様子がかろうじて残っているのが「糺の森」なのだ。

平安遷都以前の京都の面影が残るという「糺の森」

森の中をまっすぐに伸びる参道を歩いていると、木々の間をせせらぎが流れ、大木が直射日光を遮ってくれるので、夏でも涼しく感じる。今では「古本まつり」が開かれるくらいだが、明治の頃までは、夏ともなれば納涼の人々でかなりのにぎわいをみせたらしい。

下鴨神社本殿をお参りした後は、境内にある茶屋「さるや」に立ち寄り、「鴨の氷室の氷」(700円)と名付けられたかき氷を食べてみよう。

「鴨の氷室の氷」(700円)には、抹茶小豆、黒糖白玉、いちごミルク味がある。写真は黒糖白玉

かつて下鴨神社の大炊殿(おおいどの)の横には、冬の雪を夏まで「糺の森」に保存しておく「氷室」があったといい、その氷は宮中にも献上されたという。これにあやかったのが「鴨の氷室の氷」。普通のかき氷とはまったく異なる粉雪のようにサラサラした口溶けが絶品で、しばしの間、猛暑を忘れることができた。

叡山電車に乗って貴船へ

下鴨神社を堪能したら、出町柳駅に戻って電車旅を始めよう。駅では、「一日乗車券 えぇきっぷ」(1,000円)を販売しているので、沿線で何度か乗り降りするなら購入しておくとお得だ。

「一日乗車券 えぇきっぷ」(1,000円)

叡山電車には、比叡山の登山口である八瀬比叡山口方面へ行く路線と、貴船や鞍馬方面へ行く路線の二路線がある。今回は鞍馬行きの電車に乗車しよう。出町柳駅を出てしばらくすると、右手の車窓に比叡山が見えはじめる。宝ヶ池駅を過ぎると周囲の家がまばらになり、その姿がはっきりと見えるように。

またしばらく電車に揺られていると、やがて比叡山の姿は車窓の後方に移っていく。「市原」駅を過ぎたあたりからは、山と山の間に分け入るように電車は進む。そして、出発からおよそ30分ほどで「貴船口」駅に到着する。

貴船口駅前の清流

駅を出ると、感じる空気は京都市街地と比べるとかなり涼しい。それだけでも「山里に来たな」と感じるが、今回川床料理をいただく料理旅館「ふじや」は、ここからさらに2kmほど貴船川の上流にある。駅前から路線バスが出ているほか、旅館に電話すればマイクロバスで送迎してくれるので、事前に連絡しておくといいだろう。

貴船で川床料理を楽しむ

最近では京都のあちこちで「川床」が行われるようになったが、「川床」の元祖は貴船であり、中でも「ふじや」が最初に始めたそうだ。大正時代、川の中に床几(しょうぎ)を置いて、お客さんに涼んでもらったのがはじまりだという。

川床に通され、とち餅と冷茶のウェルカムドリンクをいただく。足元を流れる川の流れに手を浸してみるとヒンヤリと冷たい。足を浸けるお客さんもいるが、冷たいので10分とは浸けていられないらしい。目を上に向けるとカエデの緑が美しい。秋はさぞかし奇麗に色づくのだろうと思い聞いてみると、ここは日当たりの関係でそれほど奇麗には色づかず、むしろ新緑の季節が一番美しいという。

とち餅と冷茶のウェルカムドリンク

さて、今回は「川床料理」の竹コース(1万4,742円・川床料、奉仕料込)を頼んだ。「先付(さきづけ)」にはじまり、最後の「食事(椀、ご飯、香物)」「デザート」まで、会席料理の流れにしたがい、およそ2時間ほどかけて料理が提供される。

今回の料理の中で、特に印象に残った皿をいくつかピックアップして紹介しよう。なお、料理の内容は、季節やその日の材料の仕入れによって異なる。

旬の食材を使い、彩りも豊かな「先付」

まず、こちらは「先付」。「蓮芋と松茸の和え物」「鰻(ウナギ)の一口ちらし寿司」「香梅蒸し」「田螺(たにし)香りよごし」の4品と、食前酒の梅酒が供された。旬の食材が使われるとともに、ちらし寿司が食卓に彩りを添えているのもいい。また、梅酒を飲むことで暑い季節でも食欲がわく。

「向付」は、鰻と鯉の二種盛り

刺身や酢の物を供する「向付(むこうづけ)」では、鰻(ウナギ)と鯉(コイ)の二種盛りをいただいた。中央の白い身は、一見、鱧(ハモ)に見えるかもしれないが、鰻である。「川床料理」ではあくまでも川でとれる食材を中心に使うのだそうだ。

川床は、毎年6月上旬から9月下旬まで楽しめる。少々値が張るのは確かだが、こんな風流な環境で本格的な京会席を味わえる場所など、ほかにはなかなかない。ぜひとも一度、訪れてみて欲しい。なお、「ふじや」は貴船神社のすぐ目の前にある。川床を満喫した後は、貴船神社への参拝もおすすめしたい。

■information
貴船ふじや
京都市左京区鞍馬貴船町 貴船神社鳥居前
営業時間:11:00~19:00までに入店

「鞍馬」や「一乗寺」にも寄り道

貴船まで来たのなら、源義経(牛若丸)が幼少期を過ごした場所としても知られる鞍馬寺もお参りしたい。貴船から鞍馬まではハイキングコースもあるのだが、真夏に歩くのはさすがにきつい。叡山電車に乗って移動すると良いだろう。

源義経(牛若丸)が幼少期を過ごした場所としても知られる鞍馬寺

京都市街に戻る途中、出町柳の3駅手前にあたる「一乗寺」駅で下車して寄り道するのもおすすめ。一乗寺周辺では、下町風情の中にレトロでオシャレなお店やカフェが点在する。夏ならば、カフェ「648471(むしやしない)」の上質な豆乳を材料にした「キメとろ」アイスクリーム(540円)がおすすめだ。

カフェ「648471(むしやしない)」の「キメとろ」アイスクリーム(540円)と「豆乳アイスラテ」(648円)

一乗寺駅から徒歩10分の位置にある、山荘跡であり寺院でもある「詩仙堂」まで足を伸ばしてみても良いだろう。「詩仙堂」の創設者でもある文人・石川丈山(じょうざん)が発明したという「鹿威(ししおどし)」の音に耳を傾けるのも、京都らしい乙な夏の過ごし方だ。

※記事中の情報は2015年7月時点のもの。価格はすべて税込

著者プロフィール: 森川 孝郎(もりかわ たかお)

旅行コラムニスト。京都・奈良・鎌倉など歴史ある街を中心に撮影・取材を行い、「楽しいだけではなく上質な旅の情報」をメディアにて発信。観光庁が中心となって行っている外国人旅行者の訪日促進活動「ビジット・ジャパン・キャンペーン」の公式サイトにも寄稿している。鎌倉の観光情報は、自身で運営する「鎌倉紀行」で更新。
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