この夏、猛暑に見舞われた日本列島。移動するにも億劫だ。ならばプラネタリウムで日本や世界を旅し、さらに宇宙の旅を堪能してはいかがだろうか?

プラネタリウム・クリエイター大平貴之さん。「この丸い投影機もいずれなくなるかもしれません」。過去の形にとらわれず、常に進化し続けている

千葉県立現代産業科学館では2006年から毎年夏、スーパープラネタリウム「MEGASTAR」の上映会を行っている。今年でちょうど10周年。これまで延べ12万4000人を動員した夏の目玉企画だ。特徴は毎年、進化したMEGASTARが見られること。開発者であるプラネタリウム・クリエイター大平貴之さん曰く「直径23mの大きなドームで、毎年できうる最新最高の技術やアイデアに挑戦し、多くの皆さんに楽しんでもらう場」。大平さんと言えば、常識を破る新しいプラネタリウムを開拓し続けてきた人。その最先端の世界が毎年夏、発表されるという貴重な場なのだ。さて今年はどんな風に進化しているだろうか?

8月3日に同館で開かれた内覧会で最新作「星のある風景~旅~」が公開された。テーマは「旅」。大都会の夜景から始まり列車に乗って日本の旅へ。各地で実写したという大自然の美しさ、そこに息づく生き物たちが放つ微かな光、天の川の星々に癒される。さらに飛行機に乗り日本から世界へ。大都会の夜景を眼下に航空機が離陸し、雲を抜けたとたんにどーんと広がる星空はMEGASTAR-FUSIONの真骨頂であり、思わず息をのむ。移り変わる自然の中で、雲間から少しずつ星が見えてくるときのわくわく感、現れる大宇宙の星々の圧倒的な存在感…こんな体験は他のプラネタリウムではなかなかできない。

そして見どころは、宇宙への旅立ちだ。過去の作品では地上で見上げる星々を表現してきたが、本作では三次元の宇宙を飛ぶ。星々の中を突き進むにつれ、見慣れた星座も形を変え、後ろに飛び去っていく。デジタル映像では見られる表現だが、光学式とデジタル式を融合したMEGASTAR-FUSIONで表現するのは今回初めて。光学式で投影される星は強いきらめきを放つため、その中を飛ぶ宇宙旅行は、全身に強く刻み込まれるスペシャルな体験となる。

今回の番組用に、従来のMEGASTAR-FUSIONシステムに加えて専用の光学式個別投影機10台を新たにそろえ、1つひとつの星の位置を高速で変えリアルタイムで制御するという最新技術を駆使している。「FUSIONは新しい進化を遂げた。今後の方向性を示す大きな一歩です」と大平さん。いったいどこまで進化し続けるのか、これからの展開も楽しみだ。

地上の光が放つ星、夜空の星、この世は星で満たされている。その中を縦横無尽に飛ぶこの夏限りのスペシャルな宇宙旅行にぜひ出かけて見てはいかがだろうか。上映は8月23日(日)まで。9日(日)と16日(日)は大平貴之氏の上映解説会がある。

「星のある風景~旅~」の一コマ

12K MEGASTAR-FUSINのチラシ