フランスのタバコ事情は日本と随分違う

パリの街をタバコというキーワードで見回すと、日本人があっけにとられる光景が見えてくる。悪びれることなく喫煙する未成年者、通りにたむろする愛煙家、ところ構わずポイ捨てされる吸い殻……。どうやらフランスでは、タバコの扱いが日本と大きく違うらしい。

高校生は校門脇で一服!?

日本の高校に相当するリセの近くを通ると、校門近くでよく見かけるのがタバコで一服する生徒たちだ。フランスでは18歳から成人とみなされるが、喫煙する生徒たちはそれ以下である。そして場所は「体育館の裏」などではない。堂々たる「校門」の脇だ。

実は、フランスには喫煙の年齢制限を定める法律がないのだ。つまり、法的には何歳であっても喫煙できることになる。古いフランス映画で、まだ幼顔の男の子が大人にタバコをねだるシーンを思い出される方もあるだろう。これは今も実際に耳にする話だ。

もちろん、未成年者を喫煙の害から守る法律はある。16歳未満の子どものいる学校内での喫煙は禁止だし、何より未成年者へのタバコの「販売」は禁止されている。フランスにはタバコの自動販売機はなく対面販売のみなので、年齢確認が確実になされるなら抑制効果はあるはずなのだが。

建物から追い出された"タバコ難民"

昼間の街中、古い石造りの建物が並ぶ界隈でも高層ビル街でも、オフィスや店舗に面した通りではいつも入り口付近に何人かがたむろしている。気分転換や息抜きの意味合いもあるかもしれないが、彼らの大部分はタバコを吸うことが主目的だ。

フランスでは、公共・民間を問わず不特定多数が集まる建物内での喫煙は禁止なのだ。この禁煙法が2008年に制定されると、職場内に置かれていた灰皿や喫煙コーナーも取り去られた。やむなく愛煙家たちは喫煙可能なスペースを求めて屋外へ。IDカードをかざしてセキュリティーのゲートを通り、寒い季節にはコート、雨の日には傘を持ち喫煙に向かう。

屋外席なら喫煙OK

建物内での喫煙禁止は、レストランやカフェなどの飲食店においても同様である。そのため、歩道にせり出して設けられた屋外席やテラスは"喫煙者のためのスペース"という役割もあるのだ。凍(い)てつく寒さの冬にも屋外席のニーズは変わらず、透明ビニールシートで囲い暖房器具を置いて守られる。

ポイ捨て放題のゆるいマナーにも変化の兆し

フランスと日本とでは、喫煙マナーについても大きな違いがある。路上喫煙では、吸い殻のポイ捨てがごく普通。パリの通りはまるで巨大灰皿だ。

しかし、この状況も変わりつつある。膨らむ清掃費用にたまりかねたパリ市では、2015年7月からポイ捨てに対して68ユーロ(約9,180円)の罰金が科されるようになった。市内に3万個の吸い殻入れの設置を終えたタイミングで、以前の35ユーロ(約4,730円)から大幅な罰則強化に出たのだ。まだ厳格な運用はされていないようだが、これからパリを訪れる人はご注意を。

※1ユーロ=135円で換算。記事中の情報・価格は2015年07月取材時のもの。写真はイメージで本文とは関係ありません

筆者プロフィール: 岡前 寿子(おかまえ ひさこ)

東京在住の主婦ライター。ご近所の噂話から世界のトレンドまで、守備範囲の広さが身上。渡仏回数は10数回にのぼり、2年弱のパリ在住経験がある。所属する「ベル・エキップ」は、取材、執筆、撮影、翻訳(仏語、英語)、プログラム企画開発を行うライティング・チーム。ニュースリリースやグルメ記事を中心に、月約300本以上の記事を手がける。拠点は東京、大阪、神戸、横浜、茨城、大分にあり拡大中。メンバーによる書籍、ムック、雑誌記事も多数。