凜とした歌に託されたのは、生命の燃焼と歌うことへの覚悟。だから桐嶋ノドカの歌声は聴く者の魂を揺さぶる。学生時代に制作したデモ音源が音楽プロデューサー・小林武史に認められ、ともに曲作りをスタート。大学卒業後、本格的にライブ活動を続けながら2014年3月に「ボーダーライン(Demo ver.)」を無料配信。7月にはテレビ東京系ドラマ『ラスト・ドクター~監察医アキタの検死報告~』主題歌に抜てきされた「Wahの歌」を配信限定でリリースし、コアな音楽ファンから注目を集めていた。そんな彼女が待望のメジャーデビュー。7月29日にリリースされる1stミニアルバム『round voice』は彼女にとってプロローグの終わりであり、新たな第1章のスタートを飾る1枚となった。

桐嶋ノドカ
1991年5月5日生まれ。神奈川県横浜市出身
撮影:高橋定敬

――本格的に歌の道に進もう、と決意したいきさつは?

中学高校とミッション系の学校に通っていて、学内の聖歌隊に入ったんです。毎日の礼拝のときなどに賛美歌やミサ曲を歌ったりして。同時に部活動で合唱部に入ってクラシック作品を歌っていました。その後、高校に入ってからひとりで歌いたいな、と思って。なので礼拝堂で自分のいろんな気持ちを代弁してくれているようなJ‐POPなどを歌っていました

――自分で曲を作るようになったのはいつごろからですか?

大学は音大に進んだんです。授業で作曲を学んだり、周りに自分で曲を作って自分で歌っているコも多かったので私も挑戦し てみよう、と

――やはり自分の気持ちを自分の言葉とメロディーとで歌ってみたかったんですね。

はい。いまもそうですけど、私の歌は想いがないと出てこない。言いたいことがないと出てこないんです。言葉と一緒に出て初めてメロディーになる、というか

――桐嶋さんの曲にはありきたりの前向きさではなく、負の感情も込められているのが印象的です。

基本的には私自身はポジティブでネアカなタイプだと思います。でも、ネガティブなことが何もなくてhappyでいたいとは思っていない。悲しいことや苦しいこと全部ひっくるめた結果、希望が生まれるものだと思うんです。私の歌は全部そういうメッセージになっていると思いますよ

――人間っていろんな感情を同時に抱えて生きていますからね。

100%ポジティブって、逆にキレイごとで夢見がちなこと。でも、もちろん幸せや希望はある。そういう感情を飾らずにさらけ出したい。でも、言葉にすると"ちょっと違うな"と思うことも多くて。リアルな感情ってなかなか言葉に表しがたい。だけど言葉にしなきゃいけない、というところが難しいんですよね。でも、私は真っ正面から向き合って1曲1曲苦しみながら作っています

――自分をさらけ出すことに抵抗や照れはないんですか?

それはあります。私自身、思っていることをバンバン言えるタイプじゃないので。"こう言いたいけど言えない"、"こう言った方がいいんじゃないか"という方向につい流されちゃったり。なので曲を作るときは"本当にそう思っているのか?"、"隠してないか?"、"嘘をついていないか?"と自分自身と闘いながら。その結果として歌だとふだん言えない本当の気持ちをさらけ出せるんです」