たとえば新年度であるとか、あるいは仕事で実力不足を痛感させられた時であるとか、そういうちょっとしたことがきっかけになって「勉強しなければ!」という気持ちにさせられることがある。その気持ちがずっと持続すれば素晴らしいのだが、人間というのは弱いものでたいていは3日もしないうちにやる気が元に戻ってしまい勉強はなかなか続かない。そうやって「やる気を出してはちょっと勉強して、三日坊主で終わる」を何度も何度も繰り返しているという人は意外と多いのではないだろうか。

今回紹介する『勉強がしたくてたまらなくなる本』(廣政愁一/講談社/2014年9月/1300円+税)はそういう人に向けて書かれた本である。勉強法を扱った本は既にたくさん出版されているが、本書はどちらかというと具体的な勉強のやり方よりも「愚図でも継続して勉強できる仕組み」をつくることにフォーカスしている。どんな優れた勉強法も、勉強自体を継続できなければ意味がない。そういう意味では、本書は勉強を意味あるものにするための「もっとも基本的なところ」を確立するための一冊だと言えそうだ。

「愚図は死んでも治らない」という前提をまず受け入れる

廣政愁一『勉強がしたくてたまらなくなる本』(講談社/2014年9月/1300円+税)

『勉強がしたくてたまらなくなる本』という書名からすると、一見この本は自分を真面目で勉強好きに変える本、つまり怠惰な自分を反省し生まれ変わるための本のように思える。しかし、本書のアプローチは実際にはこれと真逆である。「愚図は死んでも治らない」という前提に立った上で、愚図なままでもうまく勉強が続くような、そういう「仕掛け」をつくっていこうというのが本書の基本的な考え方だ。

すぐサボってしまったり、遊んでしまったりといった性格は今までの人生の長い年月を経て形成されたものであり、一朝一夕で変えられるものではない。それでも、やり方次第ではこういった自分の性格をうまくてなずけて、勉強を継続させることは可能なのだ。その点で、本書で提案される勉強法は「誰でもできる」勉強法だと言える。

理想の計画を立てたら、それを半分にする

たとえば、計画について。勉強を始める時、多くの人は計画を立てると思うが、本書ではまず計画を立てたら直ちにそれを半分の量に減らすことを推奨している。それでは何のための計画なのかわからないと思う人がいるかもしれないが、そもそもあなたは立てた計画を完遂できたことがいったいどれだけあるだろうか。理想状態を想定した計画は、99%実行できずに終わる。それで挫折してやる気を挫くぐらいだったら、いっそのこと確実に実行できるよう計画の量を半分にしてしまったほうがいい。

理想の半分の量であっても、実際には結構な量の勉強ができるものだ。理想の計画を半分にする過程で、最初に立てた計画の「芯」を中心的に残すように心がければ、勉強の精度も高くなる。いつも計画はしっかり立てるのにほとんどその計画を守ることができていないという人は、ぜひこのやり方を試してみて欲しい。

勉強の習慣を身につけるために何を捨てるか考える

勉強を持続させるということは、勉強を習慣化するということだ。その際、普段の生活をそのまま維持して、勉強の習慣だけプラスで新しく身につけようとはしていないだろうか。1日はつねに24時間しかないのだから、何かを新しく始めるには、その代わりに何かをやめなければならない。本書ではこれを「4人乗りの車には4人までしか乗れない」という比喩で説明している。たしかに、これはごもっともな話だ。

「勉強するぞ!」とやる気になっている時、往々にして人はこの簡単な算数を忘れる。新しく勉強をはじめるために何を捨てるか最初から決めておかないと、結局普段と同じ生活をしてしまって「今日はなんだか勉強する時間が取れなかったな。明日やろう」(もちろん実際に明日やることはない)ということになり、勉強は習慣化することなく終わってしまう。勉強をはじめるときは、足し算の発想だけでなく、まず入れ物を確保するという考え方でいなければならない。

そういう意味では、勉強を習慣化するということは結構大きな決断だともいえる。なぜなら、いままで普通に毎日やっていたことの一部をこれからやめようとしているのと同じことだからだ。それゆえ、勉強をはじめる際には「本当に必要な勉強なのか」という見極めもしなければならない。「なんとなく英語が使えるとかっこいいな」ぐらいの気持ちでは、払う犠牲に対して動機が弱すぎる。

人生は思っているよりもずっと短い

本書の最後では、残りの人生の時間をカレンダーで可視化する方法が紹介されている。人生と聞くとだいぶ長いような印象を受けるが、計算してみると実はそんなに長いわけでもない。どんな愚図な人でも、実際に残りの時間を可視化して考えてみると「焦り」の気持ちが生まれるものだ。

残りの人生を有意義に生きるため、勉強は強力な武器になる。あとで後悔しないためにも、自分にとって必要な勉強が何か見極め、そのための時間を生活の中に組み入れてみてはいかがだろうか。


日野瑛太郎
ブロガー、ソフトウェアエンジニア。経営者と従業員の両方を経験したことで日本の労働の矛盾に気づき、「脱社畜ブログ」を開設。現在も日本人の働き方に関する意見を発信し続けている。著書に『脱社畜の働き方』(技術評論社)、『あ、「やりがい」とかいらないんで、とりあえず残業代ください。』(東洋経済新報社)がある。