保育園では、37.5度以上の熱は預からないことが多い

子どもを保育園に預けられるかどうかのボーダーラインは"体温37.5度"

保育園を利用しながら働くお母さんの中には、子どもの発熱時に登園させるかどうかの判断で迷う人もいることだろう。保育園では、体温が37.5度以上の子どもは預からないことが多い。そこで、子どもの平熱と発熱のボーダーラインが37.5度である理由と、発熱時に注意したい「熱性けいれん」について、まえだこどもクリニックの院長・伊庭大介医師にお聞きした。

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小児は体温37.5度以上を「発熱」と定義

小児の体温は、年齢により異なりますが、大体37.0度前後が平均値です。日内変動は0.5度以内であるので、37.5度以上を「発熱」とみなしています。それに準じて保育園では、体温が37.5度以上の子どもは預からないこととし、保育中に発熱が見られた場合は親御さんへ迎えの連絡を入れるというルールになっていることが多いようです。ただし、平熱が37.5度前後のお子さんの場合は保育園に相談をしてみてください。平熱より1度高ければ、明らかな発熱と考えてよいでしょう。

平熱が低い子も高い子もいるので一概には言えませんが、一般に37.5度以上38.0度未満の熱は「微熱」、38.0度以上は「高熱」と考えられます。ただし、熱が何度かということよりも、お子さんの様子をよく見てあげることが大切。熱があっても元気に動き回っていたり、夜もスヤスヤと眠っていたりするようであれば、家でしばらく様子を見てもよいでしょう。反対に、元気がない、水分をとれない、夜間にぐずって寝ないなどと、普段と違った様子があるときには、病院で診てもらうようにしましょう。

気をつけたい「熱性けいれん」

発熱時、熱性けいれんには特に気をつけよう

発熱時のお子さんの症状で気をつけてほしいのは、「熱性けいれん」です。熱性けいれんとは、38.0度以上の高熱に伴って起こる発作性の疾患のこと。日本では、生後6カ月から6歳くらいまでの乳幼児のおよそ10人に1人に起こる症状といわれています。

症状として、突然意識を失って白目をむき、手足を左右対称にガクガク震わせる発作がもっとも多く見られます。顔色が真っ青になることなども特徴です。

熱性けいれんは、「単純型」と「複雑型」の2つに分けられます。7~8割は単純型で、およそ5分以内に治まることがほとんど。一方で複雑型の場合は、症状が15分以上続いたり、24時間以内に発作が2回以上起こったりします。髄膜炎や脳炎、脳症、てんかんなどの病気の可能性もあります。

いずれの場合でも、症状に気づいたらすぐに病院に連れていきましょう。熱性けいれんが10~20分以上続くと脳に障害が残るリスクも高まります。特に次のような場合は、医師による迅速な対応が必要です(日本小児神経学会ホームページより)。

・10分以上続くけいれん重積状態
・生まれて初めてのけいれん
・1歳までの乳児のけいれん
・けいれんの前後に頭痛、嘔吐、意識障害を伴う場合
・けいれんに左右差があり、けいれん後に麻痺を伴う場合

病院では症状を医師に説明する必要がありますので、熱性けいれんが起きたときはよく観察して、伝えられるようにしてください。熱性けいれんを起こす子どもの約7割は生涯に1度きりのことが多いですが、繰り返すお子さんもいます。その場合は、けいれんを予防する薬を用いて治療していきます。

もちろん症状によっては、自宅で様子を見ても大丈夫な場合もあると思いますが、発作が治まっているように見えても実は続いている場合もあり、家庭での判断は危険です。一刻を争うこともありますので、救急車を呼んでもよい状況だと思います。熱性けいれんが起きたらすぐに病院に連れていき、何が原因でけいれんが起きているのかを医師に診察してもらうようにしましょう。

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子どもの体温を測ってボーダーラインの37.5度以上だったとき、それが微熱の場合でも高熱の場合でも、まずは子どもの様子をよく観察することが大切だ。特に熱性けいれんでは、突然意識を失うことが多い。異変に気づいたときに迅速な対応ができるように、日ごろから心構えをしっかりとしておこう。

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記事監修: 伊庭大介(いば・だいすけ)

まえだこどもクリニック院長。1999年に杏林大学医学部を卒業後、同大学医学部小児科医局に勤務し、2002年には同大学医学部小児科教室助手を務める。その後、賛育会病院新生児小児科勤務を経て、2012年より医療法人社団育真会 まえだこどもクリニック院長として、一般診療のほか、予防接種、乳児検診・育児検診、アレルギー診療など小児科全般の診療に携わる。