説明書を読まなくても使い方がわかるのが、iPhoneの魅力であり強みです。しかし、知っているつもりでも正しく理解していないことがあるはず。このコーナーでは、そんな「いまさら聞けないiPhoneのなぜ」をわかりやすく解説します。今回は、「データの入れすぎ、もさったい動きの原因になりますか?」という質問に答えます。

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iPhoneでは、データを「メモリ」に保存します。ここでいうメモリとは、SoCに内包されている主記憶装置「RAM」のことで、iPhone 6/6 Plus(Apple A8)は1GB、iPhone 5s(Apple A7)には1GBが搭載されています。RAMはCPU/GPUから高速にアクセスできるため、容量が大きいほどパフォーマンス的には有利です。

データ量がRAM容量を超えそうな場合、一般的なPC用OSでは必要なデータを補助記憶装置へ退避させる処理を行います。この処理は「ページング」や「スワップ」などと呼ばれ、退避先の補助記憶装置(バッキングストア)にはハードディスクやSSDが利用されます。

しかし、バッキングストアはRAMに比べアクセス速度が不利です。特にハードディスクの場合、ページングが多発すると体感できるレベルでシステム全体の応答速度が低下するため、メモリを増設するなどしてページング発生を未然に防ぐことが行われています。

iPhoneのシステム(iOS)は、Macのシステム(OS X)から派生する形で誕生した経緯があり、多くの点で共通していしますが、OS Xと異なりページングは行いません。RAMが枯渇しそうになった場合、iOSはアプリに対しメモリを開放して空きを増やすよう要求し、応じなかったアプリは停止/強制終了させられたうえでRAMから消去されます。

データの入れすぎが(iOSの)速度低下につながらないかというご質問ですが、アプリ本体および関連データは内蔵ストレージ(フラッシュメモリ)に保管され、そこからRAMに読み込まれたうえで利用されるため、パフォーマンス低下の原因とはなりません。一般的なパソコンのOSと異なり、iOSではRAMが不足してもページング処理を行いませんから、RAMの容量も直接的には影響しません。

なお、最初に説明したRAMの容量は、同時に存在できるアプリの数を増やせるという点でパフォーマンスに影響します。前面に表示されていない(バックグラウンドで稼働中の)アプリは、メモリ不足に陥るとシステムに強制終了/RAMから消去させられることがありますが、RAM容量が増えればそのぶん強制終了の機会が減るため、Appスイッチャーでアプリを切り替えるときの待ち時間(実際にはアプリ起動時間)が短くなります。将来、RAMが1GB以上のiPhoneが登場すれば、その意味で「アプリの切り替えがスムーズになった」などと評価されることでしょう。

内蔵ストレージを限界近くまで消費したとしても、iPhoneのパフォーマンスには直接影響しません