【レポート】

円安だとなぜ「金価格」が注目される?

日経平均株価が27年ぶりの連騰で株式市場は大賑わい。あわせて為替相場も、1ドル125円台と円安基調が続いていましたが、このところ調整局面に。それでも円安傾向に変わりはありません。円安基調だと注目なのが実は「金」です。金価格と円安、どんな関係があるのでしょうか?

世界市場の金価格と日本の金価格には差異がある

まずは、グラフをご覧ください。過去5年の金価格の推移です。世界市場はドル/トロイオンスで取引されており、2010年初めは1トロイオンスあたり1119ドルだったのが、2011年に1776ドルを付けて以降、下落。いったんは持ち直したものの、再び下落。2015年5月平均で1200ドルを割り込みました。

一方、日本での金価格の推移をみると、ギャップはありますが、世界市場の金価格同様に右肩上がりで上昇し、2013年初めに1gあたり5000円近くまで上昇。その後いったんは下落するものの、2014年後半から、一転して上昇基調になり、2015年5月平均で1g=4600円台に戻しています。6月19日現在の小売価格では、1g=5169円。5000円台を超えてきました。

世界市場で金価格が低迷するなか、なぜ日本の金価格は上昇を続けるのでしょうか。

次のグラフは、同時期のドル円相場(TTS)の推移です。アベノミクス開始とともに、長く続いた円高から急激に円安へと向かっているのが、見て取れます。2015年6月19日現在で、1ドル123円台と円安傾向は続いています。日本の金価格の上昇要因には、ひとつには、この円安が関わっているのです。

(※グラフは、田中貴金属工業の月次平均データより作成)

金の実力以上に、為替の影響が大きい

金取引は、「有事の金」と言われるように、世界的な政治不安や金融危機が起こると、金取引が活発になり、価格は上昇します。また各中央銀行が金の保有量を増やすため、価格は上昇します。逆に、株式市場が活発になると資金は株式へと流れ、また中央銀行が金を放出するなど、大きな動きがあれば、金価格は下落するのです。もっとも金の需要が高い中国の動きによっても金価格は変動します。

日本の取引も基本的には世界市場の動きと連動するのですが、日本の場合は、そこに為替が関係してきます。世界市場はドル建ての取引ですが、日本での売買ではドルを円に換えて取引されるからです。そのため、現在のような円安傾向が続くと、世界の金価格の実体とは別に、ドル円相場によって日本の金価格が変動するというわけです。

では、こうしたなか、一般投資家は金取引をするメリットはあるのでしょうか。

少額からできる純金積立でリスク軽減

ひとくちに「金」といっても取引方法は、さまざま。金の現物、つまりゴールドバーの取引もあれば、純金を使ってデザインされたコインも取引の対象です。さらには金の現物ではなく、ETF(上場投資信託)や金などの貴金属に投資する投資信託まで、「金」をめぐる取引は多岐にわたります。

初心者であれば、純金積立が手軽でリスクを抑えた運用が可能です。

純金積立は、その名のとおり、金を毎月積み立てて購入していくものです。毎月1万円などと決まった額でその時に買える量を取扱会社に購入してもらうのです。この仕組みは、基本的には投資信託の積み立てなどと同じで、価格変動がある投資商品の積み立てでは、その価格変動リスクを抑えることができます。

たとえば、この1年、純金積立をしていたら、どうなっていたでしょう。

  • 毎月購入額:1万円

  • 年間購入額:12万円

  • 購入g数 : 26.6811g

  • 6月19日現在の買取価格5084円

6月19日現在の買取価格で売却したとしたら、13万5647円で約1万5000円の利益です(手数料、年会費などは考慮せず)。これは現在、右肩上がりで金価格が推移しているため、1万円で購入できる金の量は2.3g程度ですが、売却のタイミング次第では利益が出やすくなっているのです。

しかし、価格変動があるものは、いつ下落局面に向かってもおかしくありません。そうしたときに積立は効力を発揮します。金価格が下がれば、購入する金の量が増えるのです。

2013年は年初4800円台だったのが急落し、年末には4120円台にまで落ち込みました。このとき同じように毎月1万円で積み立てをしていたとしたら、購入g数は27.0185g。その後積み立てを中止し、現在まで保有していて、同じように6月19日に売却していたら、約1万7000円の利益が出ているのです。価格が下落したときに、金を多く買えていたために、価格が回復したときに、利益となって返ってくるわけです。

これは投資商品の積み立てなら、同じ理屈になります。ただ注意しないといけないのは、価格の上下動を繰り返しながらも右肩上がりの商品でなくては、最終的な利益は得にくいという点です。その意味において、金は、世界での需要がゼロにはならないこと、直近では為替は円安傾向であること、ということが、純金積立を、今から始めても妙味があると言える点でしょう。

純金積立は、貴金属商、商社、証券会社などで取り扱っており、年会費や買付手数料などに違いがあります。また毎月1000円や3000円程度の少額から積み立てが可能なので、大きなリスクをとりたくに人にとっても始めやすい投資商品と言えるでしょう。

<著者プロフィール>

伊藤加奈子

マネーエディター&ライター。法政大学卒。1987年リクルート(現リクルートホールディングス)入社。不動産・住宅系雑誌の編集を経て、マネー誌『あるじゃん』副編集長、『あるじゃんMOOK』編集長を歴任。2003年独立後、ライフスタイル誌の創刊、マネー誌の編集アドバイザーとして活動。2013年沖縄移住を機にWEBメディアを中心にマネー記事の執筆活動をメインに行う。2級FP技能士。

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