紫外線による「光老化」に気をつけよう

1年の中で夏はもっとも紫外線が注がれる季節。日焼けが肌に影響を及ぼすことは広く知られているが、そのダメージは単に肌が黒くなることだけではないことをご存じだろうか。

実は紫外線を浴び続けると、シミやシワ・たるみなどの肌トラブルが起こるといわれている。その「光老化」のメカニズムと対策について、医療法人社団一信会 ティーアイクリニック・理事長の田原一郎医師にお聞きした。

紫外線は肌をサビつかせる!?

悪いイメージが先行しがちだが、紫外線にはよい面もある。紫外線を浴びることで、カルシウムの生成などに作用するビタミンDを体内でつくることができるからだ。例えば妊婦の場合、1日7.0μgのビタミンDの摂取が厚生労働省より推奨されており、食事での摂取だけでなく日光浴が勧められる場合もある。

ここでは「肌老化」という観点から、紫外線が肌に与えるダメージに注目してみたい。まずメカニズムについて、「紫外線は『活性酸素』を発生させ、肌細胞の酸化を引き起こします」と田原医師。活性酸素とは、体内に取り込んだ酸素の一部が変化したもので、本来はウイルスや細菌などを攻撃し、体を守る役割を果たしている。ただし、増えすぎると攻撃性を増し、健康な細胞にもダメージを与えてしまうというのだ。

ここでいう酸化とは、肌細胞がサビつくことを意味する。田原医師は、「肌老化の原因には『加齢』『酸化』『糖化』の3つがあります」としながら、「紫外線による酸化をいかにして防ぐかも重要です。紫外線を浴び続けると活性酸素がたまって酸化が起き、シミやシワ・たるみなどの"光老化"が進行してしまいます」と警告する。

紫外線による深刻な肌ダメージ「光老化」とは

光老化の代表的な症状が「シミ」だ。紫外線を浴びると、皮膚を守ろうと活性酸素が発生する一方で、酸化を食い止めるためにメラニン色素も生成される。メラニン色素は紫外線を吸収して肌の奥(真皮)への侵入を防ぐために、紫外線を浴びた数日後に黒い日焼け(サンタン)となる。通常は、その後で皮膚のターンオーバー(新陳代謝)とともに日焼け部分が剝がれ落ち、もとの肌へと戻っていく。しかし、メラニン色素が過剰に生成されたり新陳代謝が乱れたりすると、色素沈着を招き、シミになって現れるという。

そして光老化の症状では、「シワ・たるみ」も忘れてはならない。「紫外線によって肌細胞が酸化すると、肌のハリや弾力を保つためのコラーゲンやエラスチン繊維が壊れてしまいます。それによってシワやたるみができるので、肌が老化する一番大きな原因です」と田原医師。

UVケアの基本は「日焼け止め」

地表に届く紫外線には、「UVB波」と「UVA波」の2種類がある。UVB波は波長が短く、夏の照射量が多いのが特徴。影響は肌の表面(表皮)にとどまるものの、エネルギーが強いため、赤い炎症を伴う日焼け(サンバーン)の原因に。一方、波長が長く、季節や天候に関係なく1年中降り注いでいるのがUVA波だ。エネルギーはUVB波よりも弱いが、肌の奥(真皮)まで浸透し、光老化の原因になるといわれている。

田原医師は紫外線対策について、「日常紫外線でもレジャー紫外線でも、日焼け止めを塗ることが大切です。日焼け止めを選ぶときは、UVB波だけでなく、UVA波の値もチェックしましょう」と話す。日焼け止めのパッケージには、UVB波を防ぐ値はSPF(世界標準)、UVA波を防ぐ値はPA(日本独自の基準)で示されている。シーンに応じて使いわけてみよう。

また、日焼け止めの塗り忘れにも要注意だ。特に首筋や耳の前後、太ももの裏、足の甲などは忘れやすいので気をつけたい。日焼け止めは汗や皮脂で落ちてしまうため、朝に塗った効果が1日続くと思わずに、こまめに塗り直すのがベストだ。

"飲むUVケア"もお勧め

ちなみに、"内からのケア"として日焼け止めのサプリメントもあるとのこと。「サプリメントを飲むだけでも効果があるといわれますが、塗る対策と飲む対策の両方を行うのがお勧めです。特にマリンスポーツなどをする人は、塗るタイプはすぐに落ちてしまうので、飲むタイプがより効果を発揮すると思われます」と田原医師。

このように、紫外線は今現在の肌以上に未来の肌に影響を与えるようだ。まだ若い人でも、対策を始めるなら早いに越したことはない。いつまでも若わかしく美しい肌を保つためにも、UVケアを習慣にしてみてはいかがだろうか。

※画像と本文は関係ありません

記事監修: 田原一郎(たはら・いちろう)

医療法人社団 一信会 ティーアイクリニック 理事長

平成11年に日本医科大学医学部を卒業後、日本医科大学附属病院 第一外科に勤務。平成19年より平成立石病院や都内美容クリニックなどで実績を積む。 平成24年に医療法人社団 一信会 ティーアイクリニックを開院。


医学博士
日本医科大学大学院 分子生物学分野
学位論文;Systemic Cancer Gene Therapy Using Adeno-associated Virus Type 1Vector Expressing MDA-7/IL24
アメリカ遺伝子治療学会にて講演後、Molecular Therapy(Impact Factor 7.149)掲載
日本外科学会専門医、日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本抗加齢医学会専門医、日本医師会認定産業医