7月7、8日にかけて、アルテアエンジニアリングによるユーザー会『2015 Japan Altairテクノロジーカンファレンス』が開催された。このイベントの中で示された"CAE"、すなわち設計段階での製品シミュレーションにおける最新潮流についてレポートする

2015 Japan Altairテクノロジーカンファレンス

応力解析や振動解析、流体解析 - 検証を支える最新のCAE

ひと昔前のPCよりずっと高い性能を持たせながら、なおかつ床に叩きつけても壊れないように設計するにはどうしたら良いだろうか? スマホはそんな無茶な要求に応えなければならない製品の一つである。かつては、実物を落下させるまで良し悪しが分からなかった。しかし、現在では設計段階で落下試験をシミュレートできるようになり、最適な"かたち"を早い段階で決めることが可能となった。

製図のCADにとどまらず、応力解析や振動解析、流体解析といった多くの検証を行える"CAE(Computer Aided Engineering)"はめざましい進化を遂げている。一時期は「ビデオゲーム」などと揶揄されていたコンピュータによるシミュレーションは、ソフト・ハード面の飛躍的な進化により、今やスマホに限らず、ほぼあらゆる製品の開発を支えているのだ。

国内最大級のCAEユーザーカンファレンス

アルテアエンジニアリングはCAEの代表的なソフトの一つである"HyperWorks"の開発・提供を続けている「ものづくりに革新をもたらす企業」だ。パラリンピックの選手のための義足の開発や、フェラーリの新型車両デザインなど、多種多様な分野のプロジェクトに携わっている。

同社は2015年の7月7、8日に『2015 Japan Altairテクノロジーカンファレンス』と題したユーザー会を開催した。今年で17年目となるこのユーザー会は、約320の会社・団体からのべ673名が参加する大規模なイベントとなった。

「エアコンの騒音をどうしたら減らせるか?」「自動車のボディをより軽量に設計するには?」「タンカーの船殻をより強固な構造にするには?」「スポーツ用品に"さわり心地"という機能を持たせるにはどうすべきか?」。スズキや三菱重工業、リコー、ミズノなど、さまざまな業界の設計・開発担当者によるCAEの活用報告やワークショップが、2日間に渡って行われた。

CAE技術の習熟や設計へのフィードバックにまだまだ課題があるとしながらも、上流設計者がCAEを活用することによって設計段階から製品レベルの作り込みが可能となり、「開発期間の短縮に繋がる」「"勘"に左右されていた設計が可視化される」など、成果発表と共に今後のCAEの発展に期待が寄せられた。

直感的なUIを持つ「HyperWorks」の登場と近未来のCAEの利用方法

CEOのJames R. Scapa 氏の登壇の様子

イベントの中では、アルテアエンジニアリング米国本社より来日したCTO(Chief Technology Officer)のJames Dagg氏からHyperWorksの新バージョンがプレゼンされた。新バージョンでは、ユーザーがソフトをより早く使いこなすための直感的なユーザーインタフェースの導入や、多様なモデルバリエーションを管理しやすくするための機能が追加される。

また、CEOのJames R. Scapa氏からは、製品開発におけるトレンドを踏まえた同社ヴィジョンが示された。

今後の製品開発におけるトレンドの一つは、新素材の利用である。金属やプラスチック・セラミックスなどの材料を組み合わせた複合材は、高強度・軽量など優れた性能を持つ。もう一つのトレンドは、3Dプリンティングの発達だ。3Dプリンタによる自由度の高い製造は、自然が作り出すような有機的な、それでいて合理的な形状を実現させることができる。

こうしたトレンドの下で、同社のテクノロジーはさらなる設計イノベーションを加速させるとScapa氏は告げ、「ハイパフォーマンスな予測解析と最適化は、エンジニアリングのみならず、ビジネスの意志決定をも変えていきます」と話した。